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#掌編小説
【ショートショート】『上のヒトに代わって』
「あのさあ、おたくで注文したアンプ、速攻で壊れたんだけど、どうなってんだよ。これじゃぁ週末のライブ、仕事にならねえだろうが!」
電話口の男は末尾の「だろうが」を一音ずつ強調して怒声を飛ばした。
瞬時に花音は男の声が小さくなるように電話機の「小」ボタンを連打する。
音声機器メーカーのカスタマーセンターで働く花音は、パソコンのモニターに向かって何度も深く頭を下げる。おわびをするときには出せる
超掌編『夢のような薬』(497文字)
新薬の研究をめぐり、連日マスコミが情報の争奪戦を繰り広げていた。
「この薬でどんな細胞も若返るというのは本当ですか?」
おぼつかない足取りで杖をついたR製薬会社のY社長に、マスコミがいっせいにマイクと望遠レンズを向けると、広い額を撫でつつ彼は口を開いた。
「可能性はあると言って良いでしょう。しかし研究段階ですので道のりは長そうです。何しろ神の領域に入りかねない夢のような薬ですので」