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マリナーズ、これ以上失望させないで

シアトル・マリナーズファンは直近19年間一度もポストシーズンに進出すらしたことのないチームを応援してきた割と我慢強い人たちですが、今日はチームが弱いに留まらず、公のインタビューにて球団社長がなかなか衝撃的な発言を連発していたことが判明し、ファンの怒りが爆発することとなりました。

現地時間2/5にBellevue Breakfast Rotary ClubのZoomにマリナーズの球団社長であるケビン・マザーが参加し、45分間のスピーチおよび質疑応答を行いました。そのZoom会議の様子が今日になってYouTubeにアップされていることが判明し、球団を代表する人間とは思えない発言を連発していたことが明るみに出ました。

元の動画は炎上騒ぎとなってから削除されましたが、その後別の人間によって再アップされています。

また、マリナーズのファンブログであるLookout Landingでは、この動画の文字起こしをしていますので、こちらも参考にして頂ければと思います。

正直今日ほどマリナーズファンでいて恥ずかしかった日はありません。チームは順調に才能のある若手選手を集め、いよいよ来年2022年にはコンテンダーとして戦えそうな見込みが立ちつつある中でのこの球団社長の発言の数々はチームに水を差すと共に、こういったカルチャーこそがマリナーズの負の部分をよく表しているとも思いました。具体的な選手名が何度も出てきますが、ここで名前の挙がった選手たちがこの球団社長の下でプレーしなければならない点が本当に不憫でなりません。

チームの功労者であるカイル・シーガーは「今年がマリナーズでプレーする最後の年」とした上で、彼の年俸を「払い過ぎ」と表現すれば、トッププロスペクトであるジェレッド・ケレニックやローガン・ギルバートのMLB昇格を遅らせ、FA取得をも遅らせることを堂々と宣言。パドレスから獲得してきた捕手ルイス・トーレンスをなぜか「ルイス・トーレス」と呼び続け、捕手のプロスペクトであるカル・ローリーがシーズン終了後すぐにトレーニングに励んだことを「トーレンスに出場機会を奪われると焦ったから」と決めつけ、極め付けには今季正捕手を務める見込みのトム・マーフィーには一切言及せず、「トーレンスとローリーが今後6年間捕手の座を分け合う」と発言。さらには先日コーチとしてマリナーズに帰ってきた岩隈久志コーチと、チームの未来を担うスーパースター候補であるフリオ・ロドリゲスの英語力にケチを付けるという酷い有様でした。岩隈コーチ関連では「通訳に金銭を支払うことにうんざりしている」というコメントも残しています。概ね選手たちに対して好意的なコメントを残していたため、ジョーク的な側面も含まれていたのかもしれませんが、それでも余計な一言が失礼極まりない内容で、英語力に対する言及については昨今では差別的とも捉えられかねない発言でした。

ロドリゲスは本件が明るみになってから自身のTwitterにて、"I took that personally"と書かれたmemeを投稿。彼は出身がドミニカ共和国で、母国語はスペイン語ですが、番記者からも英語力に関して褒められることが多く、実際インタビューは全て英語で回答していますので、ケチを付けられるレベルにはありません。

球団の内情をペラペラ話すくらいであれば思慮に欠ける人間程度の扱いで済んでいたのかもしれません(それでも球団社長としてはあり得ませんが)。しかしマリナーズという球団は、ここ20年間で最もチームに貢献した選手がイチローとフェリックス・ヘルナンデスという、前者は常に通訳を介してインタビュー対応を行っていた選手、後者はロドリゲスと同様に母国語が英語ではない選手だったのは言うまでもないでしょう。そのようなアメリカ以外の国の選手に支えられ、北米4大スポーツで最も長期間プレーオフから遠ざかるという弱小球団ぷりを見せながらもどうにか球団としての体裁を保ってきた組織を代表する立場の人物が、公の場で英語を母国語としない選手たちの英語力をバカにするのは普段からマザー球団社長がこのような考えを持ちながら生きていることをよく表しているようにも思えました。

私自身アメリカで生活した時期がありますので、第二言語を学ぶ苦労は人並みに理解はしているつもりです。母国語とて幼少期から年数を重ねてようやく操れるようになるわけですから、第二言語の習得には当然ながら時間を要しますし、また母国語として英語を使う人と比べてアクセント等が少々特徴的なものになってしまうのもやむを得ません。言語は綺麗に発音することが目的ではなく、意思疎通を図るための手段なので、それができれば何ら問題ありません。

私は比較的周囲の人間に恵まれた方で、自分のつたない英語でも辛抱強く聞いてくれる方が多かったですが、それでも一部から「お前の英語は変だ」とバカにされることがありました。今思えば相手も子供だったので、彼らが知っている英語とは少し異なる英語を使っていた私は彼らからすれば本当に「変」だったのかもしれません。「変」と指摘することにもそんなに深い意味はなかったのでしょう。それでもあの時感じた悔しさは今でも鮮明に思い出せますし、多分忘れることはないのだと思います。ロドリゲスはあのようなツイートをしていましたが、MLBでスーパースターになることを夢見て必死に英語を習得した彼からすれば今回のマザー球団社長の発言は内心良くは思っていないでしょうし、チームを守るべき立場の人間が、チーム内部を敵に回した本件の代償は決して安くないと私は考えます。

自分は2003年から本格的にマリナーズの試合を見始めて、その間チームには何度も裏切られ、失望させられてきました。相次ぐ補強失敗、若手選手の育成失敗、チームの内紛、挙げ始めたらキリがありません。それでもチームを応援し続けて来られたのはいつかこんなチームでも勝つ日が来ると信じていたからに他なりませんし、実際今のマリナーズは有望な若手選手を数多く集め、チームは間違いなく良い方向に進んでいました。

そんな中でのこのマザー球団社長の発言は、ファンを裏切り、そして失望させ続けた19年間への決定打ともなりかねません。#FireKevinMather のハッシュタグが今日Twitterのトレンドに入ったのはマリナーズファンの怒りの象徴です。チームの弱さは許せても、大好きな選手たちへのこのような発言の数々は許せません。

マリナーズは現地時間2/22の朝に今回の件について声明を出すと目されています。その際にマザー球団社長の処遇も明らかになると思われます。どうかこれ以上、失望させないでほしいと強く願います。

#FireKevinMather

2/23追記
マザー球団社長の辞任が発表されました。

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