見出し画像

自分の身体を大切に〜漢方編②〜


 漢方編①はこちら


 2023年6月。漢方内科のある整形外科クリニックへ行った。

 駐車場から、クリニックへ向かう道沿いに、クリニック入り口を知らせる看板があった。隣に犬の置物があり、なんだかほっこりとする。緊張しつつ、受付を済ませた。待合室に人はまばらで、そんなに待つこともなく診察室へ通される。

 ぎろり。先生に見つめられて、ちょっとたじろぐ。なんて、強い眼差し。でも、そう、あのブログの「耳垢が詰まっちゃった」先生なのだ。怖いことはないはず。でも、本当はちょっと怖い。

 先生の診察が始まった。先生は、わたしが難聴だと伝えると、重要事項をメモしながら、説明してくださった。ありがたいし、ホッとした。

 わたしは高コレステロール血症の家系であること。疲れやすく、すぐに身体がだるくなる。風邪をひきやすい。季節の変わり目には、寝込むほどになる。夜眠れないことが多い。また、ふわふわとしためまいが時々起こる。これらを改善したいと話した。

 先生は、舌や足首など、診てくださって、まずは“気”と“血”と“水”めぐりの改善のため、漢方薬24番加味逍遙散(かみしょうようさん)と20番防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)を処方してくださった。

 「この漢方薬は粉なので、できたら熱湯に溶かして飲んでください。その方が効果があるから。1日毎食前、3回分。でも、時間に関係なく、1日分を飲み切ってくれたらいいですよ。」

 「それから、同時に食事療法も始めましょう。まずは、空腹時、最初に糖はとらないように。糖は、米、パン、麺、果物、ビール、日本酒。あっ、スポーツドリンクもね。」

 先生は、わたしが「どうしてですか」ときくと、丁寧にメモしながら、解説してくださった。空腹で糖を摂ると、アドレナリンが一気に増える。一気に増えるということは、一気に下がることでもあるそうで、身体の負担になるらしい。

 わたしは、すっかりうれしくなった。この先生の元になら通えるぞ!早速、1週間後に予約入れた。次回は、血液検査と尿検査もする。朝ごはんを抜いてこなくちゃ。

 うちに帰って、早速、漢方薬2種類を、一緒に熱湯に溶かした。中国ドラマや韓国ドラマに出てくる煎じ薬みたい。ちょっと、憧れていたから、テンションが上がる。匂いを嗅いで、ちょっとずつ、飲む。うん。飲みやすい。香ばしいし、そんなに苦味は感じない。これなら、続けられそう。飲み忘れても、その日のうちなら、気づいたときに飲めばいいから、気楽だ。

 そうして、1週間が経った。次の診察のとき、わたしは体調がよくなかった。漢方薬は、きちんと飲んでいるし、食事にも気をつけている。ただ、病院通いと同時にスタートしたカウンセリングで、さみしさや悔しさでメンタルがボロボロになっていた。そうなると、わたしは体もつられて、調子を崩す。

 落ち込み気味になり、眠くて仕方がないし、ふとしたことで、感情的になり、涙が止まらない。今のお薬、続けていいのだろうか。わたしに合っていないんじゃないだろうかと、疑り深くもなっていた。先生に、思い切ってすべて話した。

 先生は、そういう状況なら、なおさら、この漢方薬を続けた方がいいとおっしゃる。他に食事療法で、海塩や岩塩を取ること、乳製品を取らないこと。海藻をよく食べること。これらは、マグネシウム補給になるそうだ。

 血液検査を受け、また予約を入れた。それ以後、牛乳を豆乳に、ヨーグルトを豆乳ヨーグルトに変えた。岩塩を料理に使うようになった。わかめやとろろ昆布を積極的に食べた。メンタルは、次第に落ち着き、それに伴って、身体も楽になっていった。

 この先生の診察は、この2回のみとなった。先生はガンの治療中で、この後すぐ、体の調子が悪くなり、クリニックをお休みされることになったためだ。こうして、わたしは、この先生に紹介いただいた、別の病院に転院することになる。

 3ヶ月後の9月、先生はお亡くなりになった。今、通っている病院の先生が、微笑みながら教えてくださった。

 「先生、白衣でいかれましたよ。きっと、あちらでもたくさんの方を診てみえるんでしょうね。」

 あの強い眼差しを思い出し、本当にそうだろうなと、素直に思った。2回だけだったが、あの先生にお会いできて、本当によかったと思う。先生、ありがとうございます。

 続きます。





※漢方薬は、ご自分で判断されず、病院に通い、医師からの処方していただくよう、強くお勧めします。わたしの処方は、あくまで、わたしだから、です。ご参考程度にお願いします。

この記事が参加している募集

忘れられない先生

この経験に学べ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?