驚かせてしまい、攻撃を受ける

 昨日は午後から曇りで気温も比較的涼しかったから蚊が大量に湧いている庭の柿の木の周りを刈払い機できれいに刈ろうと思い立った。

 うちにはニワトリがいる。今は庭には2羽ではなく7羽ニワトリがいる。自宅とは別の場所に建てた鶏小屋にはもっとたくさん、数十羽いる。そっちのニワトリがケガをしたり他のニワトリにいじめられたりしたときに緊急避難させるためのケージがさっき書いた庭の柿の木の横に置いてあって、最近は使う機会がなくて放ったらかしだったから草や植物のつるにびっしりおおわれたひどい有様で、それも蚊が湧く一因になってるんだろうなと思っていた。刈払い機でざっと草を刈り、ケージにからみついたつるを剪定バサミで切ったり引きちぎったりしながら雨よけのために立てかけてあった波板を何気なくつかんではがした瞬間、からだのどこかにパチっと電気のようなものが走った。

 いたいっ、

 とまず声が出て、とっさに痛みの出どころを探そうとして視線を落としたら2、3匹のハチが見えて、あっ、と思ったら1匹は長袖シャツの右袖の中に入って来てしまい、もう1匹も右足の長靴の履き口あたりで肌を撫でているのが見えた。

 あわてた。あわてたけど下手に振り払おうとしたらますますハチを怒らせてしまうかもしれない。すでに腕と足の何か所かには刺されたっぽい痛みを感じていた。とにかく逃げないと。農具を投げ捨てて家の方へ走った。どこをどうしたのかまったく覚えていないけど、しばらくまとわりついて威嚇していたハチたちはわたしがからだをひねったり腕を振ったりしながら走っているうちに離れていってくれたようだった。まだ服や長靴の中に潜んでいたら家の中に連れて入ってしまうことになると思って玄関の前で長靴を脱ぎ捨てて足をぶんぶん振ったり首の後ろや袖口をぺしぺし叩いたりしてみたけど大丈夫そうだったから急いで家に飛び込んで、そこでやっとほっとした。

 少し落ち着いて見ると、あちこち痛い。右の手首と肘、右の腿とふくらはぎ、合わせて6か所も腫れていた。えらいこっちゃ。ぽつんと丸く変色した刺し口らしきものの周りにシャワーをあててじゃぶじゃぶ洗って、爪で肉をはさんでギュッと毒を絞り出す真似をしたけどたいして何も出てこなかった。針が残っているかもしれないからセロハンテープを貼ってバリッとはがしたりもした。

 動悸や吐き気などの異変もなさそうなので、私道の真ん中に置き去りにしてきた刈払い機と農具を片付けに外へ出た。刺されたところが服に触れるとピリ、ピリ、と痛くて、痛みが走るたびに首と頭の境目あたりがゾクゾクッ、とする。すでにからだは反応をはじめているのだなと思った。からだはすごいなぁなんて感心したりする余裕もあって、余裕のあるうちにしておいたほうがいいことを考えた。

 できるもんならやっつけておきたい外仕事もいくつかあったけど欲張るのはやめてまずは家の中に戻ってシャワーを浴び、きれいな服に着替えた。猫の餌を足し、米袋から3合半計ってきて精米機にかけ、研いで水加減をした。しゃがんで立ち上がるときに立ちくらみがするのであまり調子に乗らないほうが良さそうだと思った。連れ合いが猟師仲間からいただいた野菜がたくさんあったので洗って切って中華鍋で炒め、丼とホーロー容器に入れて蓋をした。このへんでだいぶしんどくなってきた。

 次の日までに洗わなくちゃならないものがあったからそれを洗濯機にかけたところでせがれが帰宅したのであとは任せて布団に寝転んだ。猫が寄ってきた。猫の布団を人間用マットレスにくっつけて並べて敷いたら、しばらく「そっちで寝たいんだけど」みたいな顔でマットレスを見てたけど自分の布団の上のバスタオルの上ですとん、と丸くなった。前にハチに刺されたとき診療所で処方してもらったリンデロンvg軟膏(の、ジェネリック)があったからそれを塗ってあとはダラッとしておいて、少し楽になったタイミングで夕飯を食べた。今日に限って養鶏の方で夕方以降の突発的作業がたくさんあって、普段わたしが動けるときなら分担できている作業まで全部ひとりでやることになってしまったのもあって連れ合いは暗くなってからもヘッドライトをつけてずっと庭で作業していたけど、22時頃になってやっと家の中に戻ってきた。早く眠ろうと思ったけど結局0時過ぎに布団に入った。


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