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言葉の力をあなたは十分に使っていますか?

私は漫画が好きだ。
結構いろんな漫画を読んでいるが,特に好きなのが推理漫画と医療漫画。
今回は医療漫画を題材にして言葉の大切さについて伝えたい。

私がよく読むのが「ゴッドハンド輝」という医療漫画。内容は新人医師の成長ストーリーだ。

『人と接する上で大切なことは何か』『仕事とは何か』というテーマについて,この漫画は気づきを与えてくれる。

◇◇◇

「ゴッドハンド輝」の第19話「健康な患者!?」は,仕事をする上でも,プライベートで人と接する上でも参考になるストーリーだ。

ある患者が主人公が勤務する安田記念病院を受診する。その患者は胃のむかつきに相当不安になっているが,勤務医は「軽い胃炎だ,問題ない」と説明する。しかし,患者の不安は一向に収まらない。患者は自らの症状を癌ではないかと思い不安になったのだ。

この患者に対して,院長はじっくりと話を聞き,次のように言うのだ。

あんた・・・この病院に来て良かったよ…この薬を飲めば,必ず良くなる!!村瀬さん,今まで辛かったな。良く頑張った…もう大丈夫だからな

このように微笑みながら言うのだ。
院長が渡した薬はただの胃炎の薬だ。だが,患者はとても安心した。

院長は勤務医に次のように言う。

『テル こんな格言を知ってるか
医者に三器あり…メスと薬草―そして言葉」』

『病気だったんだよ…医者不信病っていう名の…な
村瀬さんは基本的に医者を信じてなかったんだ
だからどんなに「ガンじゃない」って言われても信じることができなかった
けど初めて不安や辛さをわかってくれる医者に出会えて,オレの「治る」って言葉を信じる気になったのさ

医療の現場において,もちろん正確な診断や治療の選択,その技術が重要だ。しかし,あなたも病院に行ったときに,医師や医療従事者から笑顔で『もう大丈夫ですよ』と言われたときにすごく安心したという経験はないだろうか。逆に,優秀な病院とされていても,無愛想に対応された場合に不安を抱いたことはないだろうか。

医者に三器あり。
まさに,メスと薬草のみならず,「言葉」が患者を癒すのであろうと思う。

◇◇◇

「言葉」が大切になるのは,もちろん医師,看護師その他の医療従事者に限られない。
私の仕事である弁護士だってそうだ。

依頼者は相談時には大変な不安を抱えているものであり,「言葉」を適切に使うことによって相談者の心は多少なりとも楽になるのだ。
そして,私自身,依頼者から「安心しました」という言葉をもらうと安心するし,心底嬉しいと思う。

さしずめ,「弁護士に三器あり。法と証拠と言葉」といったところだろうか。

医療や法律事務職のように「相談」が持ちかけられることが少ない職種についてはどうだろうか。これらの職種についても「言葉」の使い方によって,顧客の心が晴れたり,顧客を嬉しくするというケースは多いように思う。

私は特定の美容院で散髪をしている。
いつも,マオちゃんという女性美容師に担当してもらっている。もうかれこれ5年くらいの付き合いになるだろうか。

あるとき,少し風邪気味だったので美容室の予約をキャンセルしたことがあった。キャンセルの理由はマオちゃんとは別の担当者に伝えていた。
その後,しばらくして,あらためて予約をとり,髪を切ってもらった。

途中で,トイレに行くときがあった。別に体調が悪かったわけではないのだが,マオちゃんは前回のキャンセルを聞いていて『前回お風邪だと聞いたので心配になりました。大丈夫ですか。』と声をかけてくれた。

まさか風邪気味であったことを覚えているとも思わなかったし,そのような声をかけられたことに軽く驚きつつも,嬉しく感じた。

マオちゃんの仕事は「言葉」をかけることではない。髪を切ることだ。
それでも彼女はこのような言葉がけを多くのお客さんにしているのだろう。髪のケアのついでに,少しの言葉がけによって心もケアしているのだ。

◇◇◇

言葉の持つ癒しの効果が意味を持つのは,このようにお客さんと直接接する形態の仕事に限られるかと言えば,必ずしもそうではないと思う。

一般的な会社においても,言葉で相手を少し癒すという振る舞いがあればそれで人間関係が円滑に回ることも少なくないように思う。

例えば,弁護士が事務員に対して「ありがとう」と伝える。「今日は大変そうですね」と言葉をかける。手早い仕事に対して「こんなに早くできるとは思いませんでした。いつもありがとうございます」と伝える。こういった一言一言で,声をかけられた人の気の持ちようは随分と変わってくる。

さらに言えば,もちろん言葉の癒しは仕事外の場面でも大きな力を発揮する。夫婦関係でも,恋愛関係でも,友人関係でもそうだ。

あらゆるところで,この関係の「三器」はなんだろうと考えてみると思考は深まる。そのうちの1つはきっと言葉であるはずだ。

人間はどちらかと言えば,自分のことを聞いてほしい。あるいは,自分の言いたいことを言いたい。そういう傾向があることは否定しがたいように思う。

だから,『今そんなことを言ってほしいんじゃないのに』とか『今はちょっと話を聞いてほしかったな』とか『そんな言い方ないのに』といった不満が世の中で散見されるのだろう。

しかしながら,よりよく生きるという観点からは,自分の言いたいことを(封印するのではなくいったん棚上げにして)『この人は今いったい何を言ってほしいのかな』と想像を巡らすことが重要な場面も多いはずだ。

相手に対する想像力を巡らすことで,言葉は立派な「三器」の一つになる。

私は,三器としての言葉をしっかりと使いこなせる人間になりたいと願っている。もうすぐやってくる七夕。心に抱く願いはそういうものでもいいかもしれない。

星に願いを。


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