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13話 自分を持っている人

先日、部屋探しに移住先の不動産屋さんへ向かった。いつもは車で訪れるのだが、今回は駅前だったので、電車でのんびり行くことにした。ある程度、事前にネットでいくつか候補を絞っていたが、実際に話してみないとわからないこともある。相談したほう方が早いだろうと思って、いざ突入。

この前も書いたけれど、わたしは緊張するタチである。一人であちこち行っているから、行動的だと勘違いされることもあるが、初めての場所・人を前にすると心は不安定になる。
そんな時は、「大丈夫、いつもなんとかなってきた」と思うようにするか、「主導権は自分」と繰り返し頭の中で唱えるかしている。これでも成長した方だ。なぜなら、2ヶ月前までは何も考えたくなくて、ずっと音楽を聴いて逃避していたから。

今回は、周りの現実にのまれることなく、不動産屋さんのドアを開けることができたわけだが、そこで出会った方がおもしろすぎた。部屋探しうんぬん以上に、その方とのお話が何より今回の学びとなった。

まずはアンケート用紙に自分の情報を書き記し、希望の条件などを簡単に書くシステムになっていて、これによって、自分で話をすることなく進めることができた。わたしにとってはありがたいことだった。

移住先はほぼ決定しており、ネットでもその地域からアパートを選んでいたのだが、その地域のアパートがなんとこの三日間で次々と埋まってしまっていったらしい。三つほど候補があったのだが、その二つはもう既にいっぱいとのこと。(わたしは「へえ、そんなこともあるのね…」と他人行儀で聞いていた)
次の候補地のアパートを探してもらうことにした。そこも自然が豊かな場所なので、いくつか事前に調べておいたのだ。そちらの地域の方が条件もよく、空きのある部屋も多かった。さらに、住まわれている方が退去される時期もぴったりで、ちょうど年内に引っ越しするのにはいいタイミングらしい。

今日、内覧するつもりはなかったのだが、「今からでもいけますよ」と言われ、そのまま流れで、二カ所伺うことになった。

ここから、車内での不動産屋さんとのお話が繰り広げられる。片道20〜30分の間、会話はほぼ途切れることなく、話は次から次へといろいろなところへ飛んでいった。

まだ20代前半だという彼女は、明らかに落ち着きを払っていて、営業という仕事という理由もあるだろうが、きっとそれだけが理由ではない。
あまり詳しい話は言えないのでここでは割愛するが、プライベートの時間の過ごし方・趣味嗜好・気分転換の仕方、どれもこれも、彼女自身が自分の感覚を大事にしていて、自分の世界を確立しているように感じた。自分を持っている。


「自分を持っている人」には特徴がある。

そういう人たちは、まず、他者の目を気にしていない。他人の目、世間の評価を判断基準にしていない。だから、人に怒られようが、非難されようが、自分が決めたからにはやる。自分の「好き」に貪欲。

そして、軽い。考え方が軽い。どうにかなる、なんとかなる、というのが前提。悩みや葛藤もあるようだが、それを重く受け止める前に、どうやったら気分がよくなるか、楽しめるかへと転換している。

楽しんでいる。どうなるか予測できない今を楽しんでいるように見える。未来も大事だが、それ以上に、今。

他人を笑わない。蔑まない。夢を話したら必ずと言っていいほど、応援してくれる。受け入れてくれる。価値観が寛容な気がする。

そして、そういう人たちと接していると、すがすがしい気持ちになる。自分の心も軽くなっている。別に何を励まされたわけでも、アドバイスを受けたわけでもないのに…。

自分を生きる、その姿だけで、自分が進むべき道筋に光があてられた、そんな心持ちになるのだ。年齢も、職業も、そんなものは関係なく、自分を生きる人に強く惹かれてしまうのは、自分もそういう生き方をしたいからなのだろう。

部屋はだいたい決まった。次は、仕事をどうするかだ。

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