見出し画像

揺れるイランとサウジアラビア。その原因は?

閉ざされた国サウジアラビアをわかりやすくさんのイランとサウジアラビアの関係性に関するシリーズが開始されましたので、

僕もちょっと書いて置こうと思います。

昨年末イラン全体で発生した反政府デモの全容とこれからの展望について。


久しぶりのイラン情報なので、おさらいから。


イランは悪の枢軸国で、独裁国家だー!なんてアメリカは主張してますが

イランの大統領は民主主義的に国民投票で選ばれてます。

はて、では何が独裁?

イランの正式名称はIslamic Republic of Iranの(イラン・イスラム共和国)と言い、シーア派イスラムを国教に据え、宗教上の最高指導者が国の最高権力を持つイスラム共和制を樹立してます。

なので、先ほど説明した民主主義プロセスで選ばれるイランの大統領は、最高指導者より下の立場なんですよね。

図にするとこんな感じ

で、この最高指導者は、国民の選挙で選ばれた専門家委員会が選んでます。

日本の総理大臣の選ばれ方に近いかもしれません。

とはいえ、専門家委員会への立候補には条件があって、改革派とか体制に影響を及ぼしそうな奴はエントリーさせてもらえないので、出来レース的なところは否めません。

なので、出来レースで選ばれた最高指導者が国のトップなので、独裁国家だと言ってるんでしょう。

ちなみに現在の最高指導者はハメネイ


「なんや話聞いてたら、結局独裁国家やんか。」


という感想を持たれるかもしれませんが、それがそう単純でもないのがイランの面白いところ。


対外的な国の顔としてはやっぱり大統領であり、実際に行政のトップは大統領です。


でも大統領より上に最高指導者がいるんだから、言いなりなんでしょ?


と思いがちですが、実はそうではなくて、この2者、結構バトります(笑)


原理原則で言うと、最高指導者が最強で、大統領も解任できるんですけど、まぁ、そうそう解任とかしません。

なんせ今のイランは1979年に革命で出来た国ですから、あんま無茶なことすると、また革命が起きかねませんからね。


なので、大統領もギリギリのところで最高指導者との綱渡りをしながら、世界との調和を図ります。

最高指導者を筆頭とするゴリゴリのイスラム主義者を刺激し過ぎず、とは言え、地に足のついた経済政策、外交を進める大衆の代表者という感じですかね。

個人的には、現大統領のロウハニは、非常にこの辺りの機微がわかった、切れ者だと思ってます。

簡単に言うと彼は国際社会との協調路線を取っている、物分かりのいい大統領

国民の人気もあります。



しかし、イスラム教国家にとって悩ましいのが、西洋文化、グローバルスタンダードの浸透です。

なんせイスラム教国家は、イスラム教に則って国を治めるという名目のおかげで、イスラム教徒である国民を統率出来ているところがあるんです。

そんな中で、イスラム教と相反する、女性の権利向上を認める法令導入を求められたりすると、憲法そのものが揺らぎ出すので、困るんですよね。

統率が取れなくなるし、最高指導者の立場も危うくなるし、なんなら容易にアメリカやイスラエルの情報操作なんかが入ってきたりして、国そのものの存続が危うくなる。

イランは資源国なので、ずっと狙われてるんです。アメリカやイスラエルに。(個人的な見解ということにしときますw)


かといって、じゃあずっと情報統制して、やっていけるかというと、もうそんな世の中じゃないし、現にアラブの春で良くも悪くも次々と独裁とみなされた国が崩壊させられました。

なので、その辺りを考慮して、どううまく世界と渡り歩いていくのかがイランの課題。

それを最高指導者のハメネイも、大統領のロウハニもお互いわかった上で、うまく牽制しあってるという状況です。

ちなみに、イランは情報統制していて、SNSとか禁止ですけど、実際はVPN使ってやり放題です。

なんなら、最高指導者も大統領もTwitterやってます(笑)
この辺の話は過去記事ご参照。(すみませんどの記事だったか忘れたので、テキトーにマガジン漁ってください笑)


で、そんなイランですが昨年12月に、ついに国内でデモ発生

デモは、イラン東部のマシャード市で始まりました。

ロウハニ大統領と対立するゴリゴリのイスラム主義(強硬派)の政治家が、イラン国内の不景気は大統領の失政だと市民を煽ったことが原因と言われてます。
日本でいえば、民主党が自民党をディスって国民を煽るようなもんですかね。

ロウハニ大統領は、2015年に世界的にも画期的と言われた核合意(核開発を辞め、既存の核施設縮小する代わりに経済制裁を解いてもらうという合意)を米・英・露・中・仏・独の6か国と結ぶことで、経済制裁で冷え切った国内経済の大幅改善を国民に約束して選挙に大勝したんですが


