労働判例を読む#214

【学校法人南山学園(南山大学)事件】名古屋高裁R2.1.23判決(労判1224.98)
(2020.12.31初掲載)

 この事案は、大学教授の学内でのパワハラに関し、その調査を担当した教授Xが、秘密漏洩などを理由に雇用契約の更新を大学Yから拒絶された(定年後再雇用)ため、雇用契約の存在を主張し、争った事案です。

 2審も1審と同様、Xの主張を大筋で認めました。

1.実務上のポイント

 2審段階で、Y側が様々な主張を追加しました。すなわち、情報の取り扱いに関するY側の指示やルールがあった、などの主張です。

 これに対して2審は、Y側の主張1つ1つについて、比較的丁寧に検討・判断を加えています。特に、明確な文書などが無い場合でも、それまでの経緯や状況を踏まえた合理性の判断がされており、突き放した判断をしていない点が注目されます。

 さらに、2審ではその冒頭部分で検討した新たな論点が注目されます。

 それは、XY間の紛争は大学の自治に関するもので、裁判所が判断すべき問題ではない、というYの主張を裁判所が否定しているものです。裁判所は、契約上の地位の確認や賃金・損害賠償の請求等、「一般市民法秩序に直接の関係を有し、控訴人の単なる内部規律の問題にとどまらない」として、訴訟での判断対象になるとしています。

 近時、宗教団体や学校など、特殊な組織内部でのトラブルが訴訟で争われる裁判例を多く見かけるようになりましたが、そもそも裁判所が介入できることを明確に示したものとして、今後の参考になります。

※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。

※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?