入川礁

役者です。作品は現在、舞台、映像、ボイスドラマがあります。脚本も書いたりします。正体は…

入川礁

役者です。作品は現在、舞台、映像、ボイスドラマがあります。脚本も書いたりします。正体は独身男性25歳フリーターです。とりあえず文章投げてます。

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小説「自殺相談所レスト」終章

自殺相談所レスト 9 登場人物 嶺井リュウ……撃たれたけど弾は貫通してた。 関モモコ……事件以降、一層修行に励むようになった。 依藤シンショウ……あの後、関に殴られた。今は下僕扱い。 久遠……なんでも、超能力の使い過ぎで肉体を失ったとか。 五月女チヨ……夏休みの宿題は完璧だった。  森元は警察に引き渡された。嶺井、関、五月女、依藤の四人は現場から立ち去ったが、その場にいた警察官たちは誰も彼らのことを『覚えていなかった』。一月後、嶺井たちは、燃えてしまった事務所に代わる新た

    • 小説「自殺相談所レスト」8-7

      自殺相談所レスト 8-7 登場人物 五月女(ソウトメ)チヨ 関(セキ)モモコ 森元(モリモト)カズキ 嶺井(ミネイ)リュウ 依藤(ヨトウ)シンショウ  その時、入り口のドアの向こうから嶺井の声がした。 「関!チヨちゃん!無事か!?」 「嶺井ちゃん!」 「リュウさん!」  関とチヨは思わず歓喜の叫びをあげた。森元がすかさず吠える。 「嶺井リュウ!人質を助けたいんだろ!一人で入って来い!依藤にはドアから離れるように言え!!!」 「わかった!二人には手を出すな!」

      • 小説「自殺相談所レスト」8-6

        自殺相談所レスト 8-6 登場人物 嶺井(ミネイ)リュウ 依藤(ヨトウ)シンショウ 森元(モリモト)カズキ 関(セキ)モモコ 五月女(ソウトメ)チヨ  チヨの叫び声が聞こえた。  続いて、『銃弾が落ちる』音。  目の前には依藤が立っており、呆気に取られている。 「どう、なってんだ……」  嶺井は、画面越しのチヨに向かって言った。 「大丈夫だよ、僕は生きてる。」  森元が叫びだした。 「なんだ?何が起こってる?依藤、まさか外したのか?」  依藤ではなく、嶺井

        • 小説「自殺相談所レスト」8-5

          自殺相談所レスト 8-5 登場人物 嶺井(ミネイ)リュウ 久遠(クオン) 穂村(ホムラ)アカネ  嶺井は全身汗だく、息も絶え絶えで地面に倒れていた。依藤や森元は見当たらない。手足は拘束されておらず、撃たれた傷もない。地面の感触がアスファルトから土に変わっており、今いる場所は廃工場ではないことがわかった。 「ここはどこだ?」  立ち上がり、見渡す。一面の霧。何も見えない。 「まさか……僕は死んだのか?」  嶺井は死後の世界を信じていないが、自分が超自然的な力を持つ以

        小説「自殺相談所レスト」終章

          小説「自殺相談所レスト」8-4

          自殺相談所レスト 8-4 登場人物 嶺井(ミネイ)リュウ 森元(モリモト)カズキ 依藤(ヨトウ)シンショウ 五月女(ソウトメ)チヨ 関(セキ)モモコ 「どういうことです?」  『俺を殺せ』だと?  画面に映る森元は不敵な笑みを浮かべている。 「言葉の通りさ。お前の超能力で、画面越しに俺を殺してみろ。そうすればこの状況は大きく変わる。」  直接触れてない相手に『力』を使えということか? 「もちろん、今までのお前じゃ出来ないのは知ってる。だが、お前の力は鍛えられるら