その核合意から約3年経った今でもまだそこまで目に見えた成果が出てないんです。


だから、選挙で大負けしてた強硬派が、これはチャンスと国民を煽ったわけです。

しかし、このデモはマシャード市で起こった後、なんと全国の各都市における、反イスラム体制派が続々と傘下に加わっちゃって、一部暴徒化しだす結果に。

これはゴリゴリのイスラム主義の強硬派も想定してなかった事態。

日本で言うなら、「打倒安倍政権!」と言って民主党が始めたデモに

日本赤軍が乗っかってきて「日本で革命起こして社会主義国にしよう!」とデモの趣旨が変わるようなもんです。


しかし、この流れにロウハニ大統領は、非常に落ち着いて対応します。

すぐに全国に声明を出し、「暴力を伴わない限り、国民には政府を批判し、抗議する権利がある」と言いました。

つまり

「反対意見あるなら堂々と主張したら良いし、聞く用意はある。でももし、暴力的な手段に出るなら政府として容赦はせんからな」

と、非常にマトモなことを言ったわけですね。

さすがロウハニ。


一方でハメネイ最高指導者はこのデモにブチギレます。

このデモをアメリカや「イスラム国」等の外部勢力が起こしていると断定して、軍を使って強硬に鎮圧行動に出ます。

20人以上の死者が出ました。

ただ、蓋を開けてみると今回のデモ参加人数は、たいしたことがなく、全国の各市でそれぞれ数百人から多くても数千人規模。

しかも、要求も全くまとまりがない。

つまり、単純に不景気に不満持ってた国民が、なんとなく各々暴れてみたという程度のものだったようです。

そんなこともあって、簡単に制圧されました。


なんや全然たいした話じゃなかったやん。



と、いうことでもないんです。

まず、もしデモが小規模ながらも今後続いて、かつ、ロウハニ大統領の経済改革がやっぱり失敗だったと国民から結論づけられてしまうと

政府としても「反対意見を聞く用意はある」とか言ってる余裕がなくなってきて、デモを抑え込むために強硬な手段を取らなくてはいけなくなります。

穏健派と言われるロウハニでさえも、右寄り(ゴリゴリのイスラム派)に舵を切らざるを得なくなるんですね。

それってイランにとっても、世界にとっても良くないですよね。

そもそも、なんでロウハニの経済改革は失敗しそうなの?

というと、原因はトランプなんです。

せっかくイランが世界と調和路線を取ってるのに、頑なにイランは悪の枢軸国と言い張って、6か国で結んだはずの核合意を勝手に無視して、経済制裁を続けてるからなんです。

アメリカ以外の西欧諸国がイランと貿易開始しようとしてるのに、アメリカが制裁強めてるために誰もイランと取引出来ないんですよ。

どうしようもないヤクザな国ですよね。

あの国。

余談ですが、国連の中東への人道支援プロジェクトとかも、アメリカの一存(独自の制裁)で、遅らせたりしてます。

ヤバイです。アメリカ。TOP of クソ。


今回もトランプは調子に乗って、イランのデモ参加者に支援を約束するとか言っちゃってるんです。

支援てどうやってするんや?て感じですけど。


トランプがこういった行動をとることで、必然的にイラン国内で、強硬派(アメリカぶっ殺派)が主導権を握ることになります。

もちろんそうなれば、イランはヤバイ国になっていくわけですね。

すると、結果的にトランプが言ってたことは正しかった、みたいになっちゃうんですよね。なんて鬱陶しい。

こんなアメリカと手を組んで、イランを弱らせたいというサウジアラビア。

鬱陶しい。

もし今後、イランの強硬派がイラン政府内で幅を効かせる結果になると、景気対策&国民の関心を外に向ける目的で戦争という手段をとる可能性が高くなります。

で、そのライバルのサウジアラビアも現在、国内政治が全然うまくいってなくて、独裁体制の存続も危ぶまれるので、国をまとめるために戦争でもするか、っていうマインドが高まりやすくなってます。

なので、イランとサウジアラビアは今、だいぶきな臭くなってると私は思ってます。

これでもしイラン・サウジアラビア戦争が起きたら、アメリカ・イスラエルが黒幕と思ってください。

かなり、主観が入った記事なので、批判は受け付けます(笑)

もっと賢い記事は、閉ざされた国サウジアラビアをわかりやすくさんに期待!(笑)

サポートいただいたお金は、こんな僕を育ててくれた母ちゃんに還元したいと思います。