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掌編/短編小説

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基本的に連作ではない小説をまとめています。日常から一歩だけ外れた世界、そこらへんに転がっている恋、病とふだんの生活、鬼との友情なんかを書いています。
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2018年12月の記事一覧

【掌編小説】ムロツヨシとマッキー極細ペン

【掌編小説】ムロツヨシとマッキー極細ペン

ムロツヨシと私は恋人だった。

夢のなかで私たちは確実に恋人だった。

世界は退廃していた。

シン・ゴジラによって東京は壊滅状態だった。

高層ビルは軒並み破壊され、家という家は崩れ落ち、

道路は陥没し、街路樹はなぎ倒されていた。

遠くの方からシン・ゴジラの咆哮が聞こえる。

きゅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおう

と聞こえる。

むしろそれ以外の音は聞こえない。

いつも私の心

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耳で聴く小説です。35分。

鬼との友情物語です。よろしければどうぞ。

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【音声化にあたって、一部変更があります】


武雄を乗せた軽自動車に雷が落ちたのは、6月のある豪雨の晩のことだった。

恐怖のあまりに失神した武雄が次に目を覚ましたときには恐らくは翌朝だろう、見知らぬ民家の布団に寝かされていた。

もしかして誰か俺を助けてくれたのか。

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【聴く小説】透明でまっとうな新しい日々

聴く小説 第3弾 は「【掌編小説】透明でまっとうな新しい日々」 です。

再生時間は約15分です。


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「透明でまっとうな新しい日々」

岩波アラタの綺麗な弧を描く後頭部が私は好きだ。
彼の髪は重たくて黒い。

部屋でふたりソファーに並んで眠たい映画のDVDを観ている時、私はおもむろに彼の髪を優しく撫でる。寝たい、の合図。それから彼のコットン100%のシャツをゆっく
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