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松下幸之助と『経営の技法』#93

5/18の金言
 人格的な欠点にだけ気をとられていないか。仕事と人格はあくまで別物である。

5/18の概要
 松下幸之助氏は、以下のように話しています。短いので、そのまま引用しましょう。
 君は、今の上司は仕事はできるが、人格的に欠点が多いので立派な人に変えてくれと言う。君の言うこともわかるけど、どんなに人格が立派で真面目な人間だからといって、仕事が良くできるとは限らない。仕事と人格はあくまで別や。
 人間だれしも欠点はある。だから、あの男にはこういうええとこもあると見なくてはいけない。君は、その欠点にだけ気を取られているから、ええとこが見えんのや。

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 ここでは、仕事と人格は別、と言っていますが、松下幸之助氏は折に触れて人格を磨くように盛んに話しており、人格的な問題がある場合、そのままで良いと言うつもりではないでしょう。
 結局、上司の良いところを見て我慢して頑張れ、ということになるのでしょう。
 人間社会、嫌いな人とも折り合いをつけていかなければならない場面は沢山ありますから、松下幸之助氏のアドバイスは、非常に常識的なものです。
 むしろ、会社経営の立場から見た場合、規模が小さいうちであればまだ良いのですが、大きな規模になってくると、同質的なメンバーだけの組織は脆弱になりますので、それを避けるためには異質な人を組み合わせることになります。そうすると、どうしても人間同士のいざこざが生じますが、それを乗り越えてもらわないことには、まともなチーム編成や人事ができなくなってしまいます。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 投資家である株主と経営者の関係で見た場合、企業規模が小さいうちは、同じような仲間で団結力を高め、突破力を高める戦略が十分成り立ちます。その段階で事業を譲渡し、新たな事業に取り組めば、立派なスタートアップであり、ベンチャー企業です。
 けれども、ある程度大きな会社になってくると、どうしても多様な人材が必要になってきます。経営者自身が、多様な人間を使いこなす度量が必要となってきます。
 つまり、従業員の側も成長してもらわなければなりませんが、会社や経営者の側も成長しなければならないのです。

3.おわりに
 自ら会社を立ち上げ、大きくさせた松下幸之助氏から見れば、上司に対するこのような不満は、「そんなことで不満を言うな」と文句が言いたくなるところでしょう。
 けれども、氏はそのような文句を言わず、若手従業員に対し、我慢して頑張る秘訣を伝授しています。氏にとって、嫌な客や嫌な取引先がいたように、若い社員には嫌な上司がいるようだ、早くから会社を始めた自分にはわからないけれども、嫌な客や嫌な取引先から学ぶことが沢山あったように、嫌な上司からも学ぶことが沢山あるに違いない、そのような心境だったのではないでしょうか。
 どう思いますか?

※ 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
 テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。

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