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変えるべきこと変えられないこと変えるべきじゃないこと

毎週月曜日、週1回のミーテイング。
なにも発言できることはないけれど、クリニック全体の状況を把握するために出席している月曜日朝一のお仕事。
一応、毎回出席すればインチャージが発言の機会を与えてくれる。
『ミナ、MCH(Mothers and Child Health)で抱えてる問題はある?』

問題も課題もたくさんある。
私が日本で学んできた状況を正しいとするならば、正すべきことはあふれている。
でも彼らにとっての課題はなんなのかわからない。
他の部署では、薬が足りない、物がない、そんなことばかりが課題として挙げられている。

断水中、お産があると水なしで分娩介助をすることになるから困る。処方がすべて同じ量で年齢や体重に基づく計算がされていない。手袋の数が足りない。体重計が壊れたから買ってほしい。自宅出産の数が多いので、マザーズシェルターを作った方がいいのではないか。 


ないない、欲しい欲しいだけじゃなくてもっと他に自分たちで解決しなきゃいけない課題があるんじゃない?そう思いつつも、部外者、外国人、ボランティアの私がこうしてみんなの前で部署の課題としてなにを挙げればいいのかわからない。

『なにもないです、ボス』
『お前は人手として働いてるだけだから、わからないよな。』
そう言われ、インチャージの視線が私から外された。

倉庫が整理整頓されていないせいで、期限切れの医薬品が大量に見つかったこと。
物品の請求管理が正確に行われておらず、需要と供給のバランスが取れていないこと。
清潔操作が不十分で、患者さんの感染リスクを助長している。
看護師、ボランティアから患者さんへの態度が高圧的で敬意にかけていること。
オペレーションが非効率的で患者さんの待ち時間が長いこと。
データ収集に過剰な時間がとられている一方で患者さんへのフィードバックがないこと。
患者さんのプライバシーへの配慮が欠如していること。

挙げればきりがない。
それに付随するエピソードも数えきれない。でも私の立場でみんなの前で課題を挙げるのは違う気がする...

今日は成長モニタリングの手伝いをしていた。
体重、身長、上腕周囲径を測定し、それぞれのカードに記入していく。
そして栄養士の待つ部屋に誘導する。 時折部屋のなかから、私を呼ぶ栄養士の声が聞こえる。
手を止めて、栄養士のもとを訪ねると
「ミナ、俺は疲れた。」

え…あなたが疲れたかどうかなんて私の知ったことじゃない。というか、そもそも1時間姿を消していたし、あなたが働いている時間は私の半分。しかも立ちっぱなしで大泣きする赤ちゃんの身長やた体重やらを測定している私と、椅子に座ってお母さんから数値を聞いてノートに記入しているだけのあなた。本当はあなたがすべき栄養指導やグラフの読み方の指導も私がしてるんだけど…

溢れ出しそうな不満の声を心のなかにそっとしまって、笑顔で栄養士のもとを去りお母さんと赤ちゃんの元へ戻る。

そんな彼は12時きっかりに仕事を終え、どこかに消えていった。
彼が消えたあと、数名の赤ちゃんの成長モニタリングと栄養指導をしてMCHのブースへ。

月曜日は予防接種のために大勢のお母さんが赤ちゃんを連れてやってくる。
12時で終了する予定だが、多くのお母さんがまだなにかを待っている。
生後2週間で1回目の予防接種を行う。
1回目の予防接種にきた赤ちゃんには成長モニタリングカードを作成し、配布することになっている。
このカードの作成と、新規登録に時間がかかる。

栄養士の手伝いが終わったあとに、予防接種の手伝いを行う。
私がやってくるのを見計らっていたかのように、ボランティアさんから仕事を振られる。
「次はこの子のカードを作って。」

仕事をくれるのはありがたい。
でもね、私は実習生ではないからさ…
あなたの手に負えないことは手伝うけど、あなたに仕事を振られるのはなんか違う気がするんだけど…

そんなことを思いつつ、つたない英語と現地語を駆使しお母さんとコミュニケーションをとりながら、必死に手を動かす。そんな私を横目にお昼ご飯を食べ始めるボランティアさんたち…

