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コミュニケーションをうまく図るための大切な「2軸」の発想

10年以上弁護士として様々な人と話をしてきました。
先月からはオンラインサロンに加入して,オンラインで様々な人と接してきました。
そういう人との関わり合いで感じたことがあります。
それは,良好なコミュニケーションでは2つの軸が意識される必要があるということです。

2つの軸の1つはシステム(論理)軸
物事を論理的に把握し,分析し,説明する軸です。
もう一つは共感(感情)軸
物事(人の感情)を捉え,人の感情にアプローチする軸です。

この軸を必要に応じて上手に使い分けたり併用する人のことを,「コミュニケーションが得意な人」というのだと思います。

◇◇◇

今でこそそう思ってはいるものの,学生時代の私は論理的なコミュニケーション(システム軸でのコミュニケーション)に関心がありました。

論理は正しい結論を導くもので,感情を排して論理的に説得するのが正しいコミュニケーションのあり方だという危ういことを考えていたのです。
しかし,とんでもない誤解でした。

例えば,私は学生時代にディベートというものを経験していました。

ディベートとは,ある特定のテーマ(命題)についてランダムに,その命題を肯定する側と否定する側にわかれて第三者を説得する「言葉のスポーツ」です。
例えば,「日本は死刑制度を廃止すべきである。是か非か」というテーマや「日本は裁判員裁判をやめるべきである。是か非か」というテーマです。

このディベートでは,ある程度の部分までは論理的な説明をすることが可能です。死刑制度にはどういう効果があるとか,死刑制度にはどういう弊害があるとか,そういったものをデータに基づいて論理的に説明する。

でも,ふとした瞬間に気づきました。人間が意思決定をするときに最後にモノを言うのは論理的に説明できる部分を超えたところにある感情的なものではないかと。死刑制度の是非について考えてみてください。理由を掘り下げていったときに最後に自分の中に残るものは「感情」ではないですか。

場面は変わって,コールセンターでインターネットサービスを売り込むバイトをしていたときのこと。

お客さんに論理的にサービスの良さを説明しても全く売れないのです。
でも,あるとき営業心理学についての本を読み,やはり「感情」にアプローチすることの大切さが書かれていました。
相手にサービスの良さを具体的にイメージさせ,嬉しい感情を抱いてもらう。そういうアプローチをしてから,面白いほどに話を聞いてくれる人が増え,商品も飛ぶように売れていきました。

◇◇◇

弁護士として10年以上経験してきてわかったことがあります。
確かに,論理的に正しく知識を説明し解決策を考えることは重要です。それは,弁護士のみならず他の士業や医療専門職はもちろん,人と接するあらゆる仕事人に求められる大切なタスクです。システム(論理)軸のコミュニケーションは大前提として仕事人に求められていることだといえるでしょう。

でも,あるときから,それでいいのかと感じるようになりました。

大変な思いをしているお客さんに対して,大変な思いをしていることを心から理解していることを言葉で示す。お客さんが何かの作業をしてくれたら,その作業の成果を褒める。たった一言でもいいんです。
「大変でしたね」
「これ,すごくいいですね」
そういった感情を大切にする言葉の積み重ねは何を作るのか。それは,信頼関係に他なりません。

信頼関係が深まれば,論理的な部分のコミュニケーションもうまくいくようになります。
論理的なアプローチには正確な情報が必要ですが,依頼者の方は信頼してくれなければ正確な情報を出してくれないことがあります。感情の部分もケアし,信頼関係を形成して,論理的に正しく分析して解決策を見出す。
システム(論理)も感情という2つの軸を使いこなしてこそプロと呼べるのだと思っています。

◇◇◇

オンラインサロンのコミュニケーションを眺めていても,やはりこの「2つの軸」の発想は大切だなと常々感じます。

ただでさえ,顔の見えにくい「オンライン」の関係は誤解が生まれがちです。
そういう関係からスタートするからこそ,誤解が生じてもうまく修正していけるような信頼関係をどう作っていくかが大切です。

システム(論理)軸だけで考えれば単純に用件を伝えればいい。
効率だけを考えれば,それでいいと思います。
でも,真実を言ってしまえば,システム(論理)軸のみでのコミュニケーションについて「失礼だな」「ぶっきらぼうだな」と感じてしまう人は多いのではないでしょうか。

共感的な言葉が多すぎると非効率ですし読み手にかえって負担をかけますが,せめて「おつかれさまです」「ありがとうございます」「嬉しいです」といった短い言葉でもいいから相手の感情にいかにアプローチしていくかこそ,AI時代における人間にこれから問われてくる課題なのだと思います。



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