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短歌

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記事一覧

〜<非=いま>の侵入(未来結社誌2023.12月号)

プラスチック片ほろほろと猪鼻おき、の生きてるうちに記号を変え
る可わる/とれたてのてにわたる風わかれくぐりぬけて、「けて」
の風、なりきってない/発情期のネコが鳴いていていい草原だから
おしひら可ないよう/指でかくはんする牛乳へと眠たさをおくりこ
んでは 染めむらが目立つ/後方から頭髪を おし黙るしかない
みずのかえしがおそくなる つなぎとめる唇 より細く削るまでも
なく 吃音は<原=エクリチュー

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ロゴスのそと

<されるうみ><するうみ>ふたつを皿にのせロゴスのそとへ(ははは還るも)

ソシュールによれば、記号の差異は容器(コーラ)の中の無数の風船としてイメージされます。記号の価値は風船の大きさと形、そして隣接する風船の圧力によって決定されます。しかし風船には実体がありません。そしてひとつの風船を外すとその存在はなくなってしまう。風船(=記号)とは一定の場所(コーラ)に与えられる名前なのです。人のいのちも

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はじまらなかった終わりに(未来結社誌2023.11月号)

濡れたふうけいがいろを増すようもりの石をしずめては クロウリ
 道のない水息に馬を追う「つる巻き」という論文のはじめに
を四等分八等分と切り分ける 方法の笑み くちびるが音読をする
 情念につかえる手段、として回転する記号の図式(シェマ)をえがく
三日月は狭められた窓から わずかな直線の正しさよりもおわりに
 眠りにつくもりを犯しながら穴をうめる馬 の、デッサンの続きに
あらぬ方へと曲がりたがる 

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須臾 (未来結社誌2023.10月号)

ハルジオンから下顎淋巴踊り子みずまくらへとくちびるの解纜 ほ
つけっ放しのデンキュウを消しては須臾 日曜の午後の湿地帯から
めまい みずのふざいに数珠はきれた。た。た。た。た。はいけい
を いまう えらん(飛躍)
ためらうことなく停車ボタンは フランス 海棠に約束した分葱が
雨う みがかれ(身が枯れ)すべりはじめるいし はいつも過ぎる 在りかけの
   姉                     

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芽から切り離す、接ぎ木の例 (未来結社誌2023.9月号)

      あさ カンナの行列におくれそうなひとが輪のなかに
書き込まれる 敷衍と                  ゆめ
   前屈みになって通過する 結石と診断されたひとの未明には
     地図がなくはだえをよこぎってゆく
       かぜに加勢するしかない 
         タブローに
     手を留守にしてちからなく仕方なく止水栓へと 
       前未来 手を咲かせては
しま(

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コワレタスズヲ鳴ラシツヅケル

未来結社誌(十二月号)に掲載

 コワレタスズヲ鳴ラシツヅケル  
背鰭のあたりから逃すしくみ 三角に圧縮された気概をときどき放っては街角が暮れてゆく 遠くで点呼の声がするけれど 確かめることもなく生き長らえる 別珍のこすれあう息づかいシンクから海まで途切れることなく 調律された鍵盤なのだから 或いは馬の背中越し取り壊し寸前のビルディング その外延 にこそまどう

肌の うさぎを放つ夏へと小径であ

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声ル

声ル
視線を固定すれば純粋音質(紙、詩、死、のオト)は聴き分けられる タレニ(茂 モ)シラレ図/わたし(渡=詩)のなかのバタイユが(我)ロートレアモンが(我)月の匂いを孕みながら/敵(適)地へ赴こうとするアイヨクの連鎖に言葉は制御不能だ/差別するみずが(みずから)差別される閾(息)へと滲み出て(生)きタガルのだ/侵犯という裏切りを唆(そそのか)され鳥になり樹になり読ミ知ガ得ル/笑みを並べながらも分

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ながのには

長野には 感情的な空を隠蔽しようとしてしきれない雲が

シナノスイートの陰影は魚のよう、ひとりひとりの換喩は波立ち

開示だと諭しては浮かぼうとするレジ袋にかお、ひとりの姉が

かたちのない姉へ峡(はざま)の放心と部屋の木軸は映画館になる

明るかったり陰ったりしながら山むこう息を繋いだだれかは姉で
#短歌

ナニワウラウチルヤマノツキチル

海を浮上させて船を沈下させて、絵心がなくふたつのままです(絵具を溶きながら二本の筆で)
うみが出ていくところのそらの隔膜を貫通するのが 内臓を食べる
二本の管が貫通して僕らはきっと生きながらえる川です
すずしからあつしへつたわりますようにしびれ野とよみよわいに浸かる
こども空びとやがてあかつきなる網目越しのは手などと奥をみす会(え)
下車をさそう急いてはLINEの駅近くナニワウラウチルヤマノツキチ

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自動記述の試みとしての短歌

自動記述の試みとしての短歌

会陰部はまだ塞がらない(手のひらの)言葉を覚える以前の海に
ことばを患い落下した翼だけ捨てられている なぜ愛するの
尿(ゆまり)のあとの砂が縮んで添えられる折口のよごと、ものがたり、うた
予感から余寒を導く よごと、ものがたり、うた またため息を吐く
側勒努趯策掠啄磔の順の字画を経巡る風景となれ
花火のように打ち上げられたその頂きで青いひとみを海は見開く
子音の砂

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ひとつの遊び

ひとつの遊び

いのちの順番を数える口唇が行列の先の先の先の先の
順番を並べ違える大母の悲しみの腑分け海への遡源
誤読するような月夜の皿の上の魂はときに名前をもたない
道の罪を頭蓋を押さえトリガーへ指を差し入れ塔が崩れる
譲歩され整えられる距離にだけ道はあなたの添付を許す
水だけで大丈夫ですの触れ込みを連れ帰っては名前をつける
咳をする投薬をする瞬きのその度いつも小石を投げる
長靴のひとは言葉

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かいわれの花

かいわれの花

曇り日に見覚えがあって眼で辿る向かいに置かれた赤いケースを
斜め前に出迎えているわたくしを遮る仕掛けの誰かの人かげ
二回目の海道を渡り橋桁のひかりのすがたに招かれていた
鳥 二回目という海道のその先の雫(しずく)のような大人に会いに
ちぎられたパンのふたつの過不足をひとりと過ごす穂のような 鳥
拭えない 湾曲をする橋と橋を繋いでみても闇をとぶ鳥
鳥 磔の木の正直な直線と途切れる

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短歌的実験(7)

短歌的実験(7)

駅員も椅子職人も永遠をつくりはしない、ましてや詩人も
妻は捏ねて捏ねて捏ねて子をつくりサラマンダー(火)に焚べてはきれい
心臓が迫害される冷え切った部屋で蜥蜴のままで寝返る
映写機の父はひかりに動きだすきりぎりすきりぎりす切り偽りス
他所の家の匂いの犬について行く転がる柚子に母性は宿り
重なったときのあなたのあこがれに譲ろうとする影のかたちよ
畳への愛撫を遠い未来雨をわだつ

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ゆひ ゆき たや

ゆひ ゆき たや

ゆひ ふき たや 底翳の星にもたらした次頁の次頁の次頁の
腹のなかにトリチウムだけを温める孵化しなくても裂け目は叙事詩(エピック)
ガラス越しの点滅信号、論文を綴ればふいに詩は隆起する
からだに気孔は九つポエジィは微風や鳥と関係をもつ
またきみの後始末にすぎないけれど目隠しのつぎの林檎を剥いてる
白濁の眸を与えられている病葉の穴から妖精の距離へ
麦の穂の あひ あみ あえ 

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