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わたし三姉妹


 妹たちとランチ会をしてきた。

 妹たちは、わたしと同じ愛知県に住んでいる。わたしの家からだと、車で1時間半くらいのところ。妹たちの家は、車で30分くらい離れていて、よく行き来しているようだ。今回は、動きやすいわたしが、妹たちの家近くまで行く。

 妹ふたりと一緒に、子どもたち抜きで、ランチを食べるのは、何年ぶりになるだろう。そんなことを考えながら、電車で待ち合わせ場所に向かう。全く思い出せないまま、途中の駅で、末の妹にピックアップしてもらう。

 時間通り、お店について、三姉妹が揃った。前回約束したときは、甥っ子がお熱で延期になったから、今回無事に会えてホッとした。忘れぬうちに、実家からのブロッコリーを手渡す。

 何年ぶりの三姉妹ランチか、妹たちにきいたら、記憶力のよい真ん中の妹が、「20年以上前じゃない?」と言う。そうか、わたしが結婚して、関東暮らしのとき、帰省したタイミングでランチしたっきりだったようだ。

 もちろん、実家にふたりが来てくれるときに、母も交えて、おしゃべりしている。けれど、子どもたちがいると、おしゃべりばかりしているわけにはいかない。何を話してたんだっけ?と、いつも会話が途切れがちになる。

 さて、子どもたちがいないのに、どうしても話題は子どもたちのことになる。子育てぶりをきいていると、それぞれ、わたしとは違う視点を持ち、また大事にしていることも違うようだ。わたしには、ふたりの子育ては厳しく感じる。ということは、ふたりからしたら、わたしの子育ては甘くみえるだろうな…なんて考えてしまう。まぁ、いいや。気にしても仕方ないから。

 意見は言うけれど、押しつけたりはしないし、アドバイスを求められなければ、あまり口を出さない。当たり前かもしれないが、昔は小さなお母さんだったことを思うと、わたしも成長している。そう、姉とはいえ、もう上とか下とか、関係ないような気がするのだ。それぞれ、がんばってるなぁと、ただ思う。もうすっかり、ふたりとも母の顔だ。

 ふと、真ん中の妹が思い出話を始めた。わたしのことだ。本当によく覚えているなぁ。しかも、母から聞いた話で、妹自身が体験したわけじゃない。わたしがまだ保育園のころ、いつも仕事でいない父が、珍しく家にいたときのこと。

 わたしは、父に向かって、「おとうちゃん、久しぶり。元気だった?」と笑顔で言ったらしい。それで、父は感極まって泣いたそうだ。いつも、きちんと家に帰ってきていて、寝ているわたしたちを見て、仕事をし、しばし寝たら、また仕事に行く日々。そんなことは知らないわたしは、父はいつもいないと思い込んでいたわけだ。しかも、泣いている父をそのままにして、遊びに出かけてしまったらしい…

 申し訳ない気もするけれど、仕方ないじゃない?寝てるときのことは、さすがにわからないよ。母は、父が帰ってきていることは当たり前だから、わたしに話してはくれなかったし。あの恐ろしいおとうちゃんが、まさか泣くなんて、思いもしないし。

 そんな思い出ばなしが続く。懐かしいなぁ。そう、そう、そうだったねぇ。思い出したよ。うんうん。ん?どうして、わたしの失敗話ばかり覚えてるのよ!やらかしたわたしがすっかり忘れているのに…まぁ、いいや。また、きっと忘れちゃうから。

 それからは、今の自分たちの体調のことになった。持病持ちの末の妹、今日も食べるものに気をつけているようだ。わたしもこの春から、体調不良をなんとかするため、漢方治療を始めている。真ん中の妹だけは、なんともないそうだ。うん。甥っ子はまだ幼稚園児、元気でいてくれなくては、ね。

 やっぱり、末の妹は、あんまり自分のことを話さないなぁ。我慢強く、自分に厳しめ。だからこそ、よく話をききたい。また、一対一でランチに誘ってみようかな。前も一緒にランチしたら、いつもはきけないような話が、ぽろっと飛び出したんだっけ。だから、この妹とわたし、性格がよく似ていると気がついた。遅すぎる気づきだけれど、気づけてよかった。

 話していたら、時間はあっという間に過ぎていく。話し続けて3時間半、おしゃべりのわたしたち、まだまだ話せるけれど、お終いの時間がきてしまった。会計で、お姉ちゃんは電車代あるからって、代金をちょっとまけてもらった。

 ほんと、大人になったね、あんたたち。



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