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経営の技法 #18

2-7 ガバナンス不全の背景①
 会社組織論を検討する際、日常的にリスク管理することが何よりも重要であり、内部統制(下の正三角形)の方がガバナンス(上の逆三角形)よりも重要だが、ガバナンスも、最後の拠り所として重要である。

2つの会社組織論の図

<解説>
1.概要
 ここでは、ガバナンス(上の逆三角形)が機能していない場合について、次のトピック(同書2-8、当ブログ#19)と2回に分けて、具体的な事例をあげて、その原因を分析しています。
 まず、新銀行東京事件や大王製紙事件に見られるように、投資家に原因がある場合です。ガバナンス(上の逆三角形)上のコントロールの源泉は投資家にあり、投資家自身が経営者をコントロールしようとする意欲や能力が無ければ、ガバナンスは根底から機能しないのです。
 次に、これらの事件に加え、オリンパス事件にも見られるように、特に社外取締役に原因がある場合です。経営のプロであって、投資家の代理人としての立場から、経営者を監督するはずなのに、それが機能しなければ、ガバナンスが機能しないことは当然です。

2.投資家の社会的責任
 投資家の社会的責任が問題となりますが、これは、企業の社会的責任(CSR)や、会社のステークホルダー論(ヨーロッパ型のガバナンス、同書2-1、当ブログ#12)と同様、行き過ぎた利己主義を修正するものです。
 最も、CSRやステークホルダー論は、会社の行動を規制するものであるのに対し、投資家の社会的責任論やスチュワードシップコードは、個人の行動を規制するものです。ノブレスオブリージュにも通じるところがあります。投資家個人の行動も問題にすることで、会社をフィルターにすれば利己主義的な言動が許容されるわけではない、ということになります。

3.おわりに
 法規範としての効力は限定的ですが、会社、投資家いずれも、社会的存在である以上、その言動には社会的な観点からの制約があります。これらが、本来の意味のコンプライアンスにもつながっていくのです(同書1-7、1-8、当ブログ#7、#8)。

※ 『経営の技法』に関し、書籍に書かれていないことを中心に、お話していきます。
経営の技法:久保利英明・野村修也・芦原一郎/中央経済社/2019年1月



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