          小説「自殺相談所レスト」8-4

          小説「自殺相談所レスト」8-3

          自殺相談所レスト 8-3 登場人物 嶺井(ミネイ)リュウ 依藤(ヨトウ)シンショウ 森元(モリモト)カズキ 関(セキ)モモコ 五月女(ソウトメ)チヨ  目が覚めたとき、最初に嶺井の視界に入ったのは依藤のにやついた顔だった。依藤はポケットからスマホを取り出しながら話しかけてきた。 「やっと起きたな、リュウ。今の状況、わかるか?」  嶺井は暗がりの中、体を動かしてみた。椅子に縛られているようだった。手は後ろ手に縛られ、『力』が使えないようにされている。さらに辺りを見渡し、

          小説「自殺相談所レスト」8-3

          小説「自殺相談所レスト」8-2

          自殺相談所レスト 8-2 登場人物 五月女(ソウトメ)チヨ 嶺井(ミネイ)リュウ 森元(モリモト)カズキ 依藤(ヨトウ)シンショウ  その日、チヨは午前十時過ぎに起きた。  いけない……もう夏休み終わるのに……こんな生活……  レストに最後に行ってから一週間が経っていた。あの日以降、チヨは家に引きこもっていた。最後の行き場所を失ったと思ったチヨは人生のすべてに対するモチベーションを失っていた。朝起きるのも、顔を洗うのも、歯を磨くのも、朝食をとるのもおっくうだった。

          小説「自殺相談所レスト」8-2

          小説「自殺相談所レスト」8-1

          自殺相談所レスト 8-1 登場人物 嶺井(ミネイ)リュウ 関(セキ)モモコ 依藤(ヨトウ)シンショウ 久遠(クオン)  嶺井は事務所に戻ると、関に応接室を調べるよう指示した。  富山は事務所に盗聴器を仕掛けていた。回収し損ねたならまだあるはず……普段から戸締りをしない、この応接室が怪しい……  応接室にはほとんど物がない。窓枠、蛍光灯、絵画、ソファ、テーブル、盗聴器が壁に埋め込まれていなければ、候補はかなり絞られる。 「あったよ嶺井ちゃん!」  関はテーブルをひっ

          小説「自殺相談所レスト」8-1

          小説「自殺相談所レスト」7-2

          自殺相談所レスト 7-2 登場人物 嶺井リュウ……超能力者。年々その力は強くなっている。 依藤(ヨトウ)シンショウ……腕利きのスナイパー。実は酒もたばこもそんなにやらない。 久遠(クオン)……嶺井の意識の中に居座る生き神。入浴・排泄中は現れない。 富山(トヤマ)タケル……ホームレス。高校生の娘がいる。 関モモコ……嶺井の助手。一人で留守番できる。  その日も嶺井は事務所を空けていた。いつもと違うのは、その目的が依頼人の『お見送り』遂行ではないということだ。嶺井は駅前のロー

          小説「自殺相談所レスト」7-2

          小説「自殺相談所レスト」7-1

          自殺相談所レスト 7-1 登場人物 関モモコ……嶺井の助手。クッキーを焼ける。 富山タケル……ホームレス。48歳。アルコール依存症。  関モモコはよくレストの留守を任される。嶺井が『お見送り』遂行のために出かけてしまうからだ。だがそもそもレストは予約制のため、嶺井の留守の間に相談者が来ることはまずない。唯一の例外だったチヨもここのところ来ていないようで、関はかなり暇を持て余していた。 「関モモコの、かくし芸大会~!イェーイ!!よとっちゃんの物まねします……『おう、モモコ

          小説「自殺相談所レスト」7-1

          小説「自殺相談所レスト」6-3

          自殺相談所レスト 6-3 登場人物 依藤シンショウ……腕利きのスナイパー。部屋は汚い。 嶺井リュウ……超能力者。意外と頑固。 雨野香織……父親から性的虐待を受ける。死にたい。  そして二日が経った。雨野香織はいまだに、俺の三つある隠れ家のうちの一つに匿われていた。大人たちの意思に反し、あの娘は殺してくれと訴え続けている。嶺井の説得は上手くいっていないみたいだ。 「どうして私を死なせてくれないの?」 「君はまだ生きられるし、やり直せる、幸せになれるんだよ。」  こんな

