ピジン語の書が燃えてゆく三鬼の忌

でぶ専の時計をもどす四月馬鹿

旧版のサラダ事典にしまおまほ

虻をとる二人羽織の志村けん

脳の名としてかんがえるフエキ糊

擬人してひとりで歩く猿の脳

魚飛ぶあとに新宿写真集

詐病者へ川井憲次のクロッカス

糞漫画地上に地上かさねられ

バランスが崩れるばかり牡蠣を買う

吉四六を喰人族の村に入れ

惑星とバニーガールを春と書く

刑事らが建築学の夏を待つ

敷島に建築学者藻掻かせて

イタリアン・レストランまでけものみち

鍋を借りさそりを借りて三鬼の忌

夜咄に石灰岩のひび割れる

龍の死に陰謀すべてつながろう

ただ無音植物園を焼きはらう

塔崩れ仏義のうえの水の都市

われ老いてグラタンと云う超天使

エレファント・マンに藤原氏のことば

春雷と醜型おそれ夜をゆく

糊で貼るマッドサイエンティストの手

Ｑの字が器官にふれる三鬼の忌

茶室にてハルマゲドンを生きのびる

園内にティム・バートンの撮る『こゝろ』

赤物をバカ田大学にて愛す

クリプキの美少女アニメ視ざるまま

三匹の猿つれてゆく鬼ヶ島

黄桜をはじめ人間たち憎む

いかやきにＪＡＰＡＮと印すただの闇

鳥を模すドリアンジュースのみ干して

老人にストックホルム消え去りぬ

釘おとすサイバーパンク弁護団

いかやきとしてここにある無の言語

ふたりきり耄ける午後の苺買う

ぐみとしてスカトロジストぐみを踏む

蜷川のひとつの解に酒を酔う

われ老いてプテラノドンの記事を貼る

うつくしく三次元ある魚市場

たて穴を祝詞マニアが祝うべし

よこ穴にガープの世界全貌図

つくばねの虚数をしるす絵の日記

自我を描く植物園の掟にて

登記所にサンボするものしないもの

あおうまの心臓ショーに妻つれて

神道家一家が恥じるささみ焼

身のほそき月面人にカレー売る

磁気はしる野村克也の店屋物

月沈みトランポリンがまさにない

ままごとに再現される金隠し

加害してたとえば茄子の揚げびたし

僧侶から原子水母をわたされる

八百比丘尼研究会の股関節

ハムが無いありとあらゆる禁猟区

聖ルカと鳥羽上皇の利きみりん

厠から母をたずねず幾千里

実篤の熱い空気に章魚ひとつ

章魚の名をさけばなかった合唱部

失禁の星に怪獣大図鑑

大喜利を吉本ばなな書き連ね

眠るサモ・ハン・キンポーの恐山

ぬんちゃくがぼくとぼくらの境なす

眼鏡屋を赤毛のアンが掘りおこす

バタやんを狙う幾つの麻酔銃

優作のビーフシチューに拠る論理

鉱床にまだ壊れざる苺飴

超自我があるとおもったへびいちご

療法にスター・ウォーズの春の鍋

わざわいの廻転寿司を雑記する

島民が獄門島の西を向く

煙突のましたで出あう琉球語

薔薇すてる世界内より外に出て

阿字観にこの世を憎むプーアル茶

ちゃんばらと両棲類をみせにゆく

生きものに浮力のなかのドミノピザ

隕鉄をまとめサイトにまとめれば

変装のこの世を愛す白戸さん

二人乗りバイクを盗む意味の意味

異本にもチャーシューがない春うらら

エスパーの棒がささえるたなごころ

肥大する真珠夫人のモキュメント

環八をそのままうつす世界像

愚者ばかり徒歩であつまりくる古墳

人麻呂に植物群を書いて出す

闘鶏のあとにノストラダムスの画

梅沢の蛾をつかまえるメタ言語

保母たちがこの世を生きる鯨幕

慎平の眼球譚に陽は落ちて

感情の数詞かぞえるさざれ石

懐石の弱いけものをみてあるく

うつし世へ瞳孔ひらき石を買う

朱を入れるベン・ジョンソンの春休み

バイク駐め銀河の森の珈琲屋

萩本と鏡の国の二郎たち

世界にて犬をうしなう黒柳

寝冷えしてトーマス・マンの冷蔵庫

ちくわから永劫回帰するちくわ

智慧の環をミニマリストにあたえ春

隊員のひとりが茄子を交配し

夜過ぎて人魚の森に夜来たる

麩菓子売る田代まさしの雑居ビル

消えてゆくアグニの神の梅の花

今ここに宮城野部屋のねじまわし

霊魂にグラタンという仮の宿

母の死をねがったときのあわび断ち

マリリンの赤錆ふえてゆく日永

朱鷺として宇宙ちぢんでゆくばかり

猿を狩りいま晴れている電気街

健一の牛車のように生きかえる

漏電にだれも死なない愛宕山

達人の準惑星にうどん打つ

闘牛がしずかに終わり焼そば屋

万象のショートコントを焚き上げる

鉄道を無限とも言う架空吾子

言素からハイペリオンの理をたどる

うで卵罅入るまでの脚本家

おきさきが動物劇へおりてゆく

目つむれば言葉と悲劇網のなか

眠る妻／ルーズヴェルトに手紙書く

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