新しい組織のカタチを考える―ティール組織の実践と考察

 このnoteでは、「ティール組織」で書かれている特徴に基づいて、Finatextグループがこれまでやってきたことをマッピングし、実際の組織においてどのように実践しているのか、どのようなことはできていないのか、またティール組織的な企業を運営していくことの難しさはどこにあるのかを紹介できればと思います。

■きっかけ

今年の始めに「ティール組織」を読んで、衝撃を受けた。

 私たちFinatextグループの経営方針とあまりにも似ていたからだ。そして、直感的にやってしまっていたことが整理され、同時に自分たちがまだできていないところがとても鮮明になりました。ずっとやろうやろうと思ってはなかなかできていなかったのですが、組織としての課題を洗い出すため社内用にまとめたので、この機会にnoteにも書いておこうと思います。

■まず、ティール型組織とは・・・・

一言でいうと、、、

「マネジメント(管理職)からの指示命令系統はなく、組織の目的を実現するために、メンバー全員が信頼に基づき、独自のルールや仕組みを工夫しながら、目的実現のために組織運営を行う組織。」

■次に、、Finatextグループとは・・・

・Finatextは、日本を中心にグローバルで、テクノロジーよって金融業を"サービス"として再構築することを目指すFintechベンチャー
・2018年9月現在、6か国にわたり約100名のメンバーが在籍
・約100名しかいないにもかかわらず、会社は6ヵ国8社に分かれており、最大のエンティティでも30名程度
・組織体制は、完全フラットで、取締役以外に役職は存在せず、また部署・部門という概念もない

■ティール組織の3つの特徴

 「ティール型組織」では、その共通する特徴として、次の3つを" ブレイクスルー"として挙げている。

 ・①セルフマネジメント
 ・②全体性(ホールネス)
 ・③存在目的

①セルフマネジメント
・上司からの指揮命令ではなく、メンバーの自主性と信頼に基づき、組織運営を行うこと
・本の中では、セルフマネジメントを「階層やコンセンサスに頼ることなく、仲間との関係性のなかで動くシステム」と説明しており、組織構造の具体的な特徴として、以下のものが主に挙げられている
<セルフマネジメントの8つの特徴>

②ホールネス(個人としての全体性)
・プライベートでの自分と職場での自分を分離せず、常にありのままの姿で活動すること
・①のセルフマネジメントを組織的に機能させるためには、「メンバー間の高い信頼」と「個々人の高い能力」が鍵となる
・このため、メンバーの真の姿を理解すること、個人的な不安や弱さに寄り添いメンバーの能力が最大限発達される環境を作ることが大切で、そのためには"ありのままの姿"を見せることが大切(※この点については、「なぜ弱みを見せあえる組織が強いのか」が詳しい。)
・メンバーが"ありのままの姿"の姿を見せられるように、「安全」、「安心」だと思える空間を作ることが大事であり、下記のような取り組みが行われている
<ホールネスの7つの特徴>

③存在目的
・組織としては、もはや「生き残ることへの執着」はなくなったため、この時代においては「自社の存在目的」そのものが重要になっており、存在目的は人々を勇気づけ、方向性を与えるエネルギーとなる(※これについては、セリグマンの「ポジティブ心理学」が詳しい。)
・組織は「自らの情熱を持ち、自らが何者かを認識し、自らの創造性を発揮し、自らの方向感覚を持った独立した存在(有機体)」と考えられている
・よって組織のメンバーは、将来を予測し統制しようとするのではなく、組織が将来どうなりたいのか、どのような目的を達成したいのかに耳を傾け、理解することが重要
・ティール型組織では、組織の存在目的に耳を傾けるための以下のような慣行を確立している
<存在目的の6つの特徴>

