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卒業読み聞かせのこと


 小学校で読み聞かせボランティアをしている。この会では、毎年、卒業間近の6年生向けに、特別バージョンの読み聞かせをプレゼントしている。

 今回は、パソコン1人、音響兼セリフ1人、ナレーション1人、他のセリフ3人の6人。わたしは、こういう形での読み聞かせは初めてだ。

 2月、朝のいつもの読み聞かせで、6年生のクラスに行ったら、先生が「クラスの子たち、卒業読み聞かせを楽しみにしてるんですよ」とおっしゃる。その言葉にうなずく子どもたち。わたしは、思わず、「お任せください!」と胸を叩いていた。

 読む本は、『えんとつ町のプペル』になった。映画にもなったことがある作品。黒地に光が映える、また、最後の場面は、何度読んでも涙が出てきてしまう。

 前の大型読み聞かせとは違い、絵に動きはつけない。絵本そのままをスキャンして、スクリーンに映し出し、それに音響とナレーション、セリフをつける。わたしは、悪役の男の子たちと町の人を担当した。

 本番前に、公民館をお借りして、2回練習する。うち、1回は体調不良でわたしは休ませてもらった。

 そうして迎えた、3月の本番の日。場所はパソコン室。2時間目に2組、3時間目に1組、計2回、読み聞かせする。

 ノート型パソコンが、児童一人ひとりに一台、配布されるようになって、パソコン室は使われなくなったらしい。今は、空き教室になっている。机や椅子が端に寄せられ、真ん中には広いスペースが空いている。

 そこに、スクリーンとプロジェクターを設置していただき、パソコンは部屋のものをお借りして、準備を進める。子どもたちが座る場所から、スクリーンに映し出した絵が見えるか。音は聞こえるか。本番さながらの読み合わせ練習もする。

 あっという間に、本番になった。それぞれスタンバイ。黒いカーテンが降ろされ、暗い。手元が見えにくかったから、パソコン室にあるノート型パソコンを起動して、蓋をなるべく閉め、明かりとして使わせてもらった。これを思いつかれたお仲間、すごいと思った。

 一回目のスタート。子どもたちは、落ち着いている。静かに、座って集中して聞いてくれた。ナレーションは、前で。セリフは後ろで。子どもたちをはさむような配置。

 最初は、声が聞こえた場所を気にする子が、ちらほらいたが、途中からはスクリーンに釘付けになっていた。そんな様子を見ていると、こちらも自然に力が入る。するすると、物語は進んでいく。

 エンディングの音楽が、ラストシーンにぴったりで、何回も見てきいているのに、感動で胸がいっぱいになる。熱のこもった、いい読み聞かせになった。最後、子どもたちと写真撮影をして、この時間はおしまい。

 次の読み聞かせまで、20分ほど間がある。休憩しながら、おしゃべりをする。こういう時間も楽しい。今年度、お子さんが学校を卒業される方が何人かみえて、わたしまでうれしくなる。思い出になる卒業式に、わくわくする入学式になりますように。わたしは緊張からか、しゃべりすぎてしまったが、まぁ、どなたも気にされないだろう。

 2回目のスタート。やはり、2回目だって緊張する。声が少しだけかすれてしまった。気管支炎がまだ治りきっていない。咳が出ないようにと意識すると、咳が出やすくなるような気がする。水を飲み、耐える。それでも、致命的な失敗はなく、滞りなく、終わった。とてもいい読み聞かせになって、ホッとする。最後に、クラス代表の子が、感想を発表してくれた。うれしいなぁ。

 子どもたちが退場してから、サッと片付けを済ませた。みんなで作り上げる楽しさは格別だなぁ。終わってからも、じんわりとした達成感に包まれていた。まだ、興奮が冷めやらない。わいわいと、「よかったねよかったね」と、言い合った。


 うちに帰ってから、LINEグループのトーク画面に、お仲間のメッセージが入る。

 お孫さんが「すごくよかったよ」と。別のお仲間からは、息子くんから、「かっこよかった」と。また、別の方からも、「声優の人たち、心がこもっていて、とってもよかった」と。うれしいメッセージが続いた…

 それを読ませてもらっていたら、ますますうれしくなって、本当にやってよかったなぁという、あたたかな気持ちになった。

 来年も参加させてもらおう!



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