見出し画像

[SFC]もう"捨て科目"戦略は最善じゃない

私の通っていたSFC (慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)では授業を履修する際に授業履修人数を授業を行いやすいように適正にするため履修選抜を行います。その中には授業の履修権を抽選で決めるものも多くありました。しかし抽選にすると誰かがとことん当たらないこともあり、それが問題としてあげられていました。
"通りたい度"とはその問題を解決するために導入された制度です。2017年9月8日20:45にその内容が急に公開されました。履修選抜の締切が9月18日17:30と10日もない中で私がどんなことを考えて何をしたのかを記録として残すとともに、今後履修制度をどのようにしていくべきなのかを考える一助となれば幸いです。


0, 自己紹介

はじめまして、tantanと申します。
私は2014年4月に環境情報学部に入学して2018年3月に卒業し、現在は会社員として都内に勤めてます。
今でも大学の時のtwitterが辞められずまだ居座っている老害です。
大学2年の頃から湘南台駅−SFCを走るバスの待ち列に興味を持ち卒論でもそれを調査していました。

これから読み進めていく上で大事な情報は
「私が"捨て科目"戦略を考えて普及させました。」
ということです。
それが実現できた背景として
・私が2017年9月時点でSFC生に向けた拡散力のあるtwitterのアカウントを持つ人間だったこと
・私が2017年9月時点で研究会と卒業プロジェクト2の単位を取得すれば卒業要件を満たす状態であり、"通りたい度"を利用した抽選の授業を取る気が全くなかったこと
・"通りたい度"という制度が公表されて抽選結果が出るまで暇で、その時間を最大限"通りたい度"について考えられたこと
・2017年9月時点で私以外に上の3つの条件を満たす人間はいないと私が考えていたこと
などが挙げられます。私の言動について疑問がでたら、これらの背景から自分がおかれている状況との違いをまず把握してください。

0.5 履修者選抜制度の歴史

~2013年 ショッピングウィークこの制度は授業1週目に直接授業に行き、そこで選抜が行われる制度でした。先生との相性や授業のレベル感を知ってから履修に応募できてとても素晴らしい制度だったようです。1コマに複数の受けたい授業がある人は授業中に複数の授業を見に行きより受けたい授業の履修に応募できたようです。SFC CLIPを見る限り2005年にはショッピングウィークが定着していたようです。https://sfcclip.net/2005/09/2522/

2014年春 授業前履修選抜の導入と履修抽選開始
2014年春からショッピングウィークがなくなりました。
その理由は以下の通りです。
・4学期制の授業の導入
・文部科学省から単位の実質化を求められて必ず14週授業をしなければならなくなった

また履修選抜に抽選が導入されたのもこの年でした。
履修選抜はどの授業も独立した抽選が行われるため、極端に履修できない人が出てくることがわかりました。そこで極端に履修できない人を産まないためのシステムが求められていました。

2017年秋 "通りたい度" 突然の導入
そこで出て来たのが"通りたい度"でした。

"通りたい度"に求められる要件は以下のようなものです。
・抽選の授業において履修不合格ばかり出る人を出さないこと(本来の目的)
・抽選の部分以外の計算処理の方法をあらかじめ明示しておくこと
・極端に難解な制度でないこと

これらについては導入された制度でも達成できていますね。極端に難解なのかは感覚論ですが、当時の高校の数学1までで履修する範囲で理解できるため許容される範囲でしょう。


ここからは私の憶測を元に記事を書いています。事実誤認などがあれば訂正などする可能性があります。SFCの卒論などでも通りたい度について書かれているものがあるのでぜひ読んで分析してください。


1, "通りたい度"とは

まずは2017年9月16日(2017年秋学期の一斉締切の2日前)に初版を公開した当時の記事を見て概要を掴んでください。

0、この記事の発端
1、SFCの履修選抜の基礎
2、"通りたい度"とその戦略
だけ読んでいただければとおもいます。

時系列でまとめると以下のような感じです。

2017年9月1日 通りたい度(仮)がSFCClipで紹介される

9月8日 20:30 通りたい度発表

9月10日 tantanが通りたい度について取りくむことにした
9月11日 tantanが全授業を仮登録ページに登録して各種授業数をグラフにして表示
9月11~13日 tantanは特別研究プロジェクトに参加
9月14日 tantanが通りたい度図解1枚目をtwitterで公開→間違い指摘殺到
9月15日 tantanが通りたい度図解1訂版,2訂版,戦略編をtwitterで公開
9月16日 noteと通りたい度ジェネレータ(GoogleSpreadsheet)の公開、Facebookグループ"SFCnow!"にも書きこむ
9月16日 13:49 履修選抜についての授業を行うことが教授から公表される。
9月18日 17:30 履修締切。ただし16:30頃からアクセス殺到してサーバーが落ちたため翌朝10時まで締切が延長される
9月19日 10:00 履修締切。