 以上が、「ティール型組織」の概要である。次に、上記の「特徴」をベースに、Finatextグループの組織において実践していること当てはめてみたいと思う。

■Finatextグループの組織設計

・Finatextの組織は、「自分事」をキーワードに、メンバーがいかにチームとしてモチベーション高く効率的に活動することができるかを重視して設計している
・特に巨大企業ばかりで、大資本と長期のブランドが求められる「金融業界」はベンチャーが戦うには最も難しい領域。その中で戦っていくには、組織の「スピード」「フレキシビリティ」が非常に重要だと考えている
・そのため、<①セルフマネジメント>により、主体的なアクションと意思決定の迅速化を目指している。また、それを可能にするために、<②ホールネス>を通じて、ルールの簡潔化と信頼関係の深化を図っている。
・一方で、<③存在目的>は、あまり強くない。特に、「戦略」そのものを優先してこなかった。このことは、会社のステージと金融業界特有の事情がある。金融業界は大資本との競争があり、顧客からは高い信頼も求められる。このため、スケールしシェアを取り勝きるには非常に時間がかかる。シングルプロダクトで勝負しても、大資本の企業にはキャッチアップする時間があるため、容易につぶされてしまう。よって、僕らは明確な戦略を持たず、ニッチな勝てる領域と戦い方を探し続けてきた。

ここからは、具体的な取組みを紹介する。
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<①セルフマネジメント>
〇1.組織構造
・1つの組織の人数に上限を設ける
 -Finatextグループでは、1社を1チームとして運営している
 -「自分事」としてとらえることができるようにするためには、チーム中で行われていることを正確に把握できる必要がある。そのためには、チームメンバーの顔が見え、状況が自然と共有されえる人数に絞ることが重要
 -現状では最大40名(学校の1クラス分)を最大だと考えている

・部署・部門は設けない
 -1組織内に部門や部署は設けていない
 -チーム全員が同じ方向を向き、「自分事」として捉え効率的に活動するためには「組織のサイロ化」は絶対に避けなくてはならない
 -部門を分けると、担当業務が固定化され、これは自分の仕事、これは人の仕事と分けるようになる。すると、部門間での成果の奪い合い/仕事の押し付け合いが始まり、意味ないの調整・打ち合わせが始まってしまう
 -ただし、これを実現するためには上記の「組織の人数は絞る」ことが大切だと考える

・「部下」はいない
 -階層のあるピラミット構造にはせず、上司と部下といった関係は存在しない。「部下」という単語自体NG
 -一方で、このことはチーム内の全員が「平等」であることを意味するわけではない。各メンバーのもつ影響力やスキルに基づき、流動的で自然発生的な階層は存在する

〇2.スタッフ機能
・ミドルバックオフィスは必要最小限に
 -スタッフ機能とは、間接的に事業(具体的に言えば収益)に関連する業務のこと
 -こうした業務に従事するメンバーが増えれば増えるほど、課されるルールや手続きは増えてしまう。「スタッフ機能を担う人々は、ルールや手続きを改正したり、専門技術を積み上げたり、解決すべき問題を探したりといった「付加価値を出す」方法を見つけることで、自分の存在意義を証明しようとする傾向」がある
 -このため、スタッフ機能を極力小さく抑えており、規制業種のスマートプラスを除くと、スタッフ機能専業のメンバーは3名のみで運営されている

・スタッフ機能はメンバー間で幅広く分担しよう
 -少ないスタッフ機能を実現するためには、各メンバーが薄く広く分担するしかない
 -このため、専門性の高い業務を行っている人であっても(エンジニアでもデータサイエンティストでも)、掃除から人事まで広く分担している

〇3.プロジェクト管理
・全体定例ミーティングは週1回のみ
 -定例のMTGは、チーム全員が集まる週1回30分の全体MTGのみ
 -互いの稼働状況を把握し、困っていることがあればヘルプを求め、必要に応じてその場でメンバー全員でリソースアロケーションを調整
 -必要以上の定例MTGは仕事の妨げになるのでできる限り少なくすることを心がけている

・プロジェクトオーナー/プロダクトオーナーが責任を持つ
 -プロジェクトの細かな管理は行わず、プロジェクトオーナー/プロダクトオーナーとなったものがすべての責任をもって対応する

〇4.役職と職務内容/役割の配分
・役職名を設けない
 -会社法上必要な最低限の「取締役」以外には役職はない
 -役割は常に固定化されておらず、プロジェクトによって流動的に変化していくため、意図的に職務内容を明確化しないようにしている
 -職務内容を明確にしてしまうと、無意識にこれは自分の業務、これは自分の業務ではない、線引きをしてしまう。これは、助け合いその瞬間に最適なリソースアロケーションをすることを妨げてしまう