ひとり最後まで何かを待っている様子で赤ちゃんをあやしているお母さん。
ボランティアさんたちはすっかり休憩モード。
気になって声をかけると、カードをまだもらえていないという。

絶対視界に入ってたよね…        どうして声をかけてあげないの…
お昼ご飯食べてる場合じゃないでしょ…

気づかないこともあるよね。お腹空いたよね。疲れたよね。あなたたちもボランティアだしね。そういい聞かせてぐっと堪える。

栄養士の行っている成長モニタリング。理由はよくわからないが、月はじめは成長モニタリングに来る子どもの数が少ない。今日も普段に比べ子どもの数が少なかった。予防接種には来ているのに、成長モニタリングにやってこない赤ちゃんも大勢いる。どうしたらもっと来てくれるだろうか、どうしたら継続的に成長モニタリングに来てくれるだろうか、そんなことを必死に考えていたら
『今日は暇だね。そのほうがいい。忙しいと困る』
とボランティアの青年が言った。

確かにね、忙しいのはイヤだよね。お給料もらってるわけじゃないしね。
でもなんのための医療サービスなのかな
なんのためにこうして身長測ったり、体重測ったりしてるのかな
そもそもの感覚が違いすぎる…
こころのなかで深いため息をついた。

今日一日、たった7時間の間に感じたこれだけのギャップ。
別の日のできごとも振り返ればきりがない。

これは受針器や攝子を滅菌している様子。
着火性の薬品にマッチで火をつけて滅菌する。

そして床に置かれた滅菌後の医療器具たち。

金曜日はこれらを使って、女性の上腕内側に皮下埋め込み型の避妊用インプラントの埋め込み処置をする。
簡易メスで切開し、それまで入っていたインプラントをぐりぐりと取り出し、新しいインプラントをこれまたぐりぐりと押し込む。そして数針縫って終了。

これが準備の様子。
一応滅菌手袋を使っているが、私の概念ではこれは全く清潔野ではない。
滅菌と未滅菌のものが混在してしまっている。あげくの果てに、この滅菌や風のシートの上にボールペンでメモを取り始めた。

ああ、滅菌ってなんだっけ...清潔ってなんだっけ…

これらの処置はすべて看護師が行う。
しかもなぜか歌を歌いながら…
スマートフォンで大音量でザンビアンミュージックを流し、熱唱しながら、女性の腕を切ったり縫ったりしている。
手がなかなか進まないし、なにより歌を歌いながら処置される女性の気持ち…

水曜日、初回の妊産婦検診にはパートナーの男性も同伴することになっている。
毎週50人前後の女性とそのパートナーが検診に訪れる。
待合室に置かれた椅子に座れるのはせいぜい30人程度。
いつもひとであふれかえっている。
椅子には男性が優先的に座り、大きなおなかを抱えた女性たちは床に座る。
検査のために看護師が女性の名前を呼ぶ。
なかには床に座った状態からすぐに立ち上がれず、名前を呼ばれてもすぐに看護師のもとに行けない女性もいる。
30秒でも返事が聞こえず、姿が見えないと、順番を最後に回され、看護師からの鋭い視線と叱責を浴びる。
そんなに女性たちをせかすのに、看護師たちはスピードや効率を意識して働く様子はないため、1回の検診に半日以上かかることもある。
一方、クリニックのスタッフの知人や裕福な家庭の女性は待ち時間なく優先的に検診を受けることができる。他の女性が7時間以上拘束されているのにも関わらず、ものの30分程度で帰ることができてしまう。

妊娠中、1か月ごと、妊娠後期に入ると1週間ごとに行われる妊婦検診。
血圧、体重を測定し、看護師がトラウベを使って胎児心音の確認と、胎向を確認を行う。
妊娠期高血圧症候群は周産期死亡を招く可能性があるため、血圧のモニタリングは慎重に行う必要がある。
でも多くの女性が、妊娠以前の自分の血圧を把握していないし、初回の検診に訪れる時点で妊娠中期に入っている女性が大半でありアセスメントができない場合が多い。
しかも、検診を受ける人数が多いと、先に看護師が胎児心音と胎向の確認を行い、帰り際に体重と血圧の測定をし、データを記入し、そのまま女性を帰してしまうこともある。

いったいなんのための測定なんだろ…
いったいなんのためのデータなんだろ..

