百日紅の花

危ないからやめて、と わたしが言うと
できないわけないじゃない と、穏やかな祖母が珍しく
少し怒ったことがあった。

当時80歳を過ぎ、足の悪かった祖母が
小柄な自分よりも背の高い百日紅の木の枝の先に咲いている
花を摘もうと、大きな石によじ登り手を伸ばしていたから。

認知症が進むと 若い頃に遡っていくと聞いていたけど、
ほんとうにそのように感じてから、もう、10年近く経つ。

あの時、祖母が手を伸ばしていた百日紅の
金平糖のように かわいらしいピンク色と同じ色の紅をさして、
今年の冬、旅立っていった。

学校から帰ると おかえり、と いつも ストーブの上で
お餅やお芋を焼いてくれた 優しい笑顔や声を思い出した。
家には明かりがつき、あたたまった家で 空腹もなく、さみしくなかった。
母に怒られたときも、まぁまぁ…と、優しくなぐさめてくれた。

自分が今 子育てをしていて余計に感じるけれど、
親子の間に入って その場をやわらかくなだめてくれる
やわらかな クッションのような祖母のような存在がいてくれて
どれだけ自分は幸せだったのか 考える。

高校生になって、祖母はいつも同じお菓子を買ってきて、
理由もなく やってきては それをくれた。
前にもらったのがまだあるからいい、と言っても、くれた。

学校のことや、携帯に夢中だった私には
なんでそんなことするのか わからなった。
結局 いつも食べなかった。

いらないって思っていたあのお菓子が 今は恋しく感じる。
理由もなくやってきた理由が、今なら分かるのに。

自分勝手で恩知らずな私に 見返りも求めず
いつも精一杯応援してくれた祖母。

苦労することが多かったのに、
ニコニコと いつも人の心配やお世話ばかりしていた。


今年も、もうすぐ百日紅の花が咲く。

今 現実に 私が手を伸ばしている
とても届くのか わからないこと。

おばあちゃんなら きっと
できないわけないじゃない、って
言ってくれると思う。 




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1988.1月生まれ/note初心者/長野市/デザイナー・OLを経て 姉妹(3歳 1歳) の子育て/時々ガットギターとうた/お寺生まれお寺育ち/イベントのことなど。

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jun.sanada

1988.1 生まれ/長野/ガットギターとうた/お寺生まれお寺育ち/デザイナー・OLを経て 姉妹(3歳 1歳) の子育て中/ 色々な記録用のnote/instagram @118_jun
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