〇5.意思決定
・ルールは極力作らない
 -決められたルールは、理論的に正しいが、現実の複雑さに対応できるものにはならない。結果として、ルールは、メンバーの自主性、モチベーション、スピードの低下をもたらすと考える
 -逆にルールがないと、規律・責任感・解放感をもたらすことができる
 -大事なことは、「どうやってよりよいルールをつくるのかではない。ベストの解決法を見つけ出そうとするチームをどうやって自分が支えるか」

〇6.情報の流れ
・報酬以外の情報は透明に
 -会社のプロジェクトの状況、財務に関する情報は月次のタウンホールMTGで全メンバーに共有(ティール組織で書かれていることとは異なり、報酬は透明化していない)

・意思決定MTGは希望者全員参加自由
 -新たな取り組みを始めるときなどの意思決定を行う議論は、希望者は参加自由
 -コンフィデンシャルな内容も含まれるため、全メンバーに一律共有はしないものの、希望した参加者にはすべてを共有

〇7.実績評価
・複数のFBによりフェアさをつくる

 -P2PフィードバックとCORPフィードバックにより、できる限りフェアな評価を行う

〇8.報酬
・なし

<②ホールネス>
〇1.価値観と基本ルール
・性善説による原則のみ
 -あらゆるルール設計は徹底的に性善説に基づき原則のみ
 -例えば、飛行機、ホテル、会食の金額に上限は設けない。上限を設けるとそのぎりぎりまで設定するようになり意味がなくなる。5回1万円の接待をするなら、5,000円4回と3万円の1回の方が意味のあるだろう
 -これはメンバーの性善説のもとに成り立っており、悪意をもって利用すれば非常に簡単にチーティングができてしまい、そうした行動には非常に弱い。それでもそういう裏切りによる被害よりも、ルールをシンプルにすることによるストレスの軽減、モチベーションの向上の効果は高いと考えている

〇2.内省できる環境
・なし

〇3.コミュニティ/信頼の構築
・「プロフェッショナルファミリー」
 -できる限りプライベートと仕事の区分けをなくすことを重んじている。Finatextグループでは、メンバーのことを「プロフェッショナルファミリー」と呼ぶ

・自然な信頼関係の構築を

 -信頼関係がなくなるとこの組織設計は容易に崩壊する。このため、信頼関係が築けるか否かが重要であり、採用は非常に慎重に行う
 -また、年に1度大規模なイベントではなく、「ノミテキスト」、「メシテキスト」といった形で、こまめに、フランクに、食事・飲みを共にする機会を設定。本にも書かれている通り、「結束するためのイベントを実施する企業は多いが、そうした活動はどれも似たり寄ったりで、あくまでも表面的な関係を維持するだけで、本当の意味で何らかの深みのある信頼関係やコミュニティーを築くことはできない」ため、日常の中に入れ込む設計をしている

〇4.建物と組織図
・ガラス張りのオフィス
 -オフィスを3エリアに分けているがすべてガラス張りとすることで、一体感と気軽なコミュニケーションの活性化を目指している
 -とてつもなくケチなうちの会社で唯一お金をかけたところでもある

・全員フリーアドレス
 -社長室などステータスに付随するものは一切設置しない
 -利用できる設備は全員共通とし、メンバー間での格差を一切設けない

〇5.採用/オンボーディング
・採用面接は自分で
 -採用面面接は必ず一緒に働く可能性がある人自身で行う

・採用基準は、能力のみならずカルチャーフィットを
 -組織の前提である「邪気がなく、向上心のある人」でなければ、どれだけ優秀でも採用しない。一人でもチーティングをし始めると全員に伝播してしまうので、1人も入れないことがものすごく大切

〇6.教育研修
・月1万円は自由に使え
 -月1万円は自分が学びになると思ったものに自由に使っていいとしている。文字通りのスキルからソフトスキルまで、どのようなものでも構わない

・能力開発は主体的に
 -自主的にDevelopmentを考え提案し、仕事に役に立つと納得できるものであれば、上限なくサポート(今年は、Tech campや東大の博士課程の費用をサポート。)
 -要望の多かった「英語」については、ネイティブ講師をオフィスに呼んで、希望者全員が仕事中に受けられる環境を用意

〇7.フィードバック
・P2PフィードバックとCORPフィードバック
 -フィードバックは共に働く人同士で行うP2Pフィードバックと、マネジメントと行うコーポレートフィードバックを設けている
 -半期ごとに目標設定とFBを行い、その間に中間の進捗確認のFBを行う(年計4回)

