21話 意味わからんこと多すぎ問題

その日、わたしは苛立っていた。

引っ越し先の部屋の最終の重要事項確認も、市役所での転居手続きも、思いの外、スムーズに進み、想定していた時間より大幅に短縮して、
「こんなにうまくいくとは…。刺激がなくて逆に驚くわ」と言っていた自分。
しかし、その数時間後には、そんな悠長なことを言っていた自分が恥ずかしいほどに、意味わからん問題が多発して、てんやわんやしていた。

まずは、車庫証明に関することだった。
移住に際し中古車を購入して、あとは車検後、納車を待つのみになっていた。
購入前に調べていた情報の中に、車の登録の手続きのために「住民票と車庫証明」が必要という記載があった。
車庫証明の申請場所と住民票の住所が異なっている場合、登録を申請することができないということだったので、はじめは焦っていた。
なぜなら、今住んでいるところは大阪。しかし引っ越し先は全く別の場所。
車を買おうと思っても買えない状況になる。12月から仕事が始まるので、それまでには納車を行いたかったが、引っ越しした後に申請するのでは間に合いそうになかった。

しかし一見、その話で終わりそうなところが、よくよく調べてみると、ことの顛末が変わってきた。
先ほどの「住民票と車庫証明」の手続きだが、これは普通車での話だったのだ。普通車であれば、車庫証明は必ず必要な手続きとなる。
今回購入するのは軽自動車。軽自動車の場合、車庫証明が必要な地域とそうでない地域があるらしい。そして、調べてみると、転居先の地域は車庫証明が必要ではない地域であり、住民票のみ準備すればいいということがわかった。

一件落着と思いきや、ディーラーに住民票を無事に届けた後で疑問点が浮かび上がる。
そういえば、不動産屋からもらっていた書類の一部に、車庫証明書(名前は違っていた)関係のものが入っていた。不動産屋から説明があったときは、警察に申請する書類なのか?という認識で、あまり疑いもなく、そのまま受け止めていたが、ここにきて、もしかして、不動産屋が車庫証明がいると早とちりして書類を用意しているのではないかと思い始めた。
そして、明細書には「車庫証明書発行代金」も追加されていたことを思い出した。必要のないものに、なぜか代金を支払わなければならない状況になってしまっているのではないか?

すぐに電話で確認すると、やはり勝手に解釈され、車庫証明書を発行していたようで、その発行の費用は返却されるとのことだった。自分が気付かなければ、不要な書類の発行に代金を支払っていたことだろう。

おそらくコミュニケーション不足、ちょっとした説明不足によって、この出来事が引き起こされたと思われるが、問題はまだ終わらなかった。

家に帰ってから一日の運転や手続きで、頭がぼんやりしていた中、一件の電話がかかってきた。転居先のインターネット回線のことで相談をしてくださるということを不動産屋から言われており、その電話だった。

インターネット回線に関しては、優先順位としてはかなり高い。転居してからすぐ使用できるように手はずを整えておきたかった。
だから、内覧時にも、契約書類を書く際にも、インターネット回線のプロバイダを聞いていたのだが、「光回線」という情報しか聞かされていなかった。

10月末の内覧で光回線だということを聞いていたため、11月に入ってからインターネットがルーターの故障で止まった時にも、どうせ必要だろうと思い、新しいルーターを購入していた。

そして、インターネット回線の情報提供の電話で驚くべきことを聞かされた。
「光回線はどこも対応していないですよ?なので、提案できることは、ポケットワイファイやソフトバンクエアになりますね。」とか、そんなことをおっしゃっていたと思う。

わたしは、不動産屋から「光回線」だと聞いていたことや、ルーターの買い替えも光回線に合わせて行ったことなどを話すと、
「もしかすると、マンションのオーナー独自がプロバイダー契約しているのかもしれないので調べてみますね」と答える。

というか、さっきからほとんど意味がわからん状況になっている。一体なんなんだ、本当に。

「調べてみます」ということで、翌日、その返事を聞くために電話でうかがったが、担当者は休みで、来週になるという話だった。提案されたのは、不動産屋を通して、マンションのオーナーに直にインターネットの回線をどこで引っ張っているか聞くということ。

これまでの不手際などもあり、不動産屋ともうあまり関わりたくなかったので、(朝にも別件で電話をしており担当者も休みでもあった)メールにて、今回の内容について伝える。

出来事としてはそれだけだと思われるかもしれないが、それ以外のところで、光回線について調べたり、不要なはずの電話のやりとりに時間を割かれたり、行き場のない感情で揺れ動かされたりしている。

「おかしいものはおかしい」

「嫌なもんは嫌だ」

今回は本当にそう思った。
そう自分の感情を受け止めた時点で、怒りは鎮まり、不動産屋にもインターネットのサポートをした方に対しても、特に怒りをぶつける気も失せたが、信頼関係はもうなかったし、何も望まなくなった。

翌日、不動産屋の担当者から電話がかかってきて、

「マンションとプロバイダーは契約されておらず、役所がその地域のインターネット回線を引いている」という話をされた。
わたしにはどういう仕組みがまったくわからないが、とにかく、どういった手順で行えば、インターネットがつながる状況になるのかを教えてほしかったので、
「手順を教えてほしい」と伝えた。

それは聞いていなかったらしく、また折り返しの電話となる。
結果、役所へ問い合わせをするということで話がまとまった。今日は土曜日。役所は休み。(実際に電話したら、警備員の方が出られ、ていねいに日時を伝えてくれた)
最短でも月曜日の朝の対応になるだろう。

一体なんだっていうんだ。

自分が初めての経験が多かったり、未知な分野であったりすることも原因のひとつではあるが、今回については、「寄り添う気持ち」や「見えないものをどこまで想像できるか」みたいなことが、多くの問題を引き起こしていたと思う。

喜び、怒り、悲しみ。

どの気持ちも大切にする。

おそらく、今回の状況は不動産屋にとってもイレギュラーな対応であったため、仕方ないだろうとか、よくやってくれていると思わないといけないとか、頭ではそう考えたが、やっぱり、「嫌なもんは嫌だ」その自分の素直な気持ちは大切にしてあげられてよかった。

どんな状況であれ、楽しむ。
改め、どんな状況でも、自分の素直な気持ちを大事にする。そんなことを考えるきっかけになった。


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