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ラストバトル下関CS決勝戦

壇ノ浦の戦いや巌流島の戦い、歴史的決戦が行われた場所として有名なここ下関。
そして今日行われた決戦は実に歴史的な決戦と言えよう。
1つのCSの歴史に幕が降りる。
主催はギター侍として一時名を馳せた波田陽区の親族。
筆者やこの辺りのカードゲーマーはよくご懇意にさせて頂いているカードボックス下関店の偉い人だ。
そしてその主催が開く最後のCSとして、アドバンスフォーマットのラストバトル下関CSは開催された。
のべ117名の参加者。
この辺りではかなりの人数だ。

とは言えこれは誰かが語らなければ残らない歴史。
どのような歴史とて誰かが語らなければ、記憶に残らなければ、例え壇ノ浦の戦いや巌流島の闘いとてその例外では無い。
だからこそ私はここに残すのだ。

そしてそんな1つの歴史の終わりの決戦の頂きに現れたプレイヤーは

“予選4位通過”
京都からアドバンスが好き過ぎて倍率の高い山口まで闘いに来た FU555 選手。
赤黒バイクの名手として名を馳せているプレイヤーだ。
赤黒バイクを極めんとする者達なら一度は聞いた事がある名だろう。

そしてその相手になるのは
“予選6位通過”
佐賀県からの刺客 ダイ/LTS 選手。
アドバンスはほとんど初心者と言う事だが、そのプレイは非常に洗練されている印象。
せっかく作ったマジックをアドバンスでも試したいとの事で下関まで闘う場を求めて来たのだそうだ。

赤黒バイクvs赤青カクメイジン。
決勝という事もあり非常に注目のカードだ。

順位先攻により FU555 からゲームはスタートする。

だが先に動いたのは ダイ/LTS 
《AQ vibrato》を召喚し順調な立ち上がりだ。
真っ当に考えるなら後手のvibratoスタートはこの上ない恵まれたスタートだと言えるだろう。

対する FU555 、動き出したのは3ターン目
《影速 ザ・トリッパー》を召喚しターンエンド。
先手だから許される3ターンスタートだがトリッパースタートとなると話は別だ。
“相手はカードをマナゾーンに置く時、タップして置く”
この能力が与える影響は早期ターンであれば実質EXターンに匹敵する。
事実後手3ターン目の ダイ/LTS は手札を大きく整える《氷柱と炎弧の決断》や殿堂カード《ストリーミング・シェイパー》を実質2マナしかない事により咎められてしまっていた。
少し考えた後《イシカワ・ハンドシーカー/♪聞くだけで 才能バレる このチューン》を召喚しターンエンド。

FU555 やや安堵の表情。
赤青マジックはマナゾーンにカードが3枚あれば簡単に敗北をプレゼントしてくるデッキだ。
動きを1つ咎めたからと決して油断出来るような相手ではない。
《ドキンダムの禁炎霊》をプレイし、封印と山札から併せて3枚が墓地に落ちたがソウルからプレイ出来るカードは無くターンが終わる。
ここで《絶速 ザ・ヒート》が絡まなかったのはやや痛手だろうか。

そしてトリッパーの拘束が実質解けた ダイ/LTS の4ターン目。
《ストリーミング・シェイパー》をプレイしトップデック4枚をオープン。
《氷柱と炎弧の決断》
《歌舞音愛 ヒメカット/♪蛙の子 遭えるの何処? 好きと謂ひて》
《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》
《瞬閃と疾駆と双撃の決断》
手札に加わるのは2枚だが《氷柱と炎弧の決断》が手札に加わるのなら悪くは無いだろう。
だがまだ準備は整っていない様子。
さらに盤石な手を固める為ターンを終了。

アグロ対アグロとは思えないほど慎重なターンが続いていく。
さながら居合の達人同士の闘いの様だ。

が、先にビックアクションに出たのは FU555 。
《アーテル・ゴルギーニ》を召喚し墓地を増やすモードと蘇生モードを解決し《絶速 ザ・ヒート》が墓地から現れる。
さらにヒートの能力により《覇帝なき侵略 レッドゾーンF》を手札へ加えそのまま ダイ/LTS への侵攻がついに始まりを告げる。
アーテルで蘇生したヒートのアタック時に侵略宣言。
宣言は回収したレッドゾーンFのみ。
ダイ/LTSはそのまま攻撃をブロックせず、レッドゾーンFは2点を刻んだ。

