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2019年8月の記事一覧
ショートショート「真夏の夜の匂いがした」
あの日、彼女から花火大会に誘われた夜、最寄駅から自宅まで歩いているとき、はっきりと真夏の夜の匂いを感じた。
懐かしいなにかの匂いに似ているけれどそれがなにか思い出せなかった。
いま、開けた窓からは同じく真夏の夜の匂いがする。そしてさっきまで抱いていた彼女の首筋からは甘酸っぱい汗の匂いがする。同じシャンプーで洗ったから髪の毛は俺と同じ匂いがする。赤の椿。
「二宮さん、ほんとは彼氏いるんでしょ?
ショートショート「毒の世界」
彼女は欲しがり屋だ。
他人のSNSの記事はたいして読まないくせに自分の投稿記事にいいねがつかないと憤る。
そんなんどーだっていいと考える俺からしてみればくそみたいな怒りだ。
少しは他人の作品でも読んで感想でも書いてみたら?と提案したら、そんな営業みたいなことはしたくないと言い張る。彼女の安いコスメメーカーのチークがきらきらひかる。ちうちうと濃いめのカルピスをストローで飲む。同棲して結構経つのに
ショートショート「背骨から始まる」
夏の空気は濃くて重くて、上からの日差しと下からの照り返しはまるで何かの罰を受けているようにも感じる。
会社の昼休み、スターバックスの裏手の駐車場でアイスチャイラテを吸っていたら、後輩の矢代君がふざけてわたしの背中にジャンプしながら覆いかぶさってきて、俺軽いからおんぶしてくださいよという。きっとミヤさんより俺の方が軽いから、なんて言うから一回振りむいて彼の腹に軽くグーパンしてやった。
しかしこ