2、捨て科目戦略を考える

通りたい度について言えることは個人最適の戦略は以下の2点です。
・なるべく個人の期待値を高くして稼いでおく
・稼いだ期待値を受けたい授業に集中的に割り振る
(ただしペナルティはあるかもしれない)

”捨て科目”戦略は上の2点を実践したものです。

以下の例を元に考えてみましょう。

全員が"捨て科目"戦略を使わなかった場合

2つの抽選の授業 A(定員5) 、B(定員1)の授業があります
それぞれ5人ずつ別々に履修希望者がいます。Aの授業は"あ,い,う,え,お"が履修希望で、Bの授業は"か,き,く,け,こ"が履修希望です。
図にすると以下の通りで、Aの授業は履修希望者全員通り、Bの授業はそれぞれ1/5の確率で通ることになります。

画像1

次に "こ" だけ"捨て科目"戦略をとったとします。
すると "こ" はBの授業は53.7%の確率で授業が取れることになります。そのかわりAの授業の履修許可が降りてしまう可能性が多少あります。

画像2

"け" も"捨て科目"戦略をとったとすると"け,こ" はBの授業は36.6%の確率で授業が取れることになります。そのかわりAの授業の履修許可が降りてしまう可能性が多少あります。

画像3

"く" も"捨て科目"戦略をとりました。

画像4

"き" も"捨て科目"戦略をとりました。

画像5

”か” も"捨て科目"戦略をとりました。

画像6

ここでわかることは以下の通りです。
・"捨て科目"戦略を取る人が少なければ少ないほど"捨て科目"戦略をとる効能が高い
・Bを履修したい人全員が"捨て科目"戦略をとると確率は一定になる。ただしAの授業のみ履修許可されてしまう可能性も考えると全員が"捨て科目"戦略をとらないより個人として不利になる。

※個々人の履修したい授業はそれぞれ異なることを考慮するとまた別の結果が出ることも想定されますが、私はそれを説明できないので誰か説明してください。

2.5, バス列に例えると

捨て科目戦略は自分が良ければ他がどうなっても知らない戦略です。全体最適ではなく個別最適といえるでしょう。(最適と言えないパターンもあるでしょうが割愛します。)
例えるなら
300人の学生が湘南台駅からSFCに向かうためにバスに乗ろうとする時、
「どんな手でも使ってでもすぐに乗ってやろうとしている状態です。」
全体に対してそういう人がごく少数なら列に割り込んで乗車すればいいのです。よくツイッターでも"バスを待っている友達のところに割り込んで並ぶ人"への不満は散見されます。
しかしその数がどんどん増えていくと、バスの前後左右からいかなる手を使ってでも乗車しようとする状態になります。並んでもその他全員に割り込みされるなら並ぶ意味がありません。待ち列なんてものはなくなりいかなる方法を使ってでもバスに乗り込む(SFCまで向かう)でしょう。。
"通りたい度"がある程度普及したの皆さんは、バスを壊す(サーバーを破壊する)程度ではないですが秩序がほとんど保たれてない状態です

ただし捨て科目戦略とバスの乗車で大きく違うポイントは"自分以外の学生がどのような戦略をとってるのか分からない"という点です。バスなら乗車している様子が見えますが、個人の履修希望状況は他の学生は確認できないため顕在化してません。
「捨て科目戦略を取るなんて非国民だ」と口では言いながら捨て科目戦略をとることも可能ということです。

3, 私が"捨て科目"戦略を拡散させた理由

ここで1つ疑問があるはずです。なぜ"捨て科目"戦略を普及させたかです。
私は冒頭で「私が"捨て科目"戦略を考えて普及させました。」と書きました。
"捨て科目"戦略を思いついたのならば自分だけその戦略をとり自分だけ多数の授業の履修許可を取れば良いはずです。みんなが実行してはその効果がだんだんと無くなってしまうし、逆効果になります。

twitterで観測していると"捨て科目"戦略のようなものは同時多発的に思いついてました。私を含めて3人はいました。
そのうちの1人は"私に頼めば履修抽選をできる限り突破させることができます"として仲間を集めて"捨て科目"戦略を実施した模様です。その結果かなり高い勝率だったようです。その人はなぜ「私が"捨て科目"戦略を普及させるのか。バカなんじゃないのか(大意)」と不満を漏らしていました。
もう1人はTwitter以外のところで何かしているようでした。おそらくLINEなどのクローズドなコミュニケーションツールで友達とやりとりしてたのでしょう。

それなのになぜ私はTwitterやnoteで"捨て科目"戦略を広めたのでしょうか?

