あなたのいない問答集

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※自問自答集です。

Q、本を開いて読むことは、何の足しになるだろうか。腹もふくれぬ、耳は鳴る、ちっともわからぬ、悲しくはなる。
A、けれどお前が救われる。

Q、つらくなった時に思い浮かべる人は、僕が一番愛した人なのだろうか?苦しい時に思い浮かべる声は、僕が一番愛した声だろうか?
A、僕は母を愛さない。母の声は僕の声だ。僕は僕を愛さない。否定、否定。

Q、夢にまで見た復讐をし遂げたこの人生は、後に何を残しているだろう?
A、ここからが人生の始まりさ。金もなし夢もなし、しかし酒という友がある。

Q、あの人はどこにいったの。
A、私の頭の中の、スーパーの棚の上の、牛乳の袋の中の、パーキングの横の道の、杏の樹の根の裏。

Q、このかわいい女は誰?好きな人にさんざ振られて、メイク溶けちゃって、ほっぺたが赤くて。このかわいそうな女は誰?
A、私。かわいいのは私。かわいそうなのは鏡の中の女。

Q、私が私を愛すためにあと何が足りないかしら。
A、切れのわるいカッターナイフ。ハーゲンダッツのミニカップ。自分で作る野菜のポタージュ。なんでもいいから強い酒。

Q.あれ、そこに誰かいなかった?
A.君が話してる僕の他は、誰もいないよ、はじめから、終わりまで。ここが「独房」である限り。

Q.俺に口を出す奴はなんだ?片っ端から捕まえてきいてやりたい。何が分かるって言うんだ?いったいどこから見ているんだ?助けてくれるっていうのか?
A.じゃあお前は何だ?なんだ?なんだ?

Q.夢にあるモミの木を切り倒したからクリスマスはもう心配ないよね?僕の家に立派なツリーが立つよね?
A.モミの木に住んでいた鳥が君の目をつつきだすし、リスが君の内臓を掴みだす悪夢が待っているよ。

Q.誰かのことを愛すると言うのは誰かの事を殺すこととそう違わないのかもしれないね?
A.などと思ってしまった罪を一生隠すのが凡人の義務だよ。今までもそうしてきたように。

Q.朝起きて膝の上に何かが乗っていたら、どう思う?
A.猫以外すべて不可。そもそも朝起きて猫以外のことを考えたくない。ていうか起きない。二度寝します。

Q.こんなにあの人にさらけ出したのに、どうして愛しあえないの。あの人にも同じほどさらけ出させたのに。
A.あの人の骨には、まだあの女の肉が絡みついているからよ。剥がさなくちゃ。もっと芯まで。

Q.岡の上に生えている少女が今日私に言ったことを覚えてる?
A.もう忘れた。あんな破滅的なこと。だからまた明日聞きにいこう。

Q.あ、さっき通った人も僕と同じところに行くのかな?
A.そんなわけないよ。さっきの人のジャケットはきれいにブラシがかかっていたよ。僕とは違う。みじめなのは僕だけだ。

Q.あの人の愛が変わらないことを願ったとして、私が時と共に醜くなったら、私が私を愛せないわ。どうして願い事は一つなの。
A. お前の愛は叶わない、かなわないからだよ。

Q.薔薇に名前をつけるとしたら、どうつけよう。悲しい名前にしたくない。
A.夢見るような名前にしよう。そんな名前をつけるなら、香りが強い薔薇が良い。斑入りのはなびら、蒼白い棘の無い葉がいい。私の夢に咲くような。

Q.どうした、風のびょうびょう鳴る音が貴様の喉からしているし、枯れ草のチヨチヨ触れる音が歯の間からしているよ。なんでそんなに荒野に晒された骨のような音がするんだ。
A.それは俺がもうすぐ死ぬからさ。俺の肉が腐りかけて泣く音で、俺の骨が喜ぶ音なのさ。

Q.剣先のように尖ったおまへに切り裂かれる夢を見た!人殺し!
A.殺されるような夢を見るおまへが悪い!毎夜おまへの口から蟲が天にのぼっては告げ口をするようだよ!おまへの所業こそ人殺し!

