元英語講師

元英語講師

元英語講師

元英語講師

最近の記事

何のために生きるのか

「自分は何のために生きているのだろう」 日々忙しさに追われている中で、ふとした瞬間、そういう疑問が頭に浮かんで、強い虚無感に覆われてしまう。 例えば、静まり返った夜だとか、通勤電車の車窓から、遠くの景色をぼーっと眺めている時だとか。 そういう何でもない時間のすき間から虚無はやってくる。 今年で27歳になる。 年齢を重ねるたび、1年という時間が何の重みもなく、一瞬で過ぎていくように感じる。 季節の変わり目に春の匂いがすると、今でも大学に入学した時のことをよく思

    • 花火大会で迷子になった話

      先日、高校時代の友人5,6人で花火大会に行ってきた。関西屈指の大きな花火大会だ。 河川敷に到着した頃に、レジャーシートを忘れたと1人が言い出した。シートの代わりの袋でもスーパーで調達してこようと、自分が名乗りを上げた。最大の善意のつもりだった。 人が大量に流れ込んでくる河川敷を逆行して20分程歩いてスーパーで袋を調達し、ついでにアイスや揚げ物なども買った。みんなを喜ばせたかった。 スーパーを出ると、外はもう暗かった。警察が規制線を張り、ものすごい人ごみで溢れかえっていた

      • 読書感想文②〜夏目漱石『こころ』を読んで〜

        「私は死ぬ前にたった一人で好(い)いから、他(ひと)を信用して死にたいと思っている。あなたはそのたった一人になれますか。なってくれますか。」 「先生」が「私」に放ったこの言葉が鋭い矢のように自分の胸に刺さった。 自分自身、よく悩んできた。どれほど高尚な理想を掲げていても、現実とはいつも距離がある。どれほど人間の利他精神に心を打たれ、そんな風に生きて、死んでいきたいと切に願っても、気付けば自分のことばかり考えている。結局、自身の「エゴイズム」からは逃れられない。そう思い知ら

        • 読書感想文①〜村山由佳さん『星々の舟』を読んで〜

          なぜこんなに夢中でページをめくってしまうのだろう。 村山さんの作品は、これでもかというほど人間の弱さや脆さを抉りだす。 人間とは、どこまでも救いようのない、どうしようもない存在である。 理屈では間違っていると思いながらも、何度も過ちを繰り返す。裏切られるとわかっていても、人を好きになる。人を傷つけ、人に傷つけられる。してはならないと知りながら、してしまう。そうして自分でやっておきながら、何度でも打ちひしがれる。人間とはそういう生き物だ。なんと非合理的なことか。 それは

        何のために生きるのか

          お気に入りの場所

          お気に入りの場所がある。 山側から流れてくる川の支流のまた支流にあたる、ほんの小さな小さな小川のほとりだ。 6月の夜明け前は、毎日決まって4時半頃に小鳥が第一声をあげる。 その小さなさえずりが他のそれと重奏して、もう少し大きな鳴き声に変わる頃、外がうっすら青みを帯び始める。 それを確認してから、手際よくコーヒーを淹れ、読みかけの文庫本を手に、川のほとりへ向かう。 外は静まり返っていて、鳥の鳴き声以外何も聞こえない。 小川の川べりにある、幾重にも枝を伸ばした木の

          お気に入りの場所

          生きるって何なんだろう

          「生きるって何なんだろう」 最近、この大きな問いにぶち当たっている。 僕は今、どこかの会社に属しているわけでもなければ、結婚相手もいないし、何か壮大な目標も、ない。 先日25歳になった。 周りはほとんど働いていて、社会人3年目を迎え、責任も生じてきたり、あるいは結婚という人生の節目をむかえる人も出てきた。 そんな中、「生きるって何なんだろう」なんて言っている自分が正直、とてつもなくダサく、恥ずかしいように思える。 「いい年して自分探しとかイタイよね」なんて言葉を耳に

          生きるって何なんだろう

          彼女の目

          約束していた駅の改札で、快活で底抜けた明るさで笑っているその女性は、高校時代の同級生だ。 「Kくん、めっちゃ久しぶり〜、元気してた〜?」 彼女の屈託のない笑顔は、高校1年の時から全く変わっていない。 10年経っても変わらないその笑顔はどこか僕をほっこりさせてくれる。 小柄で、目鼻立ちがはっきりしていて、美しく整った顔立ちの彼女は、高校時代からクラスの男子の注目を集める、人気の女の子だった。 栗色と金色の中間くらいに染められた髪の毛を肩のあたりの長さまで伸ばし、黒を基調

          東京訪問① 湘南の海という交差点で

          「今からどこに行くの、私もついて行っていい?」 ゲストハウスの寝室の狭い廊下で、すれ違いざまに英語で声をかけてきたのは中国からやってきた女の子だ。 大きな丸ぶちフレームのめがねをかけた彼女は、もう昼前だというのに、眠そうな目をこすりながら、裸足で突っ立っていた。 「ぜひ。海に行こうと思ってる。青い海に浮かぶ、江ノ島が見たくて。」 ひとりで潮風にあたりながら本でも読もうかと思っていたが、 そう答えながら、快く彼女の申し入れを受け入れた。 新宿で乗

          東京訪問① 湘南の海という交差点で

          The Smell of the Rain

          The sun mercilessly pours down its intense heat and dazzling light upon the earth even in December. Take a single step outwards, and a national symbol, Jeep readily catches your eyes. It runs off in front of you, emitting unwelcome exhaust

          The Smell of the Rain

          街の鼓動

          朝、街が動き出す。 一日の始まりを告げるようにさえずる小鳥たち。 腕時計を見ながら、せかせかと駅へ向かうサラリーマン。 カツカツと、アスファルトにヒールを打ち鳴らしながら歩く女性。 黄帽をかぶって、友達とはしゃぎながら学校へ向かう子供たち。 どっと交通量が増した大通りの両端で、積荷を下ろしている何台ものトラック。 ありとあらゆる"音"が重なり合い、朝の街に色をつけてゆく。 何重にも重なった音がおりなす、静寂を打ちやぶる生(せい)の鼓動。 ポケットに文庫本を入れて、大