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2022年シアトル・マリナーズ全選手感想文【打者編】

2022年のシアトル・マリナーズは21年ぶりにプレーオフ進出を果たし、「北米4大スポーツで最もプレーオフから遠ざかっているチーム」という不名誉な称号をついに捨てることができた。今回はそんなシアトルの歴史に残るであろうチームでプレーした全選手の感想を書いていくだけの記事である。

投手編↓

Curt Casali カート・カサリ

トレンズが控え捕手としてイマイチすぎたので、TDLでSFから加入。移籍後はあまり打てず、結局ローリーの負荷を軽減する存在にはならなかった。プレーオフ進出が決まった日に子供が誕生。めでたい。

J.P. Crawford J.P.クロフォード

シーガーからチームリーダーを引き継いだ守備の名手。昨年オフはショートのFA市場が豊作の年だったが、ディポトさんは早々に「J.P.がうちのショート」と宣言し、その言葉通り開幕直前に5年契約も結んだ。

契約延長がよほど嬉しかったのか、今季のJ.P.は開幕からロケットスタートを決め、4月は21試合で打率.360 OPS1.023の完全にお前誰だ状態。キャリアハイとなった昨年を上回る活躍に早くも期待がかかったが、以降バッティングでインパクトを残すことはほぼなかった。コンディション不良を抱えながらのプレーが続いたせいか、守備面でも精彩を欠いたのが個人的には残念。いくらJ.P.が丈夫だからとはいえショートにまともなバックアップを持たずに戦うのは無謀なので、来年はJ.P.の負荷を減らしつつ、まずは2021年のフォルムに戻りたいところ。

Drew Ellis ドリュー・エリス

内野のデプス要員で、出場は1試合のみ。9/21にタコマでお釣り無しの逆転サヨナラ満塁ホームランを打った印象が強い。

Stuart Fairchild スチュアート・フェアチャイルド

外野のデプス要員として4月途中に加入。3試合の出場後、1ヶ月も経たずにSFへ旅立った。

Mike Ford マイク・フォード

深刻な貧打に悩まされていた5月に藁にもすがる思いでMLBに昇格させる。選球眼は素晴らしく、38打席で8四球も稼いだが、肝心のバッティングはさっぱりだった。

Ty France タイ・フランス

今年もマリナーズを支えた巧打者。今季は開幕から打撃好調で、バットを振れば何でもヒットになるような調子の良さ。リーグ全体で打低の年のはずなのに6/1時点で打率.355はチート。フランスの右打ちに関してはもはや芸術の領域なので、早く美術館にでも飾った方が良い。前半戦の活躍が認められて、トラウトの代替選手として初めてのオールスターにも選出された。

しかし、6月末のOAK戦で打者走者と交錯して肘を負傷すると、この後には手首の怪我にも悩まされ、自慢の打撃が急降下。後半戦ひたすら弱いゴロかゲッツーを量産するマシーンと化してしまったのはもはや悲しみさえ覚えた。シーズン通して3割打てるだけのバットコントロールの持ち主なので、来年は万全な状態で1年間打線を支えてほしい。

Adam Frazier アダム・フレイジャー

昨年NLオールスターに選ばれた名セカンドがマリナーズに加入。まともなセカンドのオプションがいなかったチームにこれがオールスターのセカンドなんだぞ!!!と見せつけてくれるかと思ったが、現実はセカンドゴロを打つか凡フライを上げ続ける日々。どうしてこうなった。

ただ、プレーオフでは本来の打撃を取り戻し、ALWC第2戦では奇跡の7点差大逆転劇を締めくくる決勝タイムリーを放つなど一番大事なタイミングで活躍してくれた。セカンド以外に外野3ポジションや時にはショートにも入ったりとユーティリティ性に富んだ選手だった点も、野手に怪我人が続出した今季のマリナーズにとってはありがたかった。

Sam Haggerty サム・ハガティ

カオスを呼ぶ男。昨年怪我でまともにプレーできず、オフに40人枠からも外されてしまうが、5月にMLB昇格。典型的なユーティリティタイプの見た目の割に意外な打力を今季は見せ、夏前から最強の9番打者としてチームに定着した。単純に足が速いだけでなく、盗塁技術も持ち合わせている点も僅差のゲームを戦いがちなマリナーズに幾度となくインパクトをもたらしてくれた印象。シーズン終盤肩の怪我から打撃の調子を落とし、またPS直前に離脱となったのはチームとしても大きな痛手だった。

Mitch Haniger ミッチ・ハニガー

昨年オフに「マリナーズファンへの手紙」にて「このファッ○ンPS逸記録を止めるぞ」と熱いメッセージを書いてくれたチーム最長在籍野手。昨年の39HRに続く中軸らしいシーズンに期待がかかったが、4月にコロナ感染、さらにはその復帰戦の1打席目で足首を負傷し、まさかの長期離脱。ハニガー不在を何度嘆いたことか。復帰後すぐに中軸らしい活躍を見せてくれたが、終盤はスライダーにクルックルと調子を落としてしまった点は少し残念。オフにFAとなるが、果たしてマリナーズに戻ってくるのか?

