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旧友の訃報

 大学で一緒にサークルを立ち上げた友人が亡くなった。仲間でよく飲んだし、旅行にも何度か出掛けた。卒業後もタイミングを見計らってその仲間で数度杯を重ねた仲だ。
熱烈な近鉄バファローズファンで、南海観光バスの添乗員のバイトをしていた(南海ホークスの選手の送迎もある仕事)ワタシを藤井寺球場に誘い、ゼミの指導助教授が担当する社会心理学の講義をサボって優勝が決まる試合観戦に行った。マニエルが打った球がスタンドに入り逆転ホームランとなった瞬間狂喜乱舞しているところをNHKTVニュースに抜かれ、後日皮肉を言われた。「でも、ええ試合やったですよ」と彼。「ボクはジャイアンツファンだから、そんなこと関係ないよ」なんて助教授から合っているのか間違っているのかわからない返しをもらったことが、昨日のように思われる。43年前のこと…

 6月のある日2時間目が休講になった。学校とバイトで忙しくしていたため、しばらく散髪に行ってなかった彼は、「ええ機会や。ちょっとサッパリしてくるわ」と仲間に言い、キャンパス近くに新装開店した理髪店へと足を向けた。椅子に座るやいなや開店したばかりで顧客がなく、時間をもてあましていた店主に「ニィちゃん、長髪やけど、顔イカツイからパンチ(パーマ)当てへんか」と言われ、「いやいいですわ」と断るも「ええからええから、任しとき。悪いようにはせぇへんし。1000円プラスでええわ」と押され、つい言われるがまま…「ニィちゃん、ソリ(ソリコミ)入れとくで」「やめてください」「ええからええから、悪いようにはせんから」「眉毛も半分剃っとくな」…もうこうなりゃ抵抗はできない。なんせ店主のカミソリが顔に当たっているのだから…
 
 昼休み。サークル仲間が集うキャンパス内のグリルに現れた彼は、それこそ別人。一同「テッちゃん、それどないしたんや!」1時間目「サッパリしてくるわ」と言って出かけて行ったテッちゃんとは別人の気の弱いヤンキー「テツ」となって戻ってきたのだった。そのルックスと店主とのやり取りの報告に、一同食事ができないほど笑うた、ワロタ。
その後このスタイルが気に入ったのか、彼は卒業までこのスタイルで通したのだった…
 近鉄バファローズの試合観戦、そして「90分でヤンキーに変身」が彼、テッちゃんとの忘れられない思い出だ。

※ちなみに彼の名前はテツヤとかテツオというように「テツ」の字は入っていない。サークル立ち上げ記念にミナミ(難波)のホルモン焼屋で注文する時の「テッチャン」という言い方が皆のツボに入り、それから全く本名とは関係ないテッちゃんと呼ばれるようになったという経緯が、ある。

さらばテッちゃん。さらば青春の1ページ。冥福を、祈る  祈る…

#旧友の死
#1980年
#近鉄バファローズ
#パンチパーマ

主にお笑いと音楽に関する、一回読み切りのコラム形式になります。時々いけばな作品も説明付きで掲載していくつもりです。気楽に訪ね、お読みいただければ幸いです。