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民法改正「共有」のお話(13)

 これまでお話してきたとおり・・・

 行方不明の相続人が居存在することで相続が前に進まない場合の対処方法には・・・
 現行民法下で規定されている①「不在者財産管理制度」と、②「失踪宣告」という・・・2つの裁判所で手続する制度があります。

 でも、これらの制度を活用するとなると・・・
 手続きが複雑!コストが高額!といった問題だけでなく・・・

 手続きしても有効に機能しない!(管理行為も処分行為もできない)・・・といった問題が生じる可能性も否めないのが、現状です。

 こうした現状を踏まえて・・・
 今回は「改正民法」(2023年4月1日施行予定)によって、ルールがどう改正されるのか?見ていきたいと思います。 

本シリーズのブログはこちら・・・
   民法改正「共有」のお話(1)
   「
民法改正「共有」のお話(2)
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民法改正「共有」のお話(3)
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民法改正「共有」のお話(4)
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民法改正「共有」のお話(5)
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民法改正「共有」のお話(6)
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民法改正「共有」のお話(7)
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民法改正「共有」のお話(8)
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民法改正「共有」のお話(9)
   民法改正「共有」のお話(10)
   民法改正「共有」のお話(11)
   民法改正「共有」のお話(12)

改正民法で創設された2つの制度

 2023年4月1日に施行される「改正民法」では、共有者の中に行方不明者がいる場合でもスムーズに相続が完了するために、以下2つの制度が新たに創設されます。

① 「行方不明の共有者等以外だけで変更行為を実施できる制度」
 裁判所の決定によって・・・行方不明の共有者以外の共有者が変更行為(例:別荘の増改築/共有物の売却等)を実施することが可能になる制度です。
 なお、この制度が適用されて仮に共有物を売却した場合は・・・
 行方不明者の共有持ち分の対価(お金)が供託(=国家機関である「供託所」が一旦お金を預かること)されることになります。
 そして・・・後日、行方不明者の共有者が見つかった(現れた)時にその対価が支払われます。

② 「行方不明の共有者等の共有持分を強制的に取得する制度」
 この制度が適用されるのは不動産だけです。
 裁判所の決定を得ることで・・・申立てをした共有者に所在等不明共有者の不動産の持分を譲渡する権限を付与する制度です。
 こちらも不動産の時価相当額のうち、行方不明共有者(法定相続人)の持ち分の価格(対価)は供託されます。
 この制度を使えば・・・(行方不明者の持分も含めて)不動産全体を第三者に売却することも可能になります。

 この新設される制度は画期的です!
 分譲マンションでも・・・行方不明区分所有者が見つからないことで困った(前に進めない)事例がたくさんあるからです。

 これら2の制度が創設されることにより、行方不明の共有者がいる場合の共有解消が、従前よりも容易となるのでは?と思います。

 これらの制度が実際に運用された時・・・行方不明者が居る共有物の処分(例:共有関係の解消)や相続協議が、今よりもスムーズになったら良いな!と思います。

管理行為に関しても・・・

 「管理行為」(=持ち分の過半数で実施できる行為)関しても・・・上記①「行方不明の共有者等以外だけで変更行為を実施できる制度」と類似の制度が設けられます。
 共有物の管理について、新設されたことは以下のとおりです。

「共有物管理許可決定制度」
 所在が分からない共有者だけでなく、同意するか否か(賛否)を回答しない(無関心な)共有者がいる場合・・・
 裁判所からの決定をもらえば、管理に関する事項をそれ以外の共有者の持ち分の過半数の同意で決定することができる制度のことです。(これまで賛否不明の共有者は、実質的に反対者と同じカウントされることが問題になることがありました。しかしながら、この制度を活用すると賛否不明者を母数から排除できる・・・ということです)

 この制度も現場での有効性が高いように思いますね・・・
 少し脱線しますが・・・行方不明の区分所有者が居ることで、管理が前に進まないマンションも現にあることを考えると・・・この制度を織り込んだ(=明文化された)「区分所有法」や「標準管理規約」ができたら良いなあ・・・と思います。  (つづく


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