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「裏腹」か「構造設計」か【20-21天皇杯決勝】

2020.01.01天皇杯 第100回 JFA 全日本サッカー選手権大会 決勝
川崎フロンターレ vs ガンバ大阪
https://www.jfa.jp/match/emperorscup_2020/match_page/m51.html

リーグ戦1位と2位同士の決勝に(今回のレギュレーションを見ればそうなる確率が高い)なったので、今シーズンの総決算としての試合っぽさが強い試合だった。

フロンターレにボールを支配される展開を受けようと、ガンバはFWの宇佐美までが低い位置に引いていた。「背負ったときに入ってくるボールはダミアンに気をつければ、あとはとにかく前を向かせなければいい」と割り切っているようだった。ここまで受けていて、前線のパトリックに出しても潰されてしまう。

結局ガンバは後半の途中で宇佐美を明確に2トップの位置に上げたあとすぐに、少なくなった中盤の数的不利からゴールを決められてしまった。

今年のフロンターレの強さを改めて感じるのは、ボールを持って攻め込んでいるときに、奪われた瞬間のことも、奪い返して攻め込む流れもすべて「誰かがこの位置にいるべきだ」というのが11人で統一されていることだ。

このポジショニングが特に攻守に効いていたのが守田だったと思う。彼を中心とした中盤3枚とDFの被カウンターの数的優位、ガンバがDFラインでボールを奪っても中盤中央はほぼほぼ前を向けていないのは見事だった。

攻め込みで言うと、特に右ウイングの家長と右サイドバックの山根の位置取りはシーズンを通しての評判どおりで、対面の藤春は常にどちらをつかまえるのか基準に悩まされていたし、強みのはずの1vs1の局面でも仕事がほぼできなかったように思う。こういうポジショニングの整理とともに、家長は絶対にボールを奪われないし、田中碧は必ず前を向ける身体の向きなど、ちょっとした角度を変えるだけでパスを受ける選択肢を作れる風間時代からの技術の文化がベースにあるのが本当に強い。

このフロンターレの強さは、「誰かがここを埋める役割を全うしているから」というパッチワークではなくて、「こういう構造でうちのサッカーを捉える」というフレームワークが定まっているからであって、対するガンバはそれに対する一時的な我慢しかできなかったのとは大きな違いではある。

勝ち点の差は大きくあったとはいえ、フロンターレの構造への対策が2位のチームでも「耐える」意外に効果的な手が打てないというのはガンバにとって改めて突きつけられるショックだったかもしれない。結局チャンスを作れたのは、割り切って相手のDFラインの裏に雑に放り込んで押し込んだ最終盤だけだった。

来年のJリーグは、フロンターレに対してフレームワークの変更を突きつけるようなフレームワークを持った強さを持つチームは出てくるんだろうか。

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