掌編/短編小説

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ノート

「あまね」の話を知っているか?

もしもあなたが少し機能の劣ったヒト型アンドロイドとして生を受けたとしたら、あなたは何を思うでしょうか。

2025年に文科省の指示により開発されたヒト型アンドロイドの「あまね」。

ロボットなのでもちろん生殖機能はありません。
男でも女でもない性別として設定されています。

なぜ性別が与えられなかったのか。

政府の指示により多様化した性に対応するため、意図的に性別を割り振らなかったのです。

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小説『その生態はまだわかっていない私たち』

ハッシュタグ「8月31日の夜に」にちなみ、過去に投稿した小説を再掲載致します。

このお話はいじめの主犯格である涼子と、いじめの被害者である いつみの掌編小説です。

彼女たちは幼い頃から生活を共にした親友でしたが、涼子はいつしかいつみの言動に不満を抱くようになり、学校中を巻き込んでのいじめを働きます。

涼子としては初めはいつみが気に食わなかったから少し痛い目に合わせようとしただけでした。

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掌編小説『かみさま』

あの人はまるでかみさまのような存在でしたと例えたなら、あなた方は揃いも揃って私のことを気味が悪いと嗤うでしょうか。

思えば恋というものは、その想いが自身の中で高まり、昂ぶり、到底私の手の届かないお方であると気づかされたとき、宗教のそれとよく似た気持ちに寄っていくものと私は思うのです。

高尚なこの想いを汚されたくない誰にも見せたくない、そのような感情をひとまとめにしたような心持ちになったことはあ

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ショートショート「スーパーハムの夜」

「セックスの後のみりんがうまい」と言ったのは室井佑月だけど、私ならコトが終わったあとにはしょっぱいものを口にしたくなる。

たとえば、とんでもなく塩分多めで何の肉かわからない体に悪そうなスパムとか。

「九条さん、なんでもいいからなんか夜食食べません?コンビニとかで買うのでもいいし」

シングルベッド、私の隣で全裸の仰向けになり額の汗を拭った矢代くんは、エアコンのリモコンを片手でいじって温度を24

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ショートショート「じゃあ、そのテイで」

「こんばんは、ご指名ありがとうございます。ユナですにゃーん」

ファッションヘルスの風俗嬢が個室ドアをノックして室内に入ると、女は軽く握った拳を猫のようにしてアニメ声で挨拶をした。
ツインテールをした彼女は明らかに安い生地で縫製されたセーラー服を着用している。歳は20代前半でこってりとメイクをしているので制服がどうしても浮いて見えてしまう。

「あ、そういうのいいんで。ふつうに話してくれて大丈夫」

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ショートショート「もはや恋なんてしない。」

神の前で永遠を誓う、ということは隣にいる配偶者と生涯ひと組のツガイになることを誓うということで、それはつまり健やかなる時も病める時もこの人とのみセックスをしますよと宣言することに他ならない。

んだけど、何年かに一度私を恋の罠に引っ掛けてくるやつがいる。相手としてはほぼ無意識だろうけど。
指がむくんで左指のリングがぎちぎちになっているのを見るとぽあぽあと想像の翼が羽ばたく。

その指輪はあたかもお

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ショートショート「蝉の背中」

ミヤさんの二の腕はふくふくしている。
それを指摘すると、今ダイエットしてるから秋には痩せるよと言っていーっと歯を見せて鼻に皺を寄せる。子供か。

ミヤさんというのは下の名前ではなく、苗字である二宮から取られたあだ名だ。

彼女は職場では良い子ぶってるけど、良い子ぶっているのはバレバレで、俺と話す時にはそこそこ口が悪い。
彼氏がいるのにすぐ男と寝るという噂がまことしやかに流れているが実はそうではなく

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ショートショート「真夏の夜の匂いがした」

あの日、彼女から花火大会に誘われた夜、最寄駅から自宅まで歩いているとき、はっきりと真夏の夜の匂いを感じた。
懐かしいなにかの匂いに似ているけれどそれがなにか思い出せなかった。

いま、開けた窓からは同じく真夏の夜の匂いがする。そしてさっきまで抱いていた彼女の首筋からは甘酸っぱい汗の匂いがする。同じシャンプーで洗ったから髪の毛は俺と同じ匂いがする。赤の椿。

「二宮さん、ほんとは彼氏いるんでしょ?

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ショートショート「ナイトフィッシング ソー グッド」

開始のあのとき、あなたの手がわたしの服にするすると入ってきて片方の指でブラホックとぱちんと瞬時に外されると、あ、やばいハズレ引いてしまったと非常に残念な気持ちになる。

モテなさそうに見える割りに意外とモテてきたんだね。これまでどれだけの女を抱いてきたんだろう、どれだけの体位を知っているんだろうどれだけの人間を泣かせてきたんだろうと頭の中で勝手にかつての恋愛遍歴を妄想して、そしてちょっと萎える。

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ショートショート「毒の世界」

彼女は欲しがり屋だ。
他人のSNSの記事はたいして読まないくせに自分の投稿記事にいいねがつかないと憤る。

そんなんどーだっていいと考える俺からしてみればくそみたいな怒りだ。

少しは他人の作品でも読んで感想でも書いてみたら?と提案したら、そんな営業みたいなことはしたくないと言い張る。彼女の安いコスメメーカーのチークがきらきらひかる。ちうちうと濃いめのカルピスをストローで飲む。同棲して結構経つのに

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