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全部OFFにして出かけよう ~アイドリッシュセブンOFF旅が仕掛ける『二次元』と『三次元』の融合

6月末、一泊二日の京都旅行に出かけてきた。天気は晴れていたけれど、そのうち雨も降ってきそうな微妙な天気だった。さてどうしてこんな時期にライブ前の貴重な土日を京都に行ったかと言えば、答えはただ一つ。

そう、アイドリッシュセブンOFF旅@KYOTOである。

実は今回の旅行以前にフォロワーに会うためのOFF旅を利用して行っていた京都、パンフレットを見ながらあーでもないこーでもないと語り合ってからのOFF旅であったので、感情はどこまでもONになっていた。

あまりレポというものが得意ではないが、簡単にどんな場所を巡ったかを記載すると、
<1日目>
河合神社(ピタゴラの美人絵馬の神社)→抹茶共和国→ソワレ
<2日目>
貴船神社(※OFF旅とは全く関係なくただ行きたかっただけ)→おにぎり屋さん→ドーナツ屋きんぞう→南座→八坂庚申堂→TOCCA&FRIENDS TRUCK

ちなみにこんな感じ▼

(抹茶共和国の抹茶は秒で飲み終わった おいしかった 宇治の店舗ではなく、ソワレの近くの店舗に行った)

(喫茶店ソワレはラッキーなことに2Fの窓際席だったし、フルーツポンチが食べられた。写真があれだけど実物はとてもきれいだった)

これらを巡っているうちになんだか不思議な気持ちになった。
「私今、何を目的にこんな風に京都を歩いているんだろう」という妙な感覚に捕らわれていた。
今回のOFF旅は、つまるところ聖地巡りに値するのだと思うけれど、いわゆる『聖地巡り』とは若干様相が異なる気がした。
京都も、昨年の愛知もアプリゲーム内のアイドリッシュセブンの作中では直接関係しない土地だ。別に京都が舞台とかそういうものではない。
じゃあなぜ私は今京都にいるのか?聖地巡りではないのに、脈絡も関係性もない場所を巡っているのか?
答えるまでもないだろう、この企画が「OFF旅ツアー」と呼ばれる「企画旅行」であり、そのイメージキャラクターとして、大好きなアイドリッシュセブンが選ばれたからだ。

聖地巡りではなく、「イメージキャラクター」としての起用

昨年より始まったこのOFF旅企画は、JR東海ツアーズがアイドリッシュセブンを「イメージキャラクター」として任命し、JR東海ツアーズがある各地の魅力を伝えるという企画だ。昨年の「OFF旅@AICHI」はなんと今年のツアーグランプリ2019にて観光庁長官賞を受賞した。

ツアーグランプリ、表彰対象は以下のような商品とのこと。

旅行業における企画力およびマーケティング力の向上、「観光立国」の施策 に寄与することを目的に、海外旅行・国内旅行で最も優れた企画旅行(募集型・受注型) に対して表彰を行う。
併せて訪日旅行で実施された企画旅行の中から優れた企画を表彰する。  (ツアーグランプリ2019 HPより抜粋)

JR東海ツアーズは、東京から大阪の東海道新幹線沿いに展開されている。東海圏在住の私としては非常に馴染み深い旅行会社だ。関西東海圏を中心としたプランはもちろんんこと、東海道新幹線ユーザーが東京や大阪・京都に行きやすい仕組みを作ってくれている。個人的にぷらっとこだまをよく使っているけれど、静岡の人間ほどこだまを愛している人間はいないだろう。

