見出し画像

労働判例を読む#451

【学校法人専修大学(無期転換)事件】(東京高判R4.7.6労判1273.19)

※ 司法試験考査委員(労働法)

 この事案は、専修大学Yの語学担当の非常勤講師Xが、有期契約での勤務が5年を超過したために無期転換を申し込んだところ、Yがこれを拒んだため、無期契約者であることの確認などを求めて争った事案です。1審に続き2審も、無期転換を認めました。

1.実務上のポイント
 通常、有期契約が更新され、雇用期間が5年を超えれば無期転換されるのですが(労契法15条1項)、「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」が、「研究者」に関し、5年でなく10年とする特例を定めています(同15条の2の1項1号)。
 本事案での主な論点は、このルールの良し悪しではなく、Xが研究者かどうか、という点です。2審は、1審後にYが追加した主張について言及しています。すなわち、「研究者」には研究そのものに限定されず、より広い関係者も含まれる、同じように教育研究に携わる者で違うルールが適用されるのはおかしい、等の主張が追加されましたが、2審はいずれの主張も否定し、1審判決をほぼそのまま維持しました。
 無期転換を恐れて5年より前に更新拒絶される事態を避け、研究を支援する、という趣旨でありながら、不安定な有期契約の期間を逆に10年に延長する、というルールの内容自体、趣旨と手段が一致していないように感じます。
 しかし、ルールとして存在する以上、ルールに適合した運用が必要となるのです。

※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。

※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?