そんなに話さなかった男友達と大学4年分の電話をして価値観が変わった話

大学一年生の時に同じゼミで、進級後も共通の友達が多かったことからなんだかんだ関わりのあったH君。彼は人あたりの鬼で、友達や仲間をすごく大事にする、明るいムードメーカーだ。

そんなH君と久しぶりに会ったのはつい先日。共通の友達I君の結婚式に流すサプライズ動画撮影のために大学で集まった。卒業してからおよそ二年経ち、彼は会社員としてしっかり働きながら彼女さんとほぼ同棲を続ける、立派な男の人に成長を遂げていた。(上から目線でごめんね)

その時は他にも数人友達がいたからそんなには話せなかったけれど、先程金麦を呷っていたら突然電話がかかってきてビビった。何の用かと思えば、I君の結婚式に女子が参加するのかどうかの確認。確かにI君へ直接出欠の葉書と連絡は送ったけれど、招待された人のグループLINEでは誰も報告していなかったなと思いつつ、職場の事情で欠席する旨を伝えた。
そして、こうして一体一で話すのは何時ぶりだろうかと、お互いの近況話に。
H君「なんか結婚ラッシュ来てんなあ。最近もう一人いるし」
私「え、そうなの?」
H君「おー。はと海さんも知っとる人やけど…ここだけの話にしてくれる?あいつ、Sとさっき電話してたんやけど、急に3月17日入籍するとか言い出して」
私「えっ!?????」
このSとは、大学一年生の時に同じゼミだった同級生で、かつ私が最初に付き合った人だった。今が楽しけりゃいいっしょ!みたいなゆるい…言い方が宜しくないかもしれないけれど、ちょっと子供っぽい面が目立って、一番結婚とは縁遠そうだったのに。
そんなSの全てをまるっと受け止めてくれる女の人が現れたようで、ただただ感心して、感慨深かった。

そんな懐かしすぎる人の名前を聞いてから、H君の彼女さんとの話を聞いてみた。大学の頃はなんとなく聞きづらくて風の噂程度しか知らなかったけれど、お互い社会人二年目で、口が堅いこともあって赤裸々な考えを聞かせてもらった。
H君曰く、彼女さんはまだ大学三年生だから、社会に出て様々な経験をし、世界を広げてから結婚を考えたいとのことだった。社会を知らないことは世間を知らないことと同義。責任の重さ、対人関係、ビジネスマナーなど、今後生きていく上で必要な経験を積んで、人として成長してほしい。彼はそう柔らかく願いを口にした。

私は正直、H君は常識人でムードメーカーで友達が沢山いる、くらいにしか捉えていなかったので、そんなに深く相手を思い遣っているなんて信じられず金麦を飲む手を止めた。
同時に彼の言葉には共感したし、相手の為を思い、時に厳しい言葉を掛けることも愛情表現なのだと改めて実感した。

そんな話を聞いて、私は思わず常々彼氏さんに対して思っていたことを吐き出した。
私の彼氏さんもH君と共通と友達で大学の同じ学部の同級生だ。H君も彼氏さんも互いを『良い奴』と表現するくらいには認め合っている。
H君には直接彼氏さんとの話をそんなにしたことがなかったので、全てがH君にとって衝撃的だったらしく、相槌の9割9部9厘は「まじか」。それでもH君は3時間も私の脈絡もない話に付き合ってくれた。

彼氏さんとはもうすぐ4年の付き合いになる。私は自分からLINEもしないし、電話もしない。大体彼氏さんから連絡がきて、ちょいちょいLINEをして、週一ペースで泊まりに来る程度の付き合いを社会人になってから続けている。
彼氏さんは、H君から見ても、世間一般から見ても、誰もが口を揃えて『そんな良い奴手放すのもったいなさすぎる』と言うだろう。それほどまでに一途で情に深い、懐の大きい人だ。
もちろん言い方がキツくて正論が武器となりズタボロにされた事もあれば、意見の相違で散々喧嘩もした。しかし、それも含めて彼氏さんは『良い奴』だ。怒るのも私を想ってのことだし、喧嘩はするけれど心にダメージを食らった時はずっと背中を摩ってくれて、何かと助けてくれた。

私はそんな『良い奴代表』の彼氏さんに今、何かをしたいだとか、会いたいだとか、温かい感情が一切湧かなくなってしまった。

マンネリ、と言えばそうかもしれない。けれど、近況を知りたいと思わないのも、声を聞きたいと思わないのも、会ってアニメ見たり映画で盛り上がったり出来ればそれでいいなと思うのも、大学4年生くらいから一切変わっていないのだ。
その間に引越しや納車などを助けてくれたのに、感謝の気持ちこそあれど、その時だけ都合のいい『好き』を伝えて、それが持続する訳でもない。
まるで、自分を助けてくれたから、助けてくれる存在だから、便利な存在として扱っているようではないか。
私がパートで収入が減ると伝えたら、いざとなったら二人でアパートを借りようと申し出てくれた時も、私は他人と同じ空間で生活ができない人間だからと断った。本当に好きなら喜んで受け入れるのに、それはもう光の速さで首を横に振った。
昔からずっと「俺だけが好きみたい」と言われ続けてきて、その度に心の中で「そうかもしれない」なんて目を伏せた。LINEだって、「俺からしなかったら貴女は一ヶ月とか平気で連絡くれなさそう」と言われて、即座に否定できず。

こんなことをつらつらH君に話すと、H君なりの考えを述べてくれた。
「暮らしてみないと相手の本当の素の部分は見えんし、それは本当にやってみんと分からへん」
「あいつの肩持つ訳やないけど、あいつは心底、覚悟を持ってはと海さんと付き合ってんねんな」
「結婚もそうやけど、何事もタイミングと意思が合わへんかったら物事が進まへん」
「俺が色んなこと聞いてみて、はと海さんがそれでもそう言うってことは、好きの形があいつと違ったかもしれんな」

中でも特に、『タイミングと意思が合わなかったら』『好きの形が違ったかもしれない』という言葉が胸に刺さった。
人には波があって、そのグラフの曲線が合えば交際なり結婚なりできるけれど、合わなければそれまでだ。好きという感情の形も、友愛、親愛、家族愛など様々ある中で、それが恋愛感情として互いに合致しなければ両想いにはなり得ない。
まさに、H君の言葉が私と彼氏さんの状況を端的に示していた。

長時間電話に付き合ってくれたH君は最後に、「色々言うたけど、結局は自分の感情を大事にしてほしい」と笑った。正直彼とこんなに深い話ができると思わなかったので、まじでめちゃくちゃ有意義で、ぐちゃぐちゃな思考回路もひとつの道となって方向性が定まった。
学生の頃とは違う、社会人だからこその意見交換。H君はさらに「自分も普段は部屋に彼女が居るから遠慮して友達と電話できへんねん。むしろ嬉しいわ」なんてこっちが土下座するレベルの優しさを発揮し、通話を終えたあともひたすら三つ指ついて感謝を捧げるばかりだった。

ひとまず明日の夜に彼氏さんと会うことになったので、少し距離を置いてほしいと伝えてみようと決意した。

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