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忘れられないセフレくんが徒歩15分のところで週1回働いているらしい

3年も前に終わった恋を思い出す30歳はきっとバカなのだろう。

セフレくんと離れてから、いろいろなことがあって、いろいろな人と関わって、いろいろな恋をした。

セフレくんと出会ったときは、4年通った声優養成所をなんの成果も出せないまま退所して、人生が虚無になっていた時期だった。
何もかもどうでもよくて、コロナで外出もままならないときに、不意に始めたマッチングアプリで、一番初めにいいねをくれた人。

マッチ自体は4月下旬とかにしていたけれど、世の中は緊急事態宣言。
緊急事態宣言が解除されて、実際に会えた6月までメッセージが続いたことは今考えても驚きだ。

(noteの書き方が少し今と違うのが面白い)

6月下旬に会ってから、12月に私が突き放すまで、恋を恋と認めず自分の保身ばかりしていた。そんな私の殻をセフレくんはずんずん壊してきた。セフレくんが私に飽きることが怖くて、いつかいなくなってしまうことが怖くて、些細なきっかけで私はセフレくんの手を離したのだ。

* * *

冒頭にも書いた通り、そこから3年間、いろいろなことがあった。
(そして2年前の夏にセフレくんに連絡して既読スルーされていたりもした。)

そんな中で、つくばJAXAの特別公開があり、友達と行くことになった。
初めてつくばJAXAに行ったのはセフレくんとで、アルバムを見てJAXAの空気感を思い出したりしていた。「あの時は楽しかったなぁ」なんて短歌を詠んだりもした。機種変をしたから何もないトーク画面だけれど、LINEの一番上にセフレくんがいることが嬉しかった。
今よりずっと太っていた私をたくさん抱いてくれたし、私が怒るときちんと向き合おうとしてくれていた。そんなことを思い出すと会いたくなってしまった。近年で一番未練がある恋なのだ。

久しぶりにGoogle検索をする。セフレくんの名前は珍しくてとても格好いい。何か情報が出ることを期待していたわけではなく、なんとなく検索したくなった。

すると、私の家から徒歩15分ほどの大学で週に1回月曜日に、授業をしているらしいことが分かった。

あんなに当時通っていたセフレくんの家の最寄りに通っていて(大きなイベント会場が集まっている)、この3年間1回も会わなかった彼が、私の最寄り駅にきていると言うのだ。なんたる運命のいたずら!と思いつつ、連絡をする度胸もなく、その情報を知ってから初めての月曜日が今日。

私はネトスト気質なので、セフレくんの授業が私の帰宅時間近くに終わることも知っていた。(大学のHPはガバだった。)

すれ違えるとしたら、こっちの道、といつもと少し違う道を通る。
前から雰囲気が似ている人が歩いてくる。道が暗くてよく見えない。
さすがの私も(ここで本物が来るのは出来すぎている)と思って、油断していた。

ら、それはセフレくんで。

わりと狭い道ですれ違ったけれど、私はマスクで、セフレくんはスマホをいじっていたから、気が付かれずで、話しかける勇気もあるわけがなくて。
一瞬息が詰まりそうになる。あんなに焦がれた相手とこんなに簡単にすれ違えてしまう。

さすがに出来すぎている。と、少しだけ泣きそうになった。

来週はもっと可愛い格好で明るい道であたかも偶然を装って向こうが気が付くのを待とうかな、何度も何度もすれ違って向こうが気が付くの待とうかな、なんてぐるぐる考えた結果、せっかちで押せ押せゴーゴー!な私には、そんな駆け引きは到底無理だと思った。

「久しぶり!ね、さっき〇駅にいた?」

と、LINEを入れる。返事を待つ間、夜ご飯を作る。今日は豆乳鍋。
これで返事がこなくても、また区切りになるからいい。いっそ来ない方がいいのかもしれない。と考えつつ野菜をぶち込む。
15分ほどでお鍋は出来て、スマホを見るとお返事がきていた。

『いた笑 今授業教えてるんだ』

そんなことまで教えてくれるんだ、と少しだけ嬉しくなってまた返事をしたら、そこから1時間返事が来ない。このまま来ない方がいいのかもしれない。

なんて強がってしまう癖は良くないな。ほんとは1回くらいご飯に行きたい。一緒に過ごしてるときも君がすごく頑張ってること知ってたけど、あれからもっと頑張って先生になったたのすごいねって話とか、この前JAXA行ったんだよって話とか、未だに君の最寄りに通ってるよって話とか、聞きたいし、聞いてほしいなぁ。

だけどいざ本当にすれ違ってしまうと、また交わることが怖くて。
婚約してる恋人がいたら、それでなくても長く付き合っている人がいたら、悲しいなとか、君からは他の女の子の話聞きたくないなとか。
ああ、また私は自分の保身ばかりを考えている。

* * *

もしも、もしも、本当に運命だったら、3年前に手を離してしまった12月を、やり直せたりするのかな。

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