Travis Jankowski トラビス・ジャンコウスキー

フリオの故障に伴い、まともなセンターがいなくなったため、8/1に急遽獲得。唯一の打席で三振してまたNYMへ帰っていった。

Jarred Kelenic ジェレッド・ケルニック

マリナーズの未来を担う男。昨年9月、PS争い中のチームを牽引したことで(自分含め)多くの媒体でブレイク候補に名前が挙がるも、2割よりも0割台の方が近い打率でそのありとあらゆる期待を砕く。今季もAAAでは好成績を残し、本人もいつでもMLBに戻れると自信があったのだろうが、チーム方針のせいか9月のロースター拡大時には当初呼ばれず。これに拗ねたケルニック君、SNSでマリナーズのフォローを外し、プロフィールからも"Seattle Mariners"の文字を削除。ただ、フリオの怪我でシーズン最終盤に今度こそ昇格すると、素晴らしい成績を残したわけではないにしろ、前進を感じるプレーぶりではあった。PSの舞台も経験。来年こそ頼むぞ!

Andrew Knapp アンドリュー・ナップ

トレンズがLAAとの乱闘で負傷し、ついに控え捕手がいなくなったため昇格。4打数3三振は2文字違えば好成績。なんでオキーフ(この当時AAAで打撃好調)を上げないんだとマリナーズファンはキレた。

Jake Lamb ジェイク・ラム

地元っ子。TDLでデプスを確保したい思惑もあり、LADから獲得。今季はフォーム改良の結果、打球初速がアップしたと聞いていたが、マリナーズで特にそれが活きることはなかった。慣れない外野を守らせ、!?なプレーをしていた印象の方が強い。(それはチームが悪いんだけども)

Jack Larsen ジャック・ラーセン

7/30のHOU戦でフリオがハーフスイングした際に手にボールが直撃し、IL入り。代わりにケルニックを緊急昇格させるも、タコマからの移動の関係で7/31の試合開始に間に合わず、比較的テキサスに近いアーカンソー(AA)から呼び出した。MLB初打席三振後、ケルニックが球場入りしたので即交代。さすがにチームの扱いが雑すぎるので、これがキャリアで唯一の試合とならないことを祈る。

Kyle Lewis カイル・ルイス

消えた2020年の新人王。昨年膝の半月板損傷でシーズンをほとんど棒に振ってしまったが、今季も復帰わずか4試合で頭部へのデッドボールによる脳震盪に1ヶ月以上悩まされる。膝の状態も万全でなく、マイナー含めほとんど外野で守ることすら叶わなかった。ルイスがかつていたセンターにはフリオが定着し、外野争いも激しいため来年は勝負の年となりそう。

Dylan Moore ディラン・ムーア

何かを起こす男。セカンドのレギュラーとしてプレーした昨年とは違い、今年はユーティリティに徹した1年。相変わらずはちゃめちゃに三振するが、今季は左投手相手に強さを発揮したイメージが強い。思いの外四球(と死球)も選び、自慢のスピードで相手にプレッシャーをかけてくれた点も心強い。ハガティ、フレイジャーと共に状況に応じて色んなポジションを守り、野手に怪我人が相次いだチームを救った彼らに拍手を。

Tom Murphy トム・マーフィー

1年のブランク明けの昨年は攻守に振るわない1年も、今季は開幕から打撃好調。ようやく2019年に我々が夢見た正捕手マーフィーの姿を見せてくれているなと思ったのも束の間、5月に脱臼で離脱し、そのままシーズン終了となってしまった。この間にローリーが台頭。来季は控え捕手兼(ローリーが苦手な)対左要員としての活躍に実はひっそりと期待している。

