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王家の宝石 | ベルギー王室のナイン・プロヴァンス・ティアラ


概要

ベルギー王妃に代々受け継がれているティアラ。
⑴メアンダー模様のベース、⑵11のダイヤモンドパーツ、⑶後から加えられたアーチ型のパーツの3つで構成されている。
各パーツは取り外して、バンドゥやチョーカーのように使用可能。

なお⑵にある11のダイヤモンドは、当時9つあったベルギーの州(※)および王室と植民地コンゴを表していると言われている。
このベルギー領コンゴで採れたダイヤモンドに、アントワープカットを施したダイヤが使われている。

…現在はこの中のブラバン・ワロン州が分かれ、10の州および首都ブリュッセルを合わせたものがベルギーとなる。

ベルギーの地域と州の地図
真ん中の黄色・紫・青部分が元々1つの州だった
user:Kneiphof • CC BY-SA 3.0
Wikimedia Commons


名称

THE NINE PROVINCES TIARA

起源

1926年、スウェーデン王女がベルギー王室に嫁入りする際、ベルギー国民から贈られた

宝飾メーカー

Van Bever

歴史

①アストリッド・ド・スエード

撮影者不詳
public domain / Wikimedia Commons

スウェーデン国王の三男の家庭に生まれました。
1926年、ベルギー王太子と恋愛結婚。
その際ベルギー国民からティアラを贈られました。

結婚式の写真。
Public domain / Picryl

なお初期のティアラは、ベースからダイヤモンドがニョキっと生えたような 奇抜 個性的な作りでした。7年後の1933年 アストリッドはアーチ型の追加パーツを作らせ、よりティアラっぽい形にしました。

パーツが追加される前のティアラ


パーツが追加された後のティアラ

さてこのアストリッド、ご覧の通り、女優顔負けのチャーミングなお顔立ち。
それに加えて気さくな性格だったようで、ベルギー国民から大変な人気でした。
1934年には、先代王の死に伴い王妃となります。

ところが、即位からわずか1年半後の1935年、アストリッドは不幸な死を遂げます。
スイスで夫が運転する車に乗っていた所、夫の不注意で車が横転。アストリッドは車外に投げ出され、帰らぬ人となりました。
29歳の若さでした。


②リリアン・バエル(レティ公爵夫人)

Foscolo • CC BY-SA 4.0
Wikimedia Commons

事故を起こした国王は 怪我を負ったものの生き延び、6年後の1941年に再婚します。
そのお相手が、ロンドン生まれの民間人リリアンでした。

彼女はティアラのパーツをばらして、メアンダー模様のベース部分をバンドゥブレスレットのようにして使用しました。

またトップにある11個のダイヤモンドを、金のカラーネックレスに下げてチョーカーのようにアレンジしたりもしました。
ちなみにこのカラーネックレスは、ヴァンクリーフ&アーペルのものだそうです。

このようにおしゃれ度が高いリリアンでしたが、ベルギー国民からは不人気でした。
人気絶頂だった先代王妃の後妻という立場ですから、当然と言えば当然ですよね。
(現在のイギリス王妃のようなものでしょうか)

更に夫である国王もナチス寄りの行動が見られたりして、2人への風当たりは強くなるばかりでした。
結局夫は1951年に①アストリッドとの息子に国王の座を譲り、生前退位しました。
それに伴い、ティアラも新しい持ち主に受け継がれることになります。


③ ファビオラ・デ・モラ・イ・アラゴン

Anefo • CC0
Wikimedia Commons

スペイン貴族の生まれ。①アストリッドの息子ボードゥアンの妻。
結婚式に際し、亡き義母が使用していたティアラを復活させました。

夫ボードゥアンとの子供には恵まれず、彼の死後は義弟アルベールが国王に即位。
義妹にあたるパオラにティアラを譲りました。


④ パオラ・ルッフォ・ディ・カラブリア

Evers, Joost / Anefo • CC BY-SA 3.0 nl (トリミング)
Wikimedia Commons

イタリア貴族の娘。ベルギー国王の次男に嫁ぐも長男夫妻に子供がいなかった為、のちに夫が国王になりました。

パオラは海外の王室との交流など、重要な場面で度々このティアラを着用しました。

これはベースをチョーカーにアレンジした写真↓



⑤マティルド・デュデケム・ダコ

マルティン・クラフト • CC BY-SA 3.0(トリミング)
Wikimedia Commons

④パオラの息子の妻。現在のベルギー王妃。
昨年夫の即位10周年を迎え、公式ポートレートの中でティアラを着用しました。

ベルギー王室公式X


こちらの方が見やすいです

おわりに

1991年の憲法改正により、性別によらず最長子が王位を継承することが決まったベルギー。
今の所、マティルド王妃の第一子エリザベート王女が将来は女王として即位する見込みです。


22歳の現在はオックスフォード大学リンカーン・カレッジで歴史と政治学を学び中。
ベルギーの公用語であるフランス語、オランダ語のほか、ドイツ語、英語にも優れ、中国語も学習中とのこと。

いつの日か、女王としてティアラを着用した姿を見られる日が楽しみです!


おまけ

マティルド王妃ファンの方が運営するブログ。ナイン・プロヴァンス・ティアラの画像がたくさんありますので、興味がある方はご覧になってみて下さい。

Queen Mathilde
Jewels: The Tiara of the Nine Provinces

参考

見出し画像:
pixabay

・The Court jeweler
THE NINE PROVINCES TIARA

・bijouxroyauxenfoliewordpress.wordpress.com
The Nine Provinces Tiara

・Wikipedia
Astrid de Suède
Leopold III of Belgium
リリアン・バエル
エリザベート・ド・ベルジック

・elle.com
才色兼備さが光る“未来の女王”、ベルギー王室エリザベート王女にフォーカス!

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