書ききれないほど、日本の医療現場ではありえないことが起こり続ける。
課題を挙げたらきりがない。


でも私が思う課題は、あくまでも私が日本で学んできた理想と比較してあげられる課題にすぎない。だから部外者の私があれやこれやと指摘するのはお門違いもいいところな気がする。
それに私ひとりの力でなにか変えられるわけはないし、私がここで活動していくためには彼ら同僚たちの助けが必要不可欠だ。

そんな気持ちを消化するように私はひとりで自分が理想とする姿を目指して働く。
患者さんたちに誠意をもって接する。
てきぱきと動き、できるだけ効率のいい方法を探して工夫する。
手が空けば、別の仕事を探して動く。
整理整頓、清潔を目指して片付けや掃除を行う。

『ミナ~、疲れたでしょ』せかせかと働く私にそんな声がかかる。
『疲れてないよ!次はあっちの手伝いに行ってくる!』

そう言って一生懸命はたらく姿勢を示そうとすると、
『じゃあ、これやってよ。俺はもう疲れた。ミナは疲れてないんでしょ。』
そう言って仕事が振られてしまう。

そういうことじゃないんだけどな…
私だって疲れてるよ。でもまだあっちでは患者さんが待たされてるんだよ。

でも疲れていないと強がってしまった手前、断れない。
でも私の活動は彼らの力なしには成り立たない、そう思うと断れない。

絶妙に難しい立場に置かれているいまの状況。

予算も持たず、この国での公式の資格も持たず、現地語も話せず、年齢も若く、部外者であり、ボランティアである私はでしゃばるわけにはいかない。でもなにもしないわけにもいかない。

今日、栄養士がいない間、成長モニタリングに赤ちゃんを連れてくるお母さんたちにグラフの読み方や母乳や離乳食の与え方を指導していた。

ちゃんと育ってるよ、とお母さんに伝えると安心と安堵で笑顔を見せてくれた。
下痢が続いていることを心配して相談してくれたお母さんには、水を煮沸してから与えるよう伝えると一生懸命うなづいてくれた。

“ムズング(白人)”がいるときに連れていくと、いろいろ教えてもらえるみたいだな。

そんな風に認識してもらって、来月も成長モニタリングに連れてこよう、そう思ってくれるお母さんが増えてくれたらいいな。そんな思いで活動している。

目立たず、気分を害さず、適度なバランスを保った活動を目指している。

同僚たちとの良好な関係を保ちつつ、自分なりの活動をするってすごくすごく難しい。

確実に課題が存在する以上、
JICAボランティアとしてここに派遣されている以上、
遠慮ばかりもしていられない。

でも期間限定、ボランティア、部外者、予算なし、資格なし、であることは事実だし、変えられない。

謙虚でありながら、自分の存在価値を見出す。

ぐらぐらゆらゆら揺れて迷って進んでは立ち止まって後ろに下がってみたり回り道してみたり、そんなことの繰り返し。

この1年間は謙虚さに重きを置いて、控えめに、まずは人手として。
2年目になったら、組織の一員として内部から課題を指摘できるようになることを目指そう。

悪いこと、批判的なことばかり書いたけど私の配属先はかなり恵まれてたクリニックで比較的お金もあるし、優秀なスタッフも多い。郡の保健局と郡病院から一番近くて、一番規模の大きいクリニック。だから優れているところもたくさんあって、それに驚くこともたくさんある。正直私がいなくても、"ザンビアの公的保健センター"としては十分すぎるくらい成り立っている。

だからそのいいところを伸ばすための小さなお手伝いができる2年間になったらいいなと思いつつ、迷い悩み続ける日々が繰り返される。


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Zikomo🇿🇲!
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み。

青年海外協力隊員としてアフリカで暮らす未熟な看護師の日々の記録。

青年海外協力隊🌍

2019.1~2021.1 ザンビアで暮らす2年間の記録
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