小説『夏の背骨』

7
ノート

ショートショート「背骨から始まる」

夏の空気は濃くて重くて、上からの日差しと下からの照り返しはまるで何かの罰を受けているようにも感じる。

会社の昼休み、スターバックスの裏手の駐車場でアイスチャイラテを吸っていたら、後輩の矢代君がふざけてわたしの背中にジャンプしながら覆いかぶさってきて、俺軽いからおんぶしてくださいよという。きっとミヤさんより俺の方が軽いから、なんて言うから一回振りむいて彼の腹に軽くグーパンしてやった。

しかしこ

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ショートショート「サカナクション・コネクション」

丸メガネ、アトピー性皮膚炎の肌、ゆるくかかったパーマ(天パ?)パンツから見えた靴下(ださい)。
ちらりと目が合う、2秒間見つめ合って逸らすのはいつだってあなたから。

休憩室にいるあなたはいつも1人。
その群れないスタンス、絶対的に好感が持てる。
ゴミを捨てに席を立ったあなたと、また1秒目が合う。

声かけてみる?部署もわからないのに?
LINE ID渡してみる?ちょっと軽すぎない?

サカナクシ

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ショートショート「真夏の夜の匂いがした」

あの日、彼女から花火大会に誘われた夜、最寄駅から自宅まで歩いているとき、はっきりと真夏の夜の匂いを感じた。
懐かしいなにかの匂いに似ているけれどそれがなにか思い出せなかった。

いま、開けた窓からは同じく真夏の夜の匂いがする。そしてさっきまで抱いていた彼女の首筋からは甘酸っぱい汗の匂いがする。同じシャンプーで洗ったから髪の毛は俺と同じ匂いがする。赤の椿。

「二宮さん、ほんとは彼氏いるんでしょ?

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ショートショート「ナイトフィッシング ソー グッド」

開始のあのとき、あなたの手がわたしの服にするすると入ってきて片方の指でブラホックとぱちんと瞬時に外されると、あ、やばいハズレ引いてしまったと非常に残念な気持ちになる。

モテなさそうに見える割りに意外とモテてきたんだね。これまでどれだけの女を抱いてきたんだろう、どれだけの体位を知っているんだろうどれだけの人間を泣かせてきたんだろうと頭の中で勝手にかつての恋愛遍歴を妄想して、そしてちょっと萎える。

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ショートショート「蝉の背中」

ミヤさんの二の腕はふくふくしている。
それを指摘すると、今ダイエットしてるから秋には痩せるよと言っていーっと歯を見せて鼻に皺を寄せる。子供か。

ミヤさんというのは下の名前ではなく、苗字である二宮から取られたあだ名だ。

彼女は職場では良い子ぶってるけど、良い子ぶっているのはバレバレで、俺と話す時にはそこそこ口が悪い。
彼氏がいるのにすぐ男と寝るという噂がまことしやかに流れているが実はそうではなく

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ショートショート「スーパーハムの夜」

「セックスの後のみりんがうまい」と言ったのは室井佑月だけど、私ならコトが終わったあとにはしょっぱいものを口にしたくなる。

たとえば、とんでもなく塩分多めで何の肉かわからない体に悪そうなスパムとか。

「九条さん、なんでもいいからなんか夜食食べません?コンビニとかで買うのでもいいし」

シングルベッド、私の隣で全裸の仰向けになり額の汗を拭った矢代くんは、エアコンのリモコンを片手でいじって温度を24

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ちびまゆさんに「ナイトフィッシング ソーグッド」を朗読して頂きました!

先日のラジオでもお世話になったちびまゆさんに「ナイトフィッシング  ソーグッド」を朗読して頂きました!

ちびまゆさんの朗読ページはこちらから

ちびまゆさんにはこれまで「僕の愛しのミーちゃん」、「トライアングル・ドライブ」を朗読頂きました。

今回は連作「夏の背骨」の中のひとつのお話です。
ちょっとエロチックな物語なので、どんな感じになるのか想像できなかったのですが、予想以上の一夜を表現してくだ

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