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#高校演劇 を初めて観た

舞台ヲタクのじんぺいさん(@Jinpei)に誘われて、初めて高校演劇を観てきた。それも8日で2回、計7公演も!

TBSラジオの『アフター6ジャンクション』でもよく特集が組まれるほど、ほんのりと話題にはなりつつあるらしい高校演劇。だが全然そんなことは知らず。じんぺいさんがそんなにハマるのだから一度は観に行ってみるかと、和光市のイベントに足を運んだついでに足を延ばしてみたのが最初だった。

1月25日、埼玉県立新座柳瀬高校の演劇部室公演。高校の校舎に足を踏み入れたのなんて何年ぶりだっただろう。もうすっかりおじさんなので、不審者扱いされてしまうんだろうな……なんてビクビクしながら部室へ向かう。少し冷える部室で照明が点くと、まずは衣装と照明に圧倒された。話が進んでいくと、舞台装置、そして早口にも関わらずしっかり聞き取れる発声に驚かされる。

この日にやった『[hènri]!』の本も面白い。原作はイギリス発のものを顧問の先生が訳して脚色したらしい。ロンドンの下町訛りが激しい言い回しを江戸弁風の日本語に変えていたのは見事。

しかし、それでいて普通の高校生たちが演じている。普段アイドル現場で女子高生を観る機会はそのへんの30代より多い気はするけれど、目が合ってしまうと演技が少しだけ揺らぐのを感じてしまうくらいの子たちは新鮮でもあった。

話を聴くと、商業演劇風の新座柳瀬高校は特徴的なスタイルなようなので、他の高校も観たくなる。ちょうど翌日のNGT劇場に当選したタイミングで、JR東日本の週末パスなら遠回りしたと思えば旅費も安く済むと、関東大会茅野会場へ行くことを決めた。

高校演劇の地域ブロックにおける関東の定義は広く、一都六県に加えて静岡・山梨・長野・新潟も含まれる。そのため、南北に分かれて大会を開催している。2月1日〜2月2日に行われた茅野大会は、北関東ブロックというわけだ。

朝の9:00には開会式が始まり、9:50から1日6本の上演。2日で12校もの演劇を観ることができる。会場の茅野市民館は、ほどよい1,000人強ほどのホールで、参加高校の生徒や地元の演劇部員たちを中心に最後の夕方の公演まで席が埋まっていた。

観た高校と演目は下記のとおり。

・ 長野県諏訪清陵高校 「怪物」
渡辺和徳/作、諏訪清陵高校演劇部/潤色

・新潟県立長岡高校 「ドレミの歌」
平塚直隆/作、高澤克之/潤色

・埼玉県立川越高校 「いてふノ精蟲」
阿部哲也/作

・群馬県立伊勢崎清明高校「めきしこてつどうのよる」
宮沢賢治「銀河鉄道の夜」より原澤毅一脚色

・新島学園高校 「平成たばこ屋奇譚」
大嶋昭彦/作

・新潟県立新潟工業高校 「女子高生」
久留米大学附設高校演劇部・岡崎賢一郎/作、引場道太と新工放送演劇部/潤色

・栃木県立栃木高校 「やしの実」
角海紀雄/作

ざっくり感想を残しておくと、長岡高校の『ドレミの歌』は場面転換でもテンションの高さを残すことで客席を飽きさせない工夫がとても楽しかったし、新島学園は1人「スタア」がいるとやはり入りやすいなと感じたし、栃木高校は高校男子ならではの肉体性がひしひしと伝わってきた。商業演劇よりもよりダイレクトに高校生の観客たちが反応するので、それも含めて面白かった。

この日観た6作は、じんぺいさんいわく「真面目」な舞台が多かったらしい。

確かに、本も終わってみると「ああ、ジェンダーについて考えさせられるな」とか、「戦争の時代から紡いだ想いをどう今捉えるか」とか、課外学習で感じるような思考にはなる。

高校演劇の大会で面白いのは、こうした感想を共有できる感想戦が公開であることだ。その場で投書として部員に伝えることもできるし、貼られた模造紙に寄せ書きとしてメッセージを書くこともできる。この日でいうと、新潟工業の『女子高生』を演った久留米大学付属高校の“オリメン”が感想を寄せていたようだった。

その模造紙が貼られているロビーの一角に、机と椅子が置かれて何やら話し合いをしているところに出会った。地元の長野の演劇部員が集められた「生徒講評会」を行っていたのだ。

もちろん、事務局の先生方も見守っているのだが、上で書いた何か正解的なものを全員が求めようとしに行くと、「もう少し否定的ながあってもいいよ」などと柔らかく引き出しを開けようとしていく。この日初めて話す生徒が多いようで、朝のうちはまだ固いのだが、夕方の頃には活発な意見交換が行われるようになっていた。

商業演劇になると、感想戦で意見を交わすということはほんどない。だいたいが似た感想を持つとか、演者のヲタクならその支持に回りがちになる。それをぶつけてみてもその場が険悪になるか、Webでは炎上して終わってしまう。感想を広く募って共有するスキームは、教育的な意義も含めている高校演劇ならではで、とても面白かった。ここで交わした意見をヒントに、きっと生徒や先生たちは次年度の作品づくりに取り組んでいくんだと思う。

これはじんぺいさんとも話していた感想なんだけれど、やっぱり「高校生が高校生として高校生を演じる」ことが、この高校演劇の世界の醍醐味だと感じた。

男子校だったらあの文化系男子高校生ならではの行き場のなく溜まってしまった衝動がステージに思い切り出る。女子高生ならではの小さな機微がステージにそのまま出るときもある。

高校演劇の世界は不思議で、地方大会が冬に行われて、全国大会は翌年度の夏に行われる。ということは、3年生は全国大会には出られない。そうした意味でも、今しかない舞台がそこにはあって、その瑞々しい熱量が溢れていた。

……なんだか、AKBグループの研究生公演を観ているような感覚にも近い。

僕が見たいのは、こういう尊いステージなのだろうな。アマチュアであっても、プロであっても。

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