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民法改正「共有」のお話(14)最終回

 今回は・・・「改正民法」(2023年4月1日施行予定)によって、共有を解消するルールがどのように規定されるのか?
 行方不明の相続人が居る場合は?相続と共有が絡む場合は??等々について、見ていきたいと思います。

本シリーズのブログはこちら・・・
   民法改正「共有」のお話(1)
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民法改正「共有」のお話(2)
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民法改正「共有」のお話(3)
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民法改正「共有」のお話(4)
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民法改正「共有」のお話(5)
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民法改正「共有」のお話(6)
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民法改正「共有」のお話(7)
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民法改正「共有」のお話(8)
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民法改正「共有」のお話(9)
   民法改正「共有」のお話(10)
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   民法改正「共有」のお話(12)
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民法改正「共有」のお話(13)

改正民法で創設されたルール解説

 今回も・・・(前回と同じ)以下の事例を使って、お話をしていきたいと思います。

① とある別荘を(友人同士の)AさんとBさんが共有している
② AさんとBさんの共有持ち分は50:50
③ そんな中、Bさんが死亡した
④ Bさんの法定相続人はCさんとDさんの二人
⑤ Cさんは不要な(お荷物の)別荘を早く処分したい
⑥ でもDさんは行方不明・・・
⑦ Aさんは(別荘の)Bさんの共有持ち分を買い取りたい

 上記のケースは・・・「遺産共有」と「通常共有」が複層的に合わさっている状態と言えます。

 現行民法では、「遺産分割」と「共有物分割」という異なる手続を並行して・・・完璧に完成させなければ、完全な共有関係の解消(=Aさんが別荘の所有権を全て持つ状態)には至りません。

 でも、その話の前に「遺産共有」と「通常共有」を説明します。

「遺産共有」とは?

 (法定)相続人らが遺産分割協議が成立(確定)していない時にないまま、それらの遺産が法定相続人間で共有となっている状態をいいます。

 例えば、相続財産のうちに複数の不動産がある場合・・・その全ての相続不動産は、相続人が各自の相続持分の割合で共有している、という状態となります。

 この状態では、各相続人が単独で実施できる行為は限定的です。(理屈上、各自が単独でできるのは「保存行為」だけ・・・)

 でも・・・これではダメ(塩漬け状態から脱することができない!誰も幸せになれない!)なので、相続者間で協議(話し合い)が行われる訳です。

 もちろん・・・その協議がまとまった時は問題ないです。
 でも、まとまらなかった場合は、最終的に裁判手続を行うことになります。これを「遺産分割審判手続き」というそうです。

 相続を巡って肉親同士が骨肉の争いを展開する・・・テレビドラマで出てきそうな場面を想像しちゃいます。(笑)

「通常共有」とは?

 こちらは普通にイメージする「共有」のことです。
 難しく言うと・・・「個々の共有物(財産)を対象とする通常の共有関係」となるのかも?

 なお不動産が共有されている場合は、原則的に共有者全員が同意しない限り、売却、建築、取り壊しなどの処分ができません。

 共有者の一部が共有物に変更を加える行為をした場合、他の共有者は、変更行為を禁止するよう求めることや、原状に戻すように求めることもできる!とされています。

「行方不明者」共有者への対応

 前回お話したとおり・・・改正民法では、相続開始後10年経過した場合「共有物分割訴訟」という裁判手続きを行なうことで「遺産共有」を解消できる!というルールが創設されました。

 つまりCさんは、(行方不明のDさんが見つからなくても)相続が開始されて10年経過すれば、裁判手続き(=Cさんによる申立て→公告手続の開始→裁判所の決定)等の手続によって(Dさんとの)「遺産共有」を解消できることになります。

 ただし後日、行方不明だったDさんが現れて「そんなことは認められん!」と異議を申し出した場合は・・・
 (現行民法の手続きと同じ)原則に戻って「共有物分割」と「遺産分」割の両方をやり直さなければならなくなります。

 「改正民法」によって、にっちもさっちもいかなくなった場面に風穴を開けて塩漬け回避が可能になります。
 しかしながら・・・行方不明者が現れるリスク?も想定して手続きを進めることが必要になりそうですね。

さいごに(まとめ)

 このシリーズでは、行方不明の共有者や相続人がいる場合の対処方法(共有関係の解消方法)として、以下4つの方法をお話してきました。

  ① 不在者財産管理人制度
  ② 失踪宣告
  ③ 所在等不明共有者持分取得制度
  ④ 所在等不明共有者持分譲渡制度


 いずれを利用するかは、目的・効果・費用・期間等に照らして適切に選択する必要はあるし、これで完璧!という制度がある訳ではないのですが・・・
 来年4月に施行され、新たなルールが色々な現場で適用され、それによって様々な問題が生じるかもしれませんが・・・

 これまでよりもトランプのカードが増えるのは、良いことだと思います。

Aマンション分譲機械式駐車場は?

 上記のトランプのカードを使って・・・話を前に進めることが急がれますが・・・実質的には、まだ何も進んでいません。(機械式駐車場設備はボロボロ・・・いつ壊れて使えなくなるか分からない危機的状況は変わらないで・・・早く何とかしないといけません!)

 2022年の8月の理事会で決議され・・・
 分譲機械式駐車場設備の現状を(管理組合から)100名の共有者に分譲機械式駐車場設備の現状をお知らせすることから、始動し始めたばかりです。
 さて、さて、どうなるのでしょうか?

 そんなAマンションの分譲機械式駐車場設備の共有(所有)者へのアプローチが進展したら、このブログで(ドキュメントとして)お話したいと思います。  (おわり)

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