<③存在目的>
〇1.戦略
・なし

〇2.意思決定
・基本原則にのっとって各自が意思決定
 -当社にとってはかなり限りあるリソースであるお金(給与、採用、投資)以外については、各自(特にプロジェクトオーナー/プロダクトオーナー)が意思決定する
 -意思決定を行う前に、必ず相談はすることを求めるが、最後に決めるのは自身であるべき

〇3.競合他社
・なし

〇4.成長と市場シェア、利益
・「利益」にこだわる
 -永続性があり、大きな仕掛けをしていくうえで、「利益」をきちんと出していくことに強いこだわりを持っている。これは近年のベンチャーのセオリーである、思い切り赤字を掘って、一気にシェアをとって"Winner takes all"の状況を享受するという戦略とは異なっている

〇5.マーケティングと製品開発
・具体的な数名に深く刺さるサービスを考えろ
 -プロダクトを作るときに、何を作るかは、大規模なユーザーアンケートでも市場調査でもなく、ごく一部の少数の人に深く刺さるものは何かを常に考える

・「Stay original」にこだわる
 -既に誰かがやっているサービス、海外でうまくいったサービス、を導入することはしない。存在目的と合致するために、誰かのまねではない「ユニーク」にこだわりを持ち続ける

〇6.プランニング、予実管理
・「年間予算の作成と達成」を目的にしない
 -予算を作りそれに向けて動くことはわかりやすいが、市場そのものが新しく、急激に変化する環境においては予算を作りそれを達成するために無理やり努力することが最適な行動になならないと考える
 -最大限努力し、その結果「どうだったか」に重きを置いている
――――――――――

以上がFinatextグループで実際に実践していることである。逆に、「ティール組織」では書かれている取組みのうち、Finatextでは実現できていないことを紹介する。

■僕たちがまだできていないこと

<セルフマネジメント>
〇4.役割の配分
・チーム内の役割の明確化
 -各メンバーのスキルを「タグ」化して、お互いの能力の可視性を向上させたいと考えている
 -このことで、「より円滑にサポートをしあう」ことができる他、あの能力を向上させたいときは、その能力を持っている人と同じプロジェクトに入るなどがやりやすくなる
 ⇒どういう粒度で「タグ」化するか、自然とアップデートしていけるかの作り込みが難しく実現できていない

〇5,意思決定
・「意思決定権」の分散
 -意思決定権限はそれぞれ(特にプロジェクトオーナー)が持つようにしたいが、必ずしもそのようにはし切れていない。
 -結果的にマネジメントである人に意思決定権限が集中していることになってしまっている部分がある
 ⇒存在目的、戦略の明確化が十分ではないため、「助言プロセス」が明確になっていないためうまくいっていない

〇6.情報の流れ
・情報の透明化
 -各メンバーが「忙しすぎて混乱する」と思ってしまうため、ある程度具体化するまで共有できていないことがまま存在する。きちんと整理したうえで共有しようと思えば思うほど、他のメンバーとのギャップが広がり、情報を伝えてもきちんとした理解が得られなくなってしまう
 ⇒情報を持っている人の意識の問題。気軽に早期の情報共有、同じメッセージをもっと繰り返すことがをしなくてはならない

〇7.8実績評価/報酬
・人事評価のpeer base process
 -360°評価のシステムは今後検討の余地あり。現状はあまりきちんと設計された仕組みにはなっていない
 ⇒人数も増えてきたことで、納得感を高めるために評価の仕組みを見えるかすることが課題

<ホールネス>
〇2.内省できる環境
・内省の仕組み化
ー個人または集団で内省する、または振り返りする機会を設けることはできていない
 ⇒明確な短期の目標設定をしていないがゆえに、定性・定量的な「振り返り」を行うことで、反映し次へつなげることが重要

〇5.オンボーディング
・入社後のカルチャー浸透プロセス
 -今年に入るまで、リファーラル以外であまり新しい人を採用してこなかったため、オンボーディングのプロセスが全く整っていない
 ⇒異質なカルチャーを持つからこそ、新しいメンバーにカルチャーをどのように浸透させていくかが大きな課題

