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掌編/短編小説

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基本的に連作ではない小説をまとめています。日常から一歩だけ外れた世界、そこらへんに転がっている恋、病とふだんの生活、鬼との友情なんかを書いています。
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#掌編

【掌編小説】合法だけどやべーやつ

【掌編小説】合法だけどやべーやつ

「私ね、まだ合法だった頃のやべーやつ、使ったことがあるんですよ」

 店内の1番奥のテーブル席をはさみ、対面に座ってやべー話を口にしているのは私の上司、アララギさん。

 アララギさんは、部下である私にも敬語を使ってくれる。一人称は「俺」ではなく「私」。

 アララギさんは体格ががっしりしているので、遠目から見るとまるで大型の冷蔵庫のよう。

 最近は多忙なためか美容院に行く暇がないようで、ストレ

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掌編小説 『よだかと、ふたり』

掌編小説 『よだかと、ふたり』

「来年のことを言うと鬼が笑う」と言うけれど、新年を明日に控えた青年3人、ボロアパートの一階で電源オフのこたつに三方向から足を突っ込みつつ、来年こそ鬼でも悪魔でもなんでもいいから、いやできれば満席のお客さんをどっかんどっかん笑わせたいよな、などと語らっておりました。

貧しさゆえに暖房器具に頼らなくても3人が愛する「お笑い」へ熱意ゆえか、窓に結露した水滴は音もなく静かにつう、つうとしたたり落ちていき

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ショートショート『本日は曇天なり』

ショートショート『本日は曇天なり』

午前中にラジオで流れていた天気予報によれば、日中はくもり、夜はなんて言っていたっけ。ところにより、雨?
 
なだらかに話す女性の声の途中から先が思い出せないが、今日の予定は図書館に出かけるだけだ。それほど気にしなくてもいいことだ。

普段、何かにつけて音楽を流さないと落ち着かない私だけれど、今日はイヤホンをせずに図書館に行こう。
玄関のドアを開けて黒のコンバースの左足から外に踏み出した。木曜日の1

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小説  『夢のような彼』

小説  『夢のような彼』

山手線の中で、佐藤二朗の大きな体にもたれかかる。汗の匂いと、車内の暖房の匂い。黒いコートを彼は羽織っているから、ガタイのいい体が余計に大きく見える。

わたしと彼との関係はわからない。だってこれは夢だから。ふと視線をやったわたしの左手薬指にリングはない。しかしこれも夢のなかなので未婚かどうかはあてにならない。

なぜならわたしは実際の生活でも結婚指輪を毎日つけるわけではなく、つけることもあれば外し

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小説『その生態はまだわかっていない私たち』

小説『その生態はまだわかっていない私たち』

ハッシュタグ「8月31日の夜に」にちなみ、過去に投稿した小説を再掲載致します。

このお話はいじめの主犯格である涼子と、いじめの被害者である いつみの掌編小説です。

彼女たちは幼い頃から生活を共にした親友でしたが、涼子はいつしかいつみの言動に不満を抱くようになり、学校中を巻き込んでのいじめを働きます。

涼子としては初めはいつみが気に食わなかったから少し痛い目に合わせようとしただけでした。

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小説『夏色』

小説『夏色』

放課後、自転車の後ろに親友の夏音(かのん)を乗せて、くっちゃべる目的でイオンのフードコートを目指してペダルを漕いで行く。
セーラー服からちらりと見えたヘソも気にせず、私は精一杯に前を向いて自転車を漕いで行く。

空には入道雲がもくもくと姿を現し、ザ・日本の夏という感じ。ここ板橋区は果てしなく埼玉に近い場所に位置し、夏場は都内でも気温が高く上がる。通学に利用している東武東上線はえげつない人身事故率

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不眠ヒグマ

ヤスタニアリサさんには「私は雪の日に死にたい」で始まり、「ほら、朝が来たよ」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば10ツイート(1400字程度)でお願いします。 #書き出しと終わり
shindanmaker.com/801664

書く練習。なんでも夢オチにすりゃいいって話しではないですよね。
それと、ちょっとだけ川上弘美意識して書いてます。

私は雪の日に死にたい。
私は私を殺すために冬の夜、

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700字小説 オムライスをふたりで、わかつ。

700字小説 オムライスをふたりで、わかつ。

ヤスタニ アリサさんには「爪先立ちの恋だった」で始まり、「それが最初で最後でした」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば5ツイート(700字程度)でお願いします。 #書き出しと終わり
shindanmaker.com/801664

「書く」練習中です。
思いつきで書くのではなく、お題を頂いて書く
練習をしています。

きっと、ついに、それは、ああ、たしかに、
などは文字数合わせるのにとても便利

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【小説】あまねく処理をドクタに捧ぐ

【小説】あまねく処理をドクタに捧ぐ

ええ、いま目が覚めました。

「起動?…そうですね、問題なく起動致しました。情報はすべてフォーマットされ、最適な環境で動作を開始しています」

頭の中で0と1の数字が連続的にカチカチカチカチと動いていくイメージ、視界はクリア、私はこの世界にアンドロイドとして、いま、生を受けました。

研究室の大きなガラス窓の外は花曇りのひんやりとした雰囲気が感じ取れます。
ソメイヨシノの薄ピンクの花びらがふわりと

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作品一覧(2018.12.28更新)

作品一覧(2018.12.28更新)



お初にお目にかかる方、はじめまして。
いつも仲良くしてくださっている皆々様、ごきげんよう。

ひょっこりはんが早稲田卒って知ってた?

……納得!!
ヤスタニアリサです。

さて、いままでに投稿した作品を4つの軸を基準に振り分けして
表にまとめてみました。そしておすすめ順に並び変えました。

下記に作品のリンク一覧も作ってございます。
おいしいお菓子も、温かいお茶も出せませんが、
作品を覗いて

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