Q.扉の向こうから羽音がする。なんだろう?こうもりがまぎれこんだのかな?わぁ!ノックまでしてくるぞ!
A.きっとこれは羽のようなインバネスをきた吸血鬼なんだぜ。ルームサービスを呼ぼうと思ったのに、朝になるまでこのドアは開けられなくなっちまった。

Q.歌のアタマのところが思い出せない。「トラスヴィン、トラスヴィン、みじめっこ」、この後はなんだっけ?
A.思い出した。こう続くんだ、「川を流れて海へ出た、トラスヴィン、くじらになって。泣きながら広い海。呼んでも誰もこたえない、トラスヴィン、トラスヴィン」。こんなにかなしい歌だっけな。

Q.映画館で暗くなっていくのを待つときに体がふわふわ浮いていくような気がする。あの感じをもっと前にも覚えたような……
A.もしかしたら、おかあさんのお腹のなかで、いま生まれようかな、どうしようかなって、浮かんでいる時だったのかも。

Q.自分からその人に話すのに、優しい目で「かわいそう」と言われると、どうして怒りが生まれるんだろう。
A.その怒りこそが、人間が苦境から立ち直る原動力だから。冬が来ると春が来ることくらい、あるべき姿だよ。

Q.たそがれのようなぼんやりとした中で出会った人に、もう一度会いたいの。どうしたらいいかな。
A.眠らなきゃ。夢でしか会えそうにない。それもはるか遠い夢でしか。私の足で行けるかな。薬を飲んだら、着けるかな。

Q.疲労度とか、ヤバイ度とか目に見えるようになったらいいのに。電車の座る順番とか病院の診察順、その数字で決めてほしい。そう思わない?
A.でも、それが本当になったら、今度はその数字が正しいのか疑って疑って、誰も信じられなくなるかも。それって寂しいね。

Q.ゆらぎの中を進む時、例えば或ることが正しいか、正しくないかってそんな揺らぎの中を歩くとき、私は一本の線の上を歩いていて、底を踏み外したらワニに食べられてしまうって。不安になる。私っておかしい?
A.昔からだったじゃん。横断歩道の黒いところにはワニがいるってさ。そういうとこ、昔から変わらないね。かわいいな、私。

Q.ちょっとした買い物から戻って鍵を置いたとき、重ねた服の間から逃げ損ねた冷たい風がぽふっと吹き出してくる、あの現象の名前。
A.「おかえり、寒かったね。」あるいは、「冬だね。ただいま」。

Q.鯖の煮つけってさ、なんか、ほこりみたいな味せん?魚で一番嫌いだわ。
A.それ、うちの煮つけだけだよ。外で食べればいいじゃん。いくらでも食べられるよね、働いてるんだし。何で食べないんだろ。矛盾してる。ごめんね鯖。来世は鯖になるね。

Q.このウィスキーを飲んだあと、まだ何か、できる足掻きがあるかなぁ。
A.空き瓶に手紙を入れようにも紙もペンもない。風もなけりゃ流木もない。空っぽのウィスキー瓶が何の役にたつだろう。それにちくしょう、ウィスキー一滴じゃ、幸せに酔いどれられもしねぇや。

Q.あの時の僕に罪の意識はなかったよ。そうでしょ?みんなそう思ってくれるでしょ?
A.誰をだませても、ぜったいボクだけは騙せない。兎の目には映っていた、あの時のボクの顔。ボクは絶対に忘れない。夢の底まで忘れられない。

Q.いつかは君のこと、許せるかな?許したいな。許せるのはいつだろう?
A.君を大切に大切に親友として守り続け、君のお葬式に真っ赤なドレスを着て棺桶にマッチを投げ入れるとき。やっと君を許せるでしょう。

Q.美しいのは夢ばかりで、この世の、分けても私の文字であらわせる美しさなど欠片も残されていないような気がする……
A.それはきっと気のせいじゃないわ。この世の美と狂気はケーキみたいにあまたの文豪に切り分けられてしまったようだから。

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