私がスーパーマーケットで学んだコト<19> POSデータ分析

この小論6回目で触れたように、お客の購買動向は、アナログな形ながら昔からあった。6回目の「インバスケットリサーチ」の手法を教えてくれたのは、ニッショーストア(当時ー現阪急オアシス)の井上靖之氏だった。確かに、ばれないようについて回ると、お客が何を重視して購入しているか、わかったような気になったものだ。
要はどんな組み合わせで商品を買っており、そこからその顧客の生活ぶりを類推しなければ、売場は組み立てられないのだ。
ところで、POSデータが登場するまでは、どんな商品が売れているのかを知る為には、自店の発注データを追いかけるぐらいしか手はなかった。これでも9割以上の精度でどんな商品売れており、次に打つ手が見えてくる。
POSレジによって精算を行うようになり、膨大なデータが集まるようになっても、すぐにはその活用が議題に上らなかったのは、この発注データをつかった分析でそれほど不足を感じなかったという事情があった。

POSデータで商品の正確な位置づけが分かる

しかし、1990年代に入って、POSデータの力が徐々に認識され始める。そのきっかけになったのが、点数PI,金額PIなど、いわゆる1000人あたりに換算した売上分析が本格化してからだ。この利点はなんといっても客観的な分析ができること。
例えばレジに立って、お客の購買処理をしていると、急に特定の商品が売れだし、それが印象に残ることがある。そんなとき、いまどんな商品が売れているかと聞かれると、さっきレジで体験した商品が浮かぶ。しかし、レジ通過客1000人の売上を見ると、それほど印象に残らないトップになっていたりする。それだけ、イメージというのはあてにならない。
金額PIでは、もっと極端に違いが出てくる。それは1個98円の商品が1000個売れるよりも、1個980円の商品が101個売れたほうが金額PIは高くなるのだ。レジに立ってみている限り、1000個売れる商品のほうが、絶対よく売れていると感じるものだ。つまり、個数と金額という二つの要素が入ってくると、もう感覚では判断できなくなる。

IDPOSで分析が立体的になる

POS分析は単純な数値分析から、売上と購入者をクロスしたIDPOS分析が出てきて、一次元分析では見えなかったことが見えるようになってきた。この分析で代表的なのが、コープさっぽろでの豆腐の売上動向だ。
これはコープさっぽろのある店舗で、豆腐の売上金額が急速にダウンしたことを、顧客別の豆腐の売上データで分析し、対策を立てた事例だ。この店舗では、豆腐の品揃、、売れ筋の一般的な商品から高額品まで幅広く置いていた。しかし、ある時それほど数量が出ていない、地元の老舗豆腐店の商品をカットした。
ところが、豆腐のトータルの売上はダウンした。そして、あまりにもダウン幅が大きかったので、その原因を調べてみると、かなりのお客が来店しなくなっていることが分かった。さらに突き詰めて要因を探ると、今回カットした地元の豆腐店の高額手作り豆腐のヘビーユーザーだったことが判明した。そこでコープさっぽろでは、同店の豆腐の品揃えを早速戻すと同時に、可能な限り組合員データをもとに連絡、最終的には事なきを得た。
恐らくIDPOS分析ができない時代であれば、同店の豆腐カテゴリーは、この品揃えの変更と同時に、利益部門が赤字部門に転落したままになっていたはずである。それが、分析手法の進歩とともに、リカバリーショットを打てるようになったのだ。


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