それは「"通りたい度"という制度自体が間違っていると考えている」からです。
個別最適な戦略はその方法を知った以上やらない手はありません。みんなが"捨て科目"戦略という個別最適な戦略をとらせて"通りたい度"に対する学生の不満を強めて、"通りたい度"というバカバカしいルールを廃止に追い込む。そのための第一歩と考えていました。また"4,捨て科目戦略が普及してなかったら"に書きましたが、”捨て科目”戦略を最初に普及させなければならないと考えているからです。

じゃあ廃止してどうしたいか。私は履修抽選が廃止されればいいと考えています。通りたい度はSFCの履修選抜のある科目のうち抽選で履修者を決めている科目のみで実施されています。履修抽選を廃止し履修選抜には全て選抜課題を課すようにすればこのような煩わしい制度を運用せずに済むのです。履修抽選は教授の都合ではなく学生の都合で導入されたものと話す教授もいます。

教授陣も一部でしか"通りたい度"という制度の導入が知らされていなかったですし、一部の教授は"通りたい度"の制度に疑問を持っていました。また2017年秋の木曜2限にデータビジネス創造Bという授業で"通りたい度"について個人情報を取り除いたデータを用いてルール変更等の制度検討する授業も行われました。そのため"通りたい度"は1年以内になくなるだろうと算段していました。しかし2019年春もこの制度がほとんどルール変更なく継続しているようです。

4,捨て科目戦略が普及してなかったら

SFC生はモラル意識の高い集団です。

例えばバス列を例にすると300人程度一度に並ぶ他の大学では4月だけであっても必ず列を整備する人がいます。しかしSFCでは4月に列を整備する人がいなくてもきちんと並ぶことができます。日本の平均レベルからすると相当にモラル意識の高い集団です。

そんな集団がモラルのかけらもない"捨て科目"戦略を自分だけ使ったらどうなるでしょうか?バス待ちの例にもあげた通り、"バスを待っている友達のところに割り込んで並ぶ人"への不満をツイッターにあげるでしょう。この状態は["捨て科目"戦略をとった学生]vs[その戦略をとらなかった学生]という学生同士で潰し合う構図となります。 ルールを作る人からするとルールの不備を"モラル"という言葉で学生に押し付けられる非常に安定した状態となります。

だから私は最初の学期のうちに[モラルある学生]vs[モラルない学生]の構図にならないようにしました。あくまで[ルール設計者(一部教授)]vs[その他(学生や教授)]としなければその次の改善が行われないからです。

5, 通りたい度の次の戦略

まず個人としての戦略です。このルールに則る場合どのようにすればいいのかを考えます。
①通りたい度の扱いがある科目を履修しない。
通りたい度はSFCの履修選抜のある科目のうち抽選で履修者を決めている科目のみで実施されています。それらの科目を取らなければ通りたい度と関わらずに済みます。他学部の科目も60単位ほど卒業要件に組み込めるため、日吉や三田で授業を受けても良いでしょう。

②捨て科目戦略にせずに履修登録を行う
あまりオススメしません。

③捨て科目戦略で履修登録を行う
捨て科目戦略を全員が行うと本当に履修したい人が合格することが少なくなります。ただしそうなると授業をする側も履修人数を集めるため追加の履修許可を出す授業も多く出てきます。この状態は1週目の授業を見て授業を決められる科目が存在している状態において2013年まで行われていたショッピングウィークと一緒です。履修者の多大な労力をかけてもこれを実現すべきなのかはわかりませんが…

次にSFCにいるあなたにおこなってほしいことです。
④改良案を提案する。
SFCは良くも悪くも学生の声をよく反映して、新しい制度を果敢に導入しています。あなたが提案をすれば教授などもきっとその内容に興味を持ってくれるでしょう。それが良い提案であれば制度として導入されるはずです。私は抽選制度をなくせば良い話と考えていますが、皆さんは違うかもしれません。1コマに2つ以上の履修選抜を出せたら何らかの問題が解決するかもしれませんし、もっとほかの方法があるかもしれません。「もう"捨て科目"戦略は最善じゃない。」その次の制度を作ってくれると私も嬉しいです。

6, 最後に

2011年にSFCにいた先輩がまだ遺してくれているサイトに言いたいことがまとまっていたのでそれを抜粋します。

"私がひとつ心配していることは、将来のSFC生から自分たちの大学生活を少しでも良いものにするためにものづくりをするという発想が失われ、与えられたものをそのまま受け入れるようになっていくのではないかということです。[中略]現在SFCにいるみなさま、そして将来SFC生となるみなさまには、その根底にあるSFCらしい空気を引き継いでいってほしいと思っています。「問題発見・問題解決」は、決して学習や研究といったフィールドに限定されたスローガンではないはずです。"

履修選抜.死ぬ.jp より抜粋


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?