むう

人体模型と昆虫と本と音楽と舞台を愛する髑髏。松尾スズキと大人計画が好き。書いたり、読ん…

むう

人体模型と昆虫と本と音楽と舞台を愛する髑髏。松尾スズキと大人計画が好き。書いたり、読んだりします。ショートショートマガジン「ベリショーズ」編集。そるとばたあ@ことばの遊び人のファンクラブ会長&マネ

最近の記事

ヘルプ商店街2

「ヘルプ商店街?」 私はフリーのライター。『日本の秘境』という本の取材で全国を回っている。 「そこが秘境なのか?」 「はい。『秘境が大変』って編集室に電話があったんですよ」 「へぇ」 「ヘルプって叫んで電話が切れて」 「怖いな」 私は少しワクワクしていた。秘境の取材を始めたはいいが、既出の場所ばかりでガッカリしていたのだ。しかしヘルプ商店街は聞いたことがない。編集者と共にヘルプ商店街に向かった。 「かなり山奥なんだな」 「あれが目印らしいです」 仏像だろうか。人型の大きな像が

    • ヘルプ商店街

      「こんばんは!ヘルプ商店街のヘルパーです。何かお困りでしょうか!」 ドア開けると柔和な顔つきの男が立っていた。 「実は妻を殺してしまってね。なんとか助けて欲しいんだ」 「あー奥さんを生き返らすとかですか?」 「そんなこともできるのか?」 「できませんよ、そんなこと。死体を処理して欲しいということなら承ります」 「そう、それ!それを頼みたかったんだ」 「じゃ、ちょっと時間かかりますけど細かくして流してきますね。お風呂場お借りしまーす」 それから数時間。 「終わりましたー」 ヘル

      • 穴の中の君に贈る

        僕には、何かを穴が開くほど見つめていると本当に穴を開けてしまうという特殊な能力がある。仕事に穴をあけたり、工事したばかりの道路に穴をあけたり、迷惑をかけたこともあった。それで僕はこの能力を生かした仕事を探した。ドーナツに美味しい穴をあける仕事、ゴミを捨てる深い穴をあける仕事。ぴったり収まるネジ穴をあける仕事。 そんな僕に恋人ができた。彼女を穴があくほど見つめたかったけど、我慢した。 「なんで私を見てくれないの?」「だって君に穴があいてしまうよ」「じゃあちょっとずつ見ればいいの

        • 男子宝石

          「フラれた。彼女の理想の『男子宝石』になれなかった」 「なに?男子宝石って」 「美しく、希少性があり、硬い」 「だからエステ行ってたんだ」 「美しくなっただろ」 「うーん」 「希少性もある」 「どこが」 「まず名前が、自毛自毛股間のすりこぎ 会長の水餃子うな餃子ふぐ餃子 食う寝る所さんすまないね 破れコウジのブラホック ハッパハッパハッパの収監大問題 大問題のポップコーンのポンポン痛いの長州力んでチョー透け」 「長いよ。長介だと思ってた」 「それあだ名。あとな」 「なんだよシ

        ヘルプ商店街2

          音声燻製

          「パパはなんで声が高いの?」 娘も小学生になりとうとう俺のハイトーンボイスに気付いてしまった。変声期がなく高い声がコンプレックスだった俺は、深い味わいのある声に燻してくれるという伝説の音声燻製師を探していた。 その日は曇天で町中に霧が立ち込めていた。私は仕事のため駅に向かっていた。 「煙霧だ。音声燻製師が来ているからしばらく電車は動かないよ」 音声燻製師だって? 「どこに?」 「さぁな霧の生まれるところだろう」 煙霧を辿ると白い煙のむこうに人影が。 「あんたかワシを探している

          音声燻製

          告白雨雲2

          「雷子ちゃん、好きだ」 「太陽くん!」 いつも笑顔で温かく包んでくれる太陽くん。直射する告白が眩しい。 「太陽!抜け駆けすんなよ」 「北風くん!」 「雷子、太陽なんかより俺と付き合えよ」 強引な北風くん。一見冷たいようだけど、山火事を起こすほどの熱い情熱があるの。 「ちょ待てよ」 「旅人くん!」 太陽くんと北風くんに服を脱がされていつもマッパの旅人くん。 「僕は下着も下心も隠さない!好きだ」 潔さが長所だけど、風来坊の彼は一つところにとどまらない人。 「ずっと暖めてあげる」

          告白雨雲2

          告白雨雲

          雨男ならぬ雨雲男。 彼が現れるとなぜか急に空が暗くなる。 花を背負ったキャラクターは華やかだけど、雨雲を背負った男はなんとなくしっとりした色気があると思う。 「こいつ僕のペットなんだ」 彼がそう告白したのは3度目のデートの時のことだった。 雨雲連れの彼とは外でのデートより室内が良いと思い、家に呼んだのだ。 「雲ちゃん」 彼は雨雲を呼んで 「待て」 と言った。 雨雲はワンとは言わなかったけどおとなしく家の上で待っていた。 「迷子の雨雲をね。拾ったんだよ。僕が小学生の時。綿飴かな

          告白雨雲

          棒アイドル

          僕の推しは棒の素晴らしさを世の中に広めるアイドル、ボボ棒棒棒子ちゃん。 「来てくれてありがとう!棒子だよー!犬も歩けば?」 『棒に当たる!』 「叩くときは?」 『棍棒!』 「お巡りが叩くのは?」 『警棒!』 「麺を叩くのは?」 『麺棒!』 「ぼうっとしてる君もぼうずの君もぼん才の君もぼうりょく的な君もみ〜んな大好きボウイだよ!」 『棒子最高!』 「今日も棒子デザインの棒グッズ買ってね!今回は棒子が街で拾った木の棒も販売!棒越しの握手券付きだよ!」 『ぼウォー』 興奮して棒を振