          小説「自殺相談所レスト」6-3

          小説「自殺相談所レスト」6-2

          自殺相談所レスト 6-2 登場人物 依藤シンショウ……腕利きのスナイパー。機転が利く。 嶺井リュウ……超能力者。依藤に何かを隠している。 雨野舞……嶺井に無理心中を依頼した。計画を手引する。 雨野哲司……舞の夫。DV加害者。建設会社社長。 雨野香織……娘。友達には言えない秘密がある。  年が明け、一月の中旬に計画実行となった。スーツ姿にメガネをかけた嶺井はまさにセールスパーソンといった見た目だ。雨野舞の手引きにより、屋敷内に入った嶺井は、ネット回線の相談と称して亭主の雨野

          小説「自殺相談所レスト」6-2

          小説「自殺相談所レスト」6-1

          自殺相談所レスト 6-1 登場人物 依藤シンショウ……腕利きのスナイパー。面白くない仕事はしたくない。 嶺井リュウ……超能力者。お人好しな性格のようだが…… 雨野舞……依頼人。DV被害者。 雨野哲司……依頼人の夫。DV加害者。 雨野香織……依頼人の一人娘。  俺の名は依藤シンショウ。その道じゃ名の知れたスナイパーだ。その男が訪ねてきたのは、年の暮れの、一際冷え込んだ夜の事だった。おれはちょうど、風呂上がりで全裸だった。 「すみません。」  ああ?ドアの向こうから知らな

          小説「自殺相談所レスト」6-1

          小説「自殺相談所レスト」5

          自殺相談所レスト 5 登場人物 嶺井リュウ……超能力者。依頼人のことは一人ひとり覚えている。 五月女チヨ……JK。校則で禁止なのでバイトしたことはない。 関モモコ……嶺井の助手。普段はあんなだが、仕事はできる。 森元(モリモト)カズキ……依頼人。見かけによらず臆病。  関はチヨがもうレストに来ないことを期待していたが、彼女はすぐに戻ってきた。喧嘩の翌日には、もう面会の予約が入っていたのだ。  そのチヨが来る日、八月も折り返した、一際暑い日だった。 「嶺井ちゃーん、私気

          小説「自殺相談所レスト」5

          小説「自殺相談所レスト」4

          自殺相談所レスト 4 登場人物 久遠……嶺井の意識に住み着いている女性。見た目は二十歳くらい。 嶺井リュウ……保険会社勤務。この時は25歳。 穂村アカネ……若年性のがん。余命わずか。  気づいたとき、久遠は病室にいた。辺りを見渡すと、窓の近くのベッドに老いた男性が寝ている。その向かいのベッドには、ニット帽を被った若い女性がいた。窓の外の木は赤く色づいていた。  おや、何故私はここに?  突然、嶺井が現れた。部屋に入ってきたのではない、映像を切り替えたかのように、老人の

          小説「自殺相談所レスト」4

          小説「自殺相談所レスト」3-2

          自殺相談所レスト 3-2 登場人物 関モモコ……嶺井の助手。空手の才能がある。 依藤シンショウ……殺し屋。モモコに空手を教えている。  五月女チヨが応接室を飛び出した後、関はその場に立ち尽くしていた。感情に任せて怒鳴ったのなんて久しぶりだった。 「よう、モモコ、遊びに来たぜ。」  入り口に依藤が立っていた。いつものようにジーンズとジャケット姿だ。この季節でも暑くないのだろうかと関はよく思う。 「よとっちゃん……ちゃんと働きなよ?」 「開口一番説教かよ!」  関は

          小説「自殺相談所レスト」3-2