今回のOFF旅企画は、JR+ホテルをベースとしたフリープランのツアーだ。(日帰りもある)
旅行行程は決まっておらず、新幹線チケット(+ホテル)がついているツアー、特典として京都駅内のJR東海ツアーズで引き換えできる「特別ブックレット」がついている。
この特別ブックレット、要するに観光ガイドなのだけど、アイドリッシュセブンのメンバーたちが京都の魅力を伝えるためにさまざまな店舗を訪れている様子が描かれているのだ。
7人のアイドリッシュセブンが、初日は7人で同じ場所へ、二日目は3チームに分かれて京都の様々な場所を訪れる。ブックレットは全3種、それぞれ紹介される内容が異なっている…ともなれば、リピートしたり、複数人で行って情報をシェアしたり、といろいろな楽しみ方ができる。
前述したとおり、OFF旅は自分自身で旅行行程を作り上げるフリープランツアー。ブックレットを元にして彼らが『訪れた』場所を巡るのはもちろんのこと、せっかく京都に来たのだからと観光名所に足を延ばすのもありだろう。
前述したとおり、二日目は全然全くOFF旅とは関係のない貴船神社に行ってきたのだが、「この際だから行ってみよう」と自分自身でプランを組み立てる自由度があるのも、このツアーが「フリープラン」のツアーだからに他ならない。
フリープランのツアー自体はありふれたものだ。出張や遠征の際に切符とホテルがパッケージングされていてそれ以外が決まっていないのであれば使い勝手もいい。
今回のOFF旅はその「使い勝手の良さ」と「聖地巡り」を活かした商品だった。
スケジュールの決められることのないフリープラン内を「ツアー」として成立させるために、イメージキャラクターが実際にその場所を巡った写真をパンフレットとしてツアー商品として組み込む。旅の最初に現地の東海ツアーズでパンフレットを受け取り、それを見ながら旅をする。彼らの辿った道の通りに歩くのもいいし、好きな場所だけピックアップしてもいい。今回の私のように、プランにない場所を組み込んでもいい。フリープランだからこそできることだ。
このOFF旅のプランの下地には、従来の「作品の聖地巡り」がある。やっていることは聖地巡りと変わらないのだけど、その「聖地」とされている場所そのものが観光スポットになっていて、知らず知らずのうちに旅行をしている…という構図だ。
つまりOFF旅というのは、ただパンフレット通りにちょこちょこ店を巡っているだけで「旅行はしたい、だけど知らない人と動くツアーは苦手。だからって自分でプランニングもちょっと…でもどうせ行くなら可愛いところとかきれいなものを見たい!」というワガママをかなえられるようなツアーになっている、というわけだ。
何より、その「イメージキャラクター」としてアイドリッシュセブンが選ばれた。アイドル作品として確立してきた彼らは、今回の企画を仕事として受けている。ブックレットの仕様もまるで彼らが京都ロケを行ったかのような作りになっている。
狭義な表現ではあるが、「OFF旅は聖地巡りではない」。「企画のイメージキャラクターとしてアイドリッシュセブンが起用された」というだけの話なのだ。だからこそ、メインユーザーであろう10~20代女子の「ワガママ」をかなえられるようなツアーの構造になっているのではないか。

OFF旅@KYOTO ~深読みオタクが考えた3つの魅力

私自身が旅行が好きということもあって今回のOFF旅は単純に旅行企画としても楽しみだった。旅行というのは何かしらの目的が合っていくことが多い。観光地巡りだったり、友人と会うことだったり。昨今であればインスタ映えも立派に目的だろう。
旅先には日常にはない魅力を求めるが、今回のOFF旅の魅力をあえて挙げるとしたら3つだ。

❶リピートしたくなる!新しい定番のお気に入りのお店が見つかる!
❷旅ってめんどくさいだけじゃない!旅の楽しさ、面白さを教えてくれる
❸現実感、実在感を感じさせる演出!『アイドリッシュセブンさんがここに来ました!』

