僕はあることをきっかけに留学という人生の長旅に出た

留学という人生の長旅に出た理由は意外な出来事からだった。それは今から4年半くらい前の2014年の秋頃に話は遡る。

その頃ちょうど北海道の地元の大学に通い始めて半年過ぎが経ったころで、どうもこの先の明るい兆しが見えなくなり、ある種の違和感を感じ始めていた。そしてその年末には大学を辞めようと心に決めた。

もっと広い世界を若いうちに観て様々な経験をしたかったので、オーストラリアの大学を目指すことを決意した。


留学前の僕は留学どころかあまり国内旅行もしたことがなくて、周りからも海外に飛び出すような人には見えなかったのだろう。これはどちらかといえば僕が物静かな感じで周りから認識されていたのもあるだろう。ちなみに僕自身あまり英語が秀でていたわけでもなく、高校までの英語の成績も平均前後くらいだったので。

そのため当時の大学の友人たちからは、それはリスクがありすぎる無謀だからやめておけなどの言葉ばかりを耳にした。確かに彼らの言っていたことは異論なくもっともなことだったと思う。そもそもいきなり海外の大学を目指し始めると聞いて賛同してくれる人の方が希だろう。

しかし自分の中ではどこか根拠の見えない自信があった。つまりオーストラリアに行って1から英語を叩き込めばどこかの大学に入れるだろうと。

僕は生まれ持って1度決めたことはなかなか変えられない性格なので、その後大学に退学届けを出して、同時に留学の手続きを速やかに済ませた。その翌年、2015年の5月にオーストラリアのシドニーという都市に旅だった。シドニーでEFという語学学校に1年間通うことにした。


いざシドニーにつくと大学を目指すどころか、そもそもここに1年もいられるのかという底の目ない不安を感じた。けれどその後の運命を左右しただろうことがシドニーでの滞在先だ。

シドニーではホストファミリーというシステムを利用した。そこのお宅は当時60歳くらいのヤスミンというインド出身のホストマザーのみだった(子供はいたがみんな独立していたので一緒には住んでいなかった)。

僕はその当時片言の英語しか話せなかったが、ヤスミンは僕のペースに合わせていつも英語を話してくれた。以前に日本人の生徒を何人か家に受け持ったため、慣れていたのもあったそう。

そして食べ物も自分の好みや栄養のバランスもしっかり考慮してくれたので、食生活の心配もすることせずに自分の目標に専念できた。

けれど学校では思っていた通りで、他の国の生徒とコミュニケーションを取ることには苦労した。ただこれはある程度予測できていたことだったので、最初の頃は特にひたすら1日の間に多くのことを吸収することに努めた。

そして留学から約3ヶ月後にある重要な出来事が起こった。その頃はどこの大学に行けば良いのかわからない状態だったので、家でオーストラリアの大学をインターネットで検索していたときのこと。

それはオーストラリアのタウンビルという都市にあるジェイムズクック大学(JCU)のオープンキャンパスの記事のものだった。なぜか不思議とこの記事に強く惹きつけられる思いを感じた。JCUはシドニーにある大学とは異なり静かな環境にあり、ここなら勉強に集中出来そうだと思い実際に観に行くことにした。

タウンズビルに着くとそこはシドニーとはまるっきり異なり、人も少なくてのどかなところだった。その翌日に実際にJCUのオープンキャンパスに足を運んでみたが、その1日は楽しいというよりは良い意味で大変だった。

JCUのいくつかの学部のパンフレットや学校のツアーに参加できて、大学の環境や雰囲気を感じられたのは良かった。しかし問題は自分からスタッフや生徒に話しかけられなかったのだ。

これは留学してから3ヶ月ほどしか経っていなく、僕の英語がまだまだネイティブたちとコミュニケーションをとるのに十分でなかったからだ。つまり海外大学のスタッフと英語でやり取りをするのはハードルが高すぎたのだ。

けれどその1日でJCUのスタッフたちとのやり取りでもっともポジティブに感じたことは、英語がうまく話せない自分に対しても丁寧に合わせて話してくれたことだ。その体験からこの大学に入れれば良いサポートがもらえて、何とかやっていけるのではという少しの希望と期待が感じられた。

かなり不安ではあったものの初めて自分ひとりで海外の様々な都市に足を踏み込めたため、達成感とひとり旅の楽しさを感じられた。

このタウンズビルの遠征後は、自分の中でより大学入学に対するモチベーションが上がったのを感じた。実際に行動してみる大切さはここから学べて今でもそれは生きている。

もちろんその後のシドニーの8ヶ月は単調に物事は運ばず、何度も上手くいかない時期を経験した。けれどどこかでそのJCUの体験が良いモチベーションとなり、結果が出ない時期も途中でくじけることはなかった。

そして最初の留学から約1年後にようやくJCUから入学のオファーをもらうことができた。これを振り返るとオーストラリアでの経験値が少しづつ積もっていきそれがこのように形として現れたのだと思う。これ点と点が繋がっていくイメージに近い。


この旅を通して主に2つの学びがある。

1つ目はこの1年のシドニー留学を通じて実際に行動してみることの大切さが感じられたことで、これは単に英語力の伸びよりも遥かに大切な糧となった。

そして2つ目は客観的に日本を見れるようになってきたこと。これは日本を長期的に離れて異国に住み、自分にはない価値観の人たちと触れ合うことにより初めて感じられるものだと思う。自分の生まれ育った国は当たり前になりすぎているため、見えない点が多いはず。


そして現在の僕はJCUの3年生で心理学を専攻している。あの何気なく目にしたJCUの記事がきっかけで今この大学にいると思うとどこか不思議な縁を感じる。

初めに述べた人生の長旅は留学という形に留まらず、きっと別の形で今後も続いていく。まだまだこの地球では足を踏み入れたことがないところがほとんどだし、今の自分の知っている世界はあまりにも狭い。

それなので僕の人生において旅をすることは必要不可欠なことだ。


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