Brian O'Keefe ブライアン・オキーフ

マイナー通算653試合、29歳にして念願のMLBデビューを勝ち取った苦労人。カサリの妻の出産が近づいたことで昇格となったが、ドンピシャでPSを決めたタイミングで上がってきたのでシャンパンファイトにも参加できた。なんてラッキーな。翌日の試合はみんな二日酔いの中デビューも果たし、初ヒットも記録した。マイナーでの打撃成績は悪くないので、デプス要員として確保しておきたいところ。

Kevin Padlo ケビン・パドロ

実は昨年からマリナーズに在籍していたパワーが自慢の子。フランスが怪我した直後のタイミングでプレーし、「5番パドロとか舐めてんのか」(意訳)と私がツイートした日には決勝タイムリーを打った。ごめん。

Cal Raleigh カル・ローリー

今季の躍進を語る上で外せない1人。元々打撃型のキャッチャーも昨年はMLBのピッチャーに全く歯が立たず。今年も開幕から31打数2安打と状況に大きな変化はない、まだまだ適応には時間がかかりそうかと思いきやマーフィーの離脱を機にステップアップ。少しずつ自分に対する相手の攻め方を理解し始め、パワーが通用するようになったことで低打率ながらもホームランを量産し、27HRは球団のキャッチャーとしてはシーズン最多HR。付いたあだ名は"BIG DUMPER"、チームメイト曰く「ケツがトレイラーのようにデカいから」らしい(Tim Kurkjian談)。21年ぶりのPS進出を決める試合でサヨナラ弾を放ったのも彼だった。9月以降ひたすらクラッチヒットを打っていた印象しかない。そらシーズンの打率.211ながらプレーオフで4番任されますわ。

守備面ではフレーミング、盗塁阻止を中心にこちらも成長が見られ、シーズン終わる頃には攻守に欠かせない選手に。9月以降は親指の靭帯断裂&骨折した状態でプレーし続けた、もはや強すぎるくらいの責任感もrWAR3.8という結果を生んだ一因とも思う。これからもマリナーズの扇の要としてチームを支えてほしい。

Julio Rodriguez フリオ・ロドリゲス

マリナーズに現れた救世主。ゲームチェンジャーとはまさに彼なんだなと。暗黒時代の終焉と同時にフリオが登場したのはそういうことなんだと思う。

プロスペクト時代から球界のスーパースター候補という高い期待を受けて開幕ロースター入りを果たすと、初めの1ヶ月こそはまだ21歳の選手なんだなと思わされる場面も多かったが、MLBの環境に慣れた5月以降は全マリナーズファンが期待していたスター選手そのもの。一見細身に見える体には無限のパワーを秘めており、月までホームランを飛ばせば、そのパワーからは想像できないスピードを駆使して軽やかに塁を盗み、センターへの飛来物は全て彼のグラブの中。そんな才能の塊でありながら全く嫌味な感じはなく、ベンチでは誰よりもチアリーダー。怪我で試合に出られなかった時にベンチで仲間の活躍を全力で喜ぶフリオの姿こそが彼の人柄が良く表れているシーンだと思う。

おまけに早々にマリナーズと最大17年契約の超長期契約を結び、シアトルでキャリアを終える覚悟までも見せてくれた。パーフェクトすぎるフリオに出来ないことはあるのか?いや、ない。マリナーズをワールドチャンピオンに導くのは君だ。

Carlos Santana カルロス・サンタナ

フランス故障の緊急事態に伴い、KCから急遽トレードで獲得。実は2018年オフにも10日間だけ在籍していたので、これが2度目のマリナーズ時代。KC時代よりも打席では積極的な姿勢が伺え、必ずしも成績が優れていたとは言い難いものの、フランス不在の穴を埋めたこと、さらに中盤以降は数々のクラッチヒットを放つことで幾度となくチームを救った。クラブハウスではベテランらしい存在感を見せながら、今季のチームを象徴する勝利時のダンスを提案したのもサンタナ。精神的な面でもチームへの貢献は大きかったとされる。特にオフの間一緒にワークアウトするほど仲が良いフリオにとって、サンタナの存在は心強かったのではないだろうか。

Steven Souza Jr. スティーブン・スーザJr.

貧打をどうにかするため、フォードと一緒に昇格。19打席8三振0四球で貧打に拍車をかけてしまった。マリナーズ退団後に現役引退。

Eugenio Suarez エウヘニオ・スアレス

CINからウィンカーを獲得した際にサラリーダンプの一環でマリナーズへ送られ、ちょうど引退したシーガーの穴を埋めるような形でサードに入る。ここ2年間は打者天国でプレーしながらも全く攻撃面では振るわなかったため、投手天国のシアトルでは少し厳しそう、まあバウンスバックして良くて2017年くらいの活躍を見せてくれたら、程度の期待度だったが…

さすがにジーノを舐めすぎていたようだ。速球への強さを取り戻し、自慢のパワーを再び発揮するようになると、課題のサード守備もペリー・ヒルコーチとの努力が実を結んで改善。サラリーダンプで貰ったはずの選手がrWAR4.0のキャリアイヤーを送るというまさかすぎる結果となった。スアレストレードは大成功!