❶リピートしたくなる!新しい定番のお気に入りの店が見つかる!
これは今回のOFF旅のコンセプトとしても上がっている「新定番」を見つける、という目的がある。
京都というのは、実は結構行く機会が多い。修学旅行だったり出張だったり、日本と言えば京都というイメージも根強くある。
「京都は行ったことがあるし、有名どころも大体回った」という人も多いだろう。ただでさえリピート率が高い京都だけど、やはりそこにあるのは「伝統のある観光名所」だったりする。
JR東海ツアーズでは定期的に京都の素敵なスポットを紹介してくれるページがあるのだが、これを見ていると、新しいお店もどんどん増えてきているし、伝統ある老舗も紹介されている。温故知新という言葉があるように、京都もただ「伝統」だけが名所というわけではなくなっており、どんどん発信をしていくようになっている。
そんな風に定番だったところから少しだけ視点を変えて、新定番を見つけるのが今回のOFF旅だ。寺社仏閣はもちろんのこと、上記に書いたような新しいお店もコースに入っている。地元で愛されるような名店、誰にも教えたくないような自分だけのお気に入り、そこに変わらずずっとある店。観光名所だけではない「自分なりのお気に入り」を探せるようなパンフレットの仕様になっており、実際にいくつか店舗を巡れば、きっと好きな店も見つかるだろう。「あそこの店にまた行こうかな」と思えるような、自分だけのお気に入りを見つけると、再びその場所に来たくなる。再び訪れた時に「ああこれこれ!」と安心できるような、そんな場所を見つけることに一役を買ってくれているのだ。

❷旅ってめんどくさいだけじゃない!旅の楽しさ、面白さを教えてくれる
意外と周りには「旅行が面倒くさい」という人がいる。
その人曰く、「見知らぬ土地を歩くのが結構大変」とのことだ。旅先でも知っている味に触れたくなり、ファミレスを選択するという。
旅は確かに不便なものだ。自分が知っている場所を歩いているわけではないから、道に迷ったら帰れなくなるかもしれない、電車に乗れなくなるかもしれない、という不安を常に抱えながら歩くので疲れる。
その疲れを感じたくない、というのは至極まっとうな考えだ。
JR東海ツアーズが今回この企画を打ち出した時に、「若年層が旅行を楽しんでいただけるように」という趣旨があったのをぼんやりと覚えている。それは、「旅行が面倒くさい」というものではなく、見知らぬ場所でちょっと勇気を出して歩くことは実はそんなにハードルが高いことではないんだよ、と伝えたいのではないか。
前述したように、今回のOFF旅は旅に慣れていない人でもパンフレット通りに歩けばある程度プランニングができる。行程はそんなにぎゅうぎゅうでもなく、余裕があれば一つ二つくらいオプショナルで他の聖地を巡ってもいい。
そうして、このプランを見ながら、「ここってどうやっていくんだろう?」「この時間だったらここまでいけるんじゃないかな?」「どうしてもここに行きたいから他の行程はこうしよう!」ということを考えてはいないだろうか?「アイドリッシュセブンが訪れた場所を多く巡りたい」というその目的だけで、自分自身で旅行の行程をくみ上げることができる。
だってフリープランなのだ。自分でしか組み立てることはできないし、次の行き先も自分で決めなきゃいけない。だけど無数に見える選択肢から「アイドリッシュセブンが訪れた」という絞り込みをすることができる。
旅を楽しむときに、次に行く場所がわからないとか思いつかないというのはとても苦しい。目的なく彷徨うことはそれが目的である旅人以外の旅行者は、結構難題な話だろう。
いくつかプランを組み上げて、そうしてOFF旅を終えた時、新幹線でこう思う人も多いはずだ。
「次は、あそこに行こうかな」
そうして旅をすることの魅力に気付かせてくれるきっかけがOFF旅を与えてくれる、という効果も期待できるだろう。