〇7.フィードバック
・フィードバックの仕組み
 -フィードバックとレビュー、評価の違いや位置づけについて十分に整理ができていない
 -直近でP2Pフィードバックという仕組みを新しく導入したが、どのような内容を議論するか、フィードバックメモの書き方などをある程度フォーマット化するべき
 ⇒カルチャーとしてどのような人が評価されるべきかをきちんと整理できていないことが問題

<存在目的>
〇1.戦略
・戦略作成プロセス
 ー<セルフマネジメント>、<ホールネス>を優先してきたこともあり、また先にも書いた通り、あえて戦略を固定してこなかったことから、この点が十分に言語化できているとはいいがたい。
 ⇒大きな勝負をしていくフェーズに移行しつつあり、戦略の言語化による認識の共有が急務

〇3.競合他社
・「競争相手はいない」、「みな味方である」というところまでは正直達観できていない。ここはもう少し成長してからの課題となると思われる
ーーーーー

 以上、「ティール組織の特徴」とそれをベースに「Finatextグループで実際に行っていること」をマッピングし、それぞれについてどのように実践しているか、またどのような点ができていないかを紹介した。
 最後に、こういった組織を運営していくことの難しさをまとめて終わりにしたいと思う。

■諦めていること ―ティール組織の負の側面

・ティール型組織の運営をしていて感じることは、必ずしもこの組織構造は万能ではなく、やはりいくつかの困難が存在している

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1.「規模の経済」が効かない
 -大きなスタッフ機能を抱え、階層を持っている組織は、効率的に組織を大きくすることができ、一定の生産性を高めることができる
 -実際のところ、Finatextグループは100人しかいない組織にも関わらず、8社もの会社が存在しており、それぞれで会計・税務・労務の対応をしなくてはならず、その対応は小さい組織においては負荷となっている

2.人材獲得が難しい
 -他とは大きく異なる組織カルチャーを持つことでそれに理解を得るのに時間がかかり、タイミングを逃してしまうことがある
 -タイトルがない、明確なジョブディスクリプションがないことにより、そういったものにこだわる優秀なエンジニアなどを採用でいないこともある
 -特に「専門家」の獲得が難しい。これまで「専門家」として働いてきた人にとって、専門分野以外もやらなくてはいけないことは、人によっては侮辱だと感じる。その専門が高度であればあるほどこういった傾向は強い。ゆえに高度な専門性をもつ人員を獲得することは他の組織よりも難しさが伴う

3.対外的な「タイトル」の重要性
 -クライアントと接するなかでは、「タイトル」が非常に重要となる局面がある。たとえ社内で意思決定権を与えていたとしても、先方の偉い人との「意思決定する会議」にはタイトルがある人が参加することを先方から求められてしまうことが多々存在する

4.厳格な予算管理はできない
 -メンバーに意思決定と自由を与えているがゆえに、厳密な売上とコストのコントロールが非常に難しくなる。結果的に、どの程度広告に使っていいのか?何人まで採用していいのか?という点が非常に曖昧にせざるを得ないことが多い

5.わかりやすい短期定量目標がない
 -人数が増えてくると、わかりやすい共通の定量目的があった方が、意思を統一し効率的に動けるようになる。
 -ティール型組織においても数値目標も設けることはできるが、最優先にはならないことから、人数が増えていったときに、グループ全体でのメンバー間の意思統一をどのようにアラインしていくのかは非常に難しい課題となってしまう
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■最後に

 「ティール組織」的な組織を運営することは、すごくすごく難しいです。なによりもマネジメントにとっては、いろいろなものを捨てなくてはなりません。意思決定を全て握ることはできないし、計画と進捗確認によるコントロールもできない。簡単に分かったつもりで経営することはもはや不可能になります。
 また、ボーナスやよさそうな職場環境といったものだけで、わかりやすくモチベーションをマネジメントすることもできません。何があってもあきらめずに性善説に立ち続け、人々がもつ本源的な成長欲求を信じて、組織を運営し続けなくてはならない(というすごくきれいごとのようなことを本当にやらなくてはならない)。
 Finatextにジョインしてから2年、事業環境の急激な変化と人々のモチベーションの変容に合わせて、組織も変わらなくてはならないということを日々痛感しています。自分たちも不完全ではありながら、今あるべき新しい組織のカタチを探し続けたいと思います。

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