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福澤諭吉×TK工房 仮想対談⑨現在はまさにチャンス

TK「先生、今日は激動の時代にふさわしい箇所を見ましょか」

昔から能力のある人間には、心身を労して世の中のために事をなす者が少なくなかった。今こうした人物の心中を想像してみても、彼らが衣食住を満たしたくらいで満足する人間には到底思われへん。社会的な義務を重んじて、高い理想持ってたやろな。
今の学生は、これらの人物より文明の遺産を受けて、まさしく進歩の最前線におるねんから、その進化に限界を作ったらあかん。今より数十年後、後の文明の世では、今我々が古人を尊敬するように、その時の人たちが我々の恩恵を感謝するようになってなかったらあかんねん。
また、何か事をなすには、時勢に合う、合わないがある。時を得なければ、能力のある人間でもその力を発揮することができひん。そういう例は昔から少なくないねん。
でも、今はそういう時代ちゃうねん。前にも言うたように、西洋の考えがようやく広まって、ついに古い政府を倒し、諸藩が廃されたのは、ただ戦争によって起こった変動やと考えたらあかん。
この変動は戦争による変動なんじゃなく、文明に促された人心の変動やねん。
学問の道を先頭に立って唱え、天下の人心を導いて、さらにこれを進めて高いレベルにもっていくには、特に今の時期が大きなチャンスやねんで。そしてこのチャンスに出会っているのが、今の学生たちやねん。だとしたら、世の中のために努力せえへんわけにはいかんやろ。
古い制限が一掃されてからは、まるで学者のために新世界が開かれたかのようで、日本中で、活躍できひん場所なんてなくなってん。農業を営んだり、商売をしたり、学者になったり、政府に仕えたり、本を書き、新聞紙を書き、法律を講じ、芸術を学び、工業も興せる。議院も開けるんや。どんな事業でも行われへんもんはない。

TK「これはホンマ僕らの時代でも突き刺さりますわ」

先生「私らの時代でも、もはや言い訳はなくなってたんや。当然その頃より発展してる君らの時代に言い訳なんかあるはずないやろ」

TK「ぐうの音もでないっす」

先生「君、高杉晋作って知ってるか?」

TK「はい。尊敬してます」

先生「ほな、彼の辞世の句知ってるわな」

TK「おもしろき、こともなき世を、おもしろく、です。」

先生「せや。下の句は別の人間が彼が亡くなってからつけたしたんやけど、『すみなすものは、心なりけり』と続くんや。意味わかるか?」

TK「おもしろくない世の中なら、おもしろくしたったらええねん。そんなもん自分の気持ち次第やろ、と」

先生「それを彼は、江戸時代に詠んだんやぞ。上に逆らったら、その場で切り捨てられる社会でや。」

TK「はい」

先生「ほんで、君にまだ言い訳はあるんか?」


次回に続く
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