❸現実感、実在感を感じさせる演出!『アイドリッシュセブンさんがここに来ました!』
さて❶❷と今回のOFF旅企画自体の魅力を書いてきた。
これはただの旅好きオタクの日記と思われてしまうのでこれは声を大にして言いたい。このOFF旅のイメージキャラクターとして、アイドリッシュセブンが起用されたのだということを。
彼らは今回の旅行企画の「イメージキャラクター」として選ばれただけで、実際には京都や愛知を聖地にしているというわけではない。アイドルのお仕事の一環としてこの企画にでているだけなのだ。
コラボカフェや企画展などで「世界観の再現」がなされることは、もう当然のようにどんな作品でも行われている。そういったコラボは、はっきりと現実と虚構の境界線がはっきりと線引きされていて、私たちは「再現」の中に入り込んで作品の世界に埋没する。ある意味従来の「聖地巡り」というのも、作品の世界へ自分がトリップするという感覚に近いのかもしれない。
しかしOFF旅は全く逆だ。アイドリッシュセブンたちが実在する店を巡り、実際の旅行パンフレットとしてそれを紹介する。私たちと地続きの世界に彼らがいて、ただ時間が少しずれていただけで遭遇していたのかもしれない、という錯覚にとらわれる。
あれ?ここってアイドリッシュセブンたちがきました?って言ったらお店の人が「そうなんですよ〜みんないっぱい食べてましたよ」って笑いそうな感じだ。私たちはアイドリッシュセブンというグループのファンで、自分たちの好きなアイドルが旅行してたからそれで来たんです、というスタンスになっている。
実際にお店の方からも「アイドリッシュセブンさんのファンの皆さん」というような括りで見られているようなツイートもしばしばみられることを見ると、彼らは本当にアイドルで「仕事」でそこに来ていたんだなあ、というような認知に変わっていく。
単純な二次元のアイドルではないような感覚なのだ。だってこれは例えば、モヤさまとか都バスでとばすぜぃとかいい旅夢気分とかで芸能人が着た場所を巡るのと同じ感覚だし、ツアーをアイドリッシュセブンではなく他のアイドルにしても成り立つ。そういう企画の作り方に、アイドリッシュセブンが現実に入り込んできている、という感覚を覚えるのだ。

二次元と三次元の融合 ~OFF旅の仕掛ける「WHAT'S NON FICTION」

このnoteを書いている現在、すでにREUNIONを果たした私であるため、実在性、彼らのアイドルとしての在り方などいろいろと考えるところはある。
昨年のOFF旅を皮切りとして、DHCやサンリオ、SONYなどさまざまな企業とのコラボを続けている。「仕事」としてその商品を伝えるために、彼らは商品価値があり、アイドルとしての格が出てきているということだろう。
これまでアイドリッシュセブンは作中でもたくさんの仕事をしてきた。それはカード衣装という形で再現されていて、ああなるほどね、こういう仕事をしたんだな、と第三者の目線で感じることができる。
しかし、その仕事自体をユーザーは見ることはできない。マネージャーという立場上、裏話を知ることはできるけれど、彼らのいちファンとして仕事の姿を見ることはできないのである。
だが現実の実際にある企業とのコラボという手法を使って、私たちに自分たちが仕事をしている姿を見せつける方法を彼らは選んだ。
ライブではなく、映像でもなく、私たちの生活に入り込むことで、自分たちの仕事をしている姿を見せてくる。
そこにはいつもの葛藤にまみれた彼らはいない。どんなことを抱えても笑って、その場を楽しんで、私たちを笑顔に変えたいという気持ちを抱えたアイドルたちがいるのである。OFF旅の姿は彼らの素顔であって、素顔ではない。れっきとしたアイドルが「仕事」をしている姿でもある。
アイドリッシュセブンが生活に入り込んでいく。現実と融け合わさっていく。このコンテンツは、そういった作り方をしていると確信したのが今回のOFF旅だ。

そうしては彼らは今ここに問いかける。

「WHAT'S NON FICTION?」

『この街も僕たちも、今この瞬間に、歴史を塗りかえている』
――さて、現実と虚構の境界線を引くことに、どれほどの意味があるのだろうか?OFF旅を通して見えてきた彼らと我々の世界の境界線は、すでに僅かずつ融け合っていっているのかもしれない。

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