          棒アイドル

          ジュリエット釣り2

          歌舞伎町のキャラバクラ「釣場」に外来女のジュリエットが現れ、強い引き寄せパワーで瞬く間にNo. 1なった。ジュリエットは食欲旺盛で男を食いまくり、繁殖能力も凄まじく、一夜にして子をなした。産まれた子はジュリエットにそっくり。一週間で成人し数を増やし、男たちは磯磯とジュリエットのキャッチ&リリースを繰り返した。在来女は袖にされ、ジュリエット人気で「釣場」は全国展開。 「このままでは在来女が絶滅する」危機感をもった政府はジュリエットの駆除を計画。ジュリエットと出会うと心中するとい

          ジュリエット釣り2

          ジュリエット釣り

          「ジュリエットはどこだ?」 「バカなロミオよ。彼女は死んで地獄へ落ちたぞ」 「バカな!」 「仮死状態になる薬と間違えて毒を飲んだ。自殺は罪だからな」 「お前は誰だ?」 「さて悪魔か神か」 「なんだと?」 「そんなにジュリエットが恋しいなら会える方法がないこともない」 「どうすれば?」 「地獄に糸を垂らして釣りをするのだ。お前の魂を餌にジュリエットを釣るのだ。本当に愛してるならすぐさまお前の魂に反応するはず。無事魂を釣り上げられれば二人共晴れて現世に戻れるだろう。だがジュリエッ

          ジュリエット釣り

          しゃべる画像

          東京で一人暮らしをするという娘に「喋る見守り画像」を渡した。 「これに毎日声をかけると離れた場所からでも安否が確認出来るのだよ」 最初、等身大の私の画像を娘は嫌がっていたが、うるさく連絡されたり急に訪ねて来られるよりはと思ったのだろう。部屋に飾ってくれた。 「おはよう」娘は毎日私の画像に挨拶をする。「おはよう」私は挨拶を返す。 そう!喋る見守り画像など真っ赤な嘘!私は娘が心配な余り画像のふりをして娘の部屋に潜伏し見守ることにしたのだ!食事やシャワーは娘が昼間大学に行っている

          しゃべる画像

          日本ダイエット

          「召集令状でございます。オーバーでございます」 渡されたのは赤身紙。食糧危機に備え、規定以上に太っているものに対して強制的にダイエットを行わせることができる日本ダイエット法が施行された。赤身紙を受け取った者は日本ダイエット道場行きだ。拒否すれば刑務所入り。 「行ってくるよ…」 「お父さん、これ」 愛妻が高カロリーの肉巻きおにぎりを差し出す。断食前の晩餐。 道場の受付の女性はやたらハイテンションだった。 「ベーシックな断食コース、お年寄りにおすすめの即神仏コース、人気の食べ放牧

          日本ダイエット

          株式会社のおと

          「なんでうちの社員は集中力がないんだ!ボンクラか!?おい!!」 「社長。それにつきましては開発中の『株式会社のおと』という機器が効果があるかと。まだ試作品ですが」 常務が豆腐のようなスポンジのような物体を取り出した。 「ああ?なんだ!」 「これは会社の音を吸収する機器です。ノイズや騒音は脳に余計な負担をかけるだけではなく、ストレスホルモンを分泌し、血圧と血糖値をあげるそうです」 「あー?ストレスゥーー?!」 「はい。この株式会社のおとで音を吸収し静寂をもたらすことで、ストレス

          株式会社のおと

          チャリンチャリン太郎

          うちの両親は仲が良い。でも別居してる。 「カッコよかったのよ。颯爽と現れて」 母さんはいつも父さんと初めて出会った時の話を惚気る。 「蹴躓いて転んでたら後ろからチャリンチャリンと音がして、自転車に乗った男が近づいてきたの」 『怪我してるじゃねぇか。乗っていきな』 『自転車の二人乗りは法律違反だわ』 『大丈夫。俺は自転車一体型人間、チャリンチャリン太郎だから』 そうして母は父に跨り、私が生まれた。 父は自転車一体型男なのでマンションの駐輪場で暮らしている。この距離感が仲良しでい

          チャリンチャリン太郎

          チャリンチャリン太郎

          チャリンチャリン。 小銭が心地よいメロディを奏でる。 チャリンチャリン太郎は、小銭の硬貨音で人気上昇中のチャリン奏者だ。 ギャラは小銭しか受け取らないとか、小銭を渡すと演奏してくれるとか、あげく、太郎の家に小銭を投げると幸せになるらしいとか、さまざまな噂が囁かれ、太郎の家の前には賽銭のための行列が出来るように。 何もしなくてもチャリンチャリンと金が貯まるチャリンチャリン太郎は、小銭で大富豪になった男としてもすっかり有名になった。 「もうチャリンチャリンの時代じゃない。次はパチ

          チャリンチャリン太郎

          #かとうひろみ真似まつり

          ・なんの夢も見ない。 ・暑くて明け方何回も目が覚める。クーラーを付けたいけど起き上がりたくない。眠てるのか寝てないのかわからないままもう10時。寝てた。 ・朝ごはん。冷や汁。冷たいご飯にかけるのかと思ったら温かいご飯だった。キュウリと茗荷をのせる。みそ味。ご飯が温かいから全体に生ぬるい。冷たいご飯にすれば良かった。次はそうする。最近朝ごはん抜きだったけど休みのぐらい食べよう。 ・昼 コーンパン。 ・微熱。何回も熱を測りたくなる。台本の修正。 ・夜 まだ食べてない。 ・映画も見

          #かとうひろみ真似まつり