今季のマリナーズを代表する言葉の一つ"GOOD VIBES ONLY"は彼の会見での発言がきっかけのはず。良きムードメーカーでチームメイトみんなから好かれている印象で、シーガーの後釜としてはこれ以上にない人選だったかもしれない。

Abraham Toro エイブラハム・トロ

今季は様々なポジションで400打席くらい与えたいとディポトさんが開幕前に明言していたとおりチャンスは与えられたが、打率.185と厳しすぎる結果に。AAAでの好成績の割になかなかMLBの壁を破れていない。ただ、試合終盤になるとなぜか異様な勝負強さを発揮するなど、昨年のカオスを経験した選手らしい一面も見せた。来年は全打席9回裏二死満塁と錯覚してもらわねば。

Luis Torrens ルイス・トレンズ

昨年対左用のDHという新しすぎる役割を見つけ、しかも意外と活躍した男。今季はまた本来のキャッチャーに戻ってきた。ただ、キャッチャーだと守備負担が大きすぎるのか、打撃の経験値が完全にリセットされてしまい、フロントにTDLで控えキャッチャー(カサリ)獲得を決断させてしまう。DFAされた時には別れも覚悟したがアウトライトに成功し、シーズン最終盤に再昇格。今度は思いのほか打った。オプションが無いのでノンテンダーの可能性あり。

Taylor Trammell テイラー・トラメル

ややポジションが怪しい元トッププロスペクト。今季は開幕直後にひっそりとタコマで大怪我し長期離脱も、マイナーでのリハビリなしでひっそりとMLB復帰。バーランダーからHRを打つなど特に速球系のボールに昨年よりもアジャストする姿を見せ、成長を感じる場面は多かった。外野5番手として抱えておくには贅沢過ぎる才能だが、やっぱりポジションがないのでそろそろトレードされそう。

Justin Upton ジャスティン・アプトン

貧打を極めていた5月にもう頼れるものは何でも頼れのスタンスでマリナーズが1年契約。ARI時代にマリナーズへのトレードが合意に至るも、本人が拒否権を行使して移籍が破談になった過去もあり、10年以来ぶりにマリナーズ入りが叶った。10年前とは違い、もはや全盛期の力はなく、野球の面ではほとんど貢献できなかったが、クラブハウスでサンタナと共にベテランらしいプレゼンスで借金10に沈んだチームが浮上するきっかけを作る。7/2の試合では起死回生の代打同点HRを放ち、ここからあの14連勝が始まった。

Donovan Walton ドノバン・ウォルトン

内野のデプス要員。選手のやり繰りに苦労していた5月に40人枠からどうしても外さなければならなくなり、SFへトレード。見返りに獲得したプリランダー・ベロアがマイナーで結構良いピッチングを見せているため、チームへの貢献はそれだけでも十分だけどね。

Marcus Wilson マーカス・ウィルソン

元ドラフト2巡目指名も、なかなかMLB昇格までには至らず、マイナー8シーズン目にして夢を叶えた苦労人。ザ・アスリートで、マリナーズ組織内でも数少ないまともにセンターを守れる要員だが、26歳にして未だ粗削り。

Jesse Winker ジェシー・ウィンカー

CINから鳴り物入りで加入したスラッガー。直近数年間のwRC+がMLB Top10の左打者がマリナーズに加入とか期待しかないじゃん?ましてやウィンカークラスがトレード市場に出てくるなんて思わないじゃん?ディポトさん神かよ~~~

と思った日が私にもありました。長打率前年から-.212は聞いてない。おまけにレフト守備が壊滅的に悪化し、DRS-16と衝撃的な数値を叩き出す。マリナーズファンは何度ウィンカーの守備に泣かされたか。ファンと"積極的"に交流するなどキャラクター面は際立っていたので、残る課題は打撃と守備と走塁だけ。来季は怪我を治して万全の状態で復活してくれよな。

Evan White エバン・ホワイト

あなたは今どこで何をしていますか?この空の続く場所にいますか?(今季もMLB復帰叶わず)

Photo: https://flic.kr/p/2nQigBc

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