……少し奇妙だ。
ここで FU555 は違和感を感じ考える。
恐らくは ダイ/LTS の思惑と意図を計っているのだろう。
筆者視点だがここのイシカワはブロックした方がメリットが大きく見える。
いくら公開領域に《禁断の轟速 ブラックゾーン》が無いとは言え、ヒートのアタックに対してレッドゾーンFのみの宣言。
これが意味する意図は“持っているがあえて使わなかった”事を安易に想起させる。
その上で先2点のGSをケア出来る強い動き。
FU555 が2点で何も踏まなかった場合、ここにブラックゾーンが絡んだら ダイ/LTS はシールドと言う究極的な運の勝負を強いられる事になる。
まだトリッパーも控えているのでリーサルも有りうるのだ。
確かにマジックならシールドにも期待は出来るだろう。
氷柱と炎弧の決断はシールドトリガーを得る条件は満たしているし、《芸魔影狐カラクリバーシ》のGSだって有り得る。
だがもし“無かった”ら……
最悪を想定した場合、ヒメカットをボードに残せるならブロックするのは定石たりえるのだ。

だが逆視点で言うと、ブラックゾーンが無い事を見抜きその先を読んでのブロック宣言無しなら ダイ/LTS にとって手札が無償で2枚増え尚且つボードも残せると言うかなり有利になる動きとも見えるだろう。

イシカワハンドシーカーでブロック“しなかった”のか“出来なかった”のか……

考えられる数多ある可能性を考慮し、FU555 が長考の末導き出した宣言は「ターンエンド」。

両プレイヤーともに凄まじい胆力であり、筆者には計り知れない読み合いが繰り広げられている様に伺える。


そして ダイ/LTS の5ターン目。
歌舞音愛ヒメカットを2回召喚し ヒート、トリッパー、アーテルを手札へ戻し、先程生き延びたイシカワハンドシーカーでプレイヤーへの攻撃。
当然カラクリバーシに革命チェンジをしイシカワの持つメガラストバーストを解決。
カラクリバーシで唱えた呪文も当然《瞬閃と疾駆と双撃の決断》。
選ばれるモードはアンタップを付与するモードと3以下のクリーチャーを出すモード。
マジックと対面した者なら分かるだろうがこの宣言は実質ゲームエンドと変わらない。
単騎が出るか妖精が出るか……
何ならこの1点は手札を増やすカードでも問題無い。
そして出てきたのはAQ vibrato、手札を1枚増やした。
この1点で何も踏まなければ、この後のことは何も考えたくない程の猛攻が待っているだろう。
だが FU555 の刻まれたシールドからは何も無い。


ダイ/LTSは続けざまに宣言した。

「ターンエンド……」


……

………………


繋がらなかったのだ……
先のイシカワもブロックしなかったのではなく出来なかったのだ。
シールドと言う期待値にトップドローを含めたった1枚の《芸魔王将 カクメイジン》を掴められなかったのだ……
全てを賭したイシカワのブロック宣言無し。
相手との熾烈な読み合いに打ち勝ち勝つ為の最も期待出来る動きを通した。
だがその思惑は水泡に帰したのだ。

彼は1ターン目にチャージしたカクメイジンがここまで裏目になるとは夢にも思わなかっただろう。

だがまだ負けては無い。
そう思い藁にも縋る思いでターンを終えた。


しかし勝負とは残酷なものだ。
祈りながら待つ ダイ/LTS に、神は無情にも敗北を言い渡すのだった……
さながら《ストリーミング・シェイパー》に刻まれたフレーバーテキストのように……


ラストバトル下関CS WINNER FU555



最後に少し構築について聞いてみた。
変わりどころのカードで言えばやはり《死神XENARCH・ハンド》と《一王二命三眼槍》だろうか。


本人曰く、XENARCH・ハンドは《スパーク・スパーク》

との枠で悩んでいたそうだ。
前者の利点は
・黒単色でありカラーのノイズにならない事
・トリガープラスで発動せずとも最低でも1面は砕く事
・トリガープラスで発動した場合、マジックやモルトNEXT、4Cドラグナーや天門と言ったアドバンス代表とも取れる踏み倒しデッキのほぼ全対面で得られるアドバンテージが強い事
・初見殺しとしては相手に基本的に対処不可能だと思わせ、ターンを稼ぐ事が可能になる時が多い事

大きな強みはこの4点であると言う。

後者は既に試しており強みも弱みもしっかり理解した上で今回は採用を見送り。

今回想定していたゲーム(マジック最大のその他モルトNEXT等)に対してはXENARCH・ハンドの方が最適解であるとして採用したそうだ。
実際予選でもモルトNEXTのギャイア含む踏み倒し多面展開にXENARCH・ハンドとクロックのダブルトリガーで乗り越えたり、マジック対面でもしっかりトリガープラスで発動し危機的状況を打開出来たそうだ。
その日その日におけるメタゲームの理解とデッキ構築を持ってきた FU555 は勝って然りと言っても過言では無いだろう。
最強のバイク使いとしてさらに1歩先へと進んだのだった。

ご参加ありがとうございました。


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