スティングと一緒にニューヨークを練り歩きたい
ザ・ポリスというバンドが好きです。1978年にデビューしたイギリスのスリーピースバンドです。メンバーは
スティング(ボーカル、ベース、メインソングライター)
アンディ・サマーズ(ギター)
スチュワート・コープランド(ドラム)
の3人。世の流れに乗ってパンクバンドとして世の中に出たのですが、彼らは明らかに他のパンクバンドと違っていた。パンクにある初期衝動が薄めで、既に玄人感がある。それに年齢も他のパンクバンドより高め。アンディ・サマーズに至ってはポール・マッカートニーやブライアン・ウィルソンと同い年である。ポリスがどんなバンドかもっと詳しく知りたい方は是非ともGoogleでザ・ポリスと検索してみてください。
僕がポリスを好きになったのは、スピッツのアルバム「ハヤブサ」がキッカケ。ハヤブサ発売時のスピッツのインタビューでポリスに言及しているものが沢山あって、「8823はポリスの影響が強い」と書いてあるのを読んで「聴いてみよう!」となったのである。「見つめていたい」は当時中学生の僕でも聴いたことがあったし「確かに8823はこの曲に影響を受けている!」という、「ミュージシャンのルーツを知る」という体験を初めて味わったこともあり、ポリスの事が好きになった。
前置きが長くなりましたが‥実は僕はそんな大好きなポリスの事が大嫌いになってしまった時期があったのです。
大学に入学した頃でしょうか、僕あるものと出会います。それは「ロンドンパンク」。セックス・ピストルズ、クラッシュ、ダムド、ストラングラーズ、ジャム‥‥彼らのファーストアルバムに出会い、
「初期衝動!パンクロック!体制と権威に中指を立てろ!てりやきマックバーガー!」
このようにパンク精神を完全に間違った方向に尖らせてしまった。それからの僕はと言えば、パンクを勘違いした痛い男になってしまった。以下勘違いパンク行動の一覧
大学は体制側だとか言って講義にあまり行かない(ただし進級に関わる必修科目にはちゃんと行っていた)、流行りの音楽をやたらと叩く、パンクとは〜と人にやたらと説く、ベーコンレタスバーガーのレタス抜きを注文する、胃袋がぶっ壊れるまで飲む(ただし未成年だったので飲んでいたのはアルコールではなく豚汁)
などなど、ただの迷惑不健康野郎だった。痛い。あの頃の自分を直視できるようになるまでこんなに時間がかかりました!!
で、ここでポリスが嫌いになる。僕はポリスに「パンクを利用して出てきたフェイク野郎」という烙印を押し、嫌悪し始めた。こいつらにはパンクスピリットがない、初期衝動がない、スティングの本名がゴードン・マシュー・トーマス・サムナーなのが気に食わない、大体ポリスってバンド名はなんだ、Can't Stand Losing YouのPVでかけてるメガネ全然似合ってねえよ、見つめていたいはただのストーカーソングじゃねえかなどのあらゆる罵詈雑言をポリスにぶつけていた。
で、実はこの痛かったパンク野郎期間というのは2〜3週間くらいである。バイトの給料が入って、クラッシュのロンドン・コーリングとジャムのオール・モッド・コンズ(どちらもそのバンドの3rdアルバム)を聴いて、ハッとなったのだ。
「節子、これパンクやない!!」
僕がパンクと信じて疑わなかったクラッシュとジャム。その2組がパンクの一言では括れない音楽をやっていたことが発覚する(そもそもジャムは元からパンクよりビートバンドだし、クラッシュはファーストアルバムで既にレゲエやってるじゃんみたいなこと言わないの)
その時にあっさりと自分の中の狭いパンク観が崩壊した。というわけで、ポリスに対する強烈な悪感情も直ぐに消える。しかし何となくポリスを聴く気にならず、結局大学4年間はポリスを聴かずに過ごした。不意に「見つめていたい」がテレビで流れてきたりすると、何だかやりきれない気持ちになったりしていたので、悪感情は消えてもまだどこかにわだかまりがあったのかもしれない。愛情が裏返しになった憎悪とは‥救いようがない‥。あれこれ音楽の話だよな‥?(これがあの有名な「僕とポリスの失われた4年間」である)
正直なところ、またポリスを聴くようになったキッカケは特にない。気付いたら聴いていた。年齢を重ねると嫌いな食べ物が減るとよく言われるけど、もしかしたら音楽にも同じことが言えるのかもしれない(ちなみに僕は年齢を重ねるにつれて食べれないものが増えていっているぞ!やったぜ!)
そしていつの間にかポリスにのめり込んでいた。中学の頃に聴いたときよりポリスに対する熱が強かった。その熱は今でも続いており、2年くらい前からスティングのソロアルバムも聴くようになった。あの嫌っていた1ヶ月弱とポリスを意図的に避けていた期間が嘘のようなハマりっぷり。ポリスとの失われた時間を取り戻そうとしているのかもしれない。
スティングのソロナンバーでの代表曲といえば、やはりこれでしょう。
ニューヨークに住む英国人のことを歌っているが、実はこれはスティング自身のことではなくクエンティン・クリスプという英国の作家のことを歌っている(クエンティンはPVに出ているらしい。どの人だろう?)
でもやっぱりニューヨークを皮肉りながら「自分はニューヨークに住む英国人だ」と歌う主人公とスティングを重ねちゃうよね。
I'm an alien I'm a legal alien
I'm an Englishman in New York
よそ者の自分をエイリアンと言う。そんな風に歌うスティングの横に立って「アタイもここではエイリアンさ」などと語り合いながらニューヨークを一緒に練り歩きたい。
まあ僕が横に来たら、スティングには「僕のそばに立たないでくれ」と拒絶されるだろうけどね!
〜fin〜
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?