顕微する鏡子の家に春の雨

襖絵の超人に雨つづくなり

隕石の命名法をめぐる父子

われついに父と成らざり顕微鏡

要塞を出てゆく車寅次郎

類としてコン・ティキ号に蟹を喰う

英虞湾が電子聖書の在る如く

塁審の総員そろう神の星

どぜう屋をずつと雨打つ神の國

板前が刺した天皇誕生日

しりあがり寿と描く猪木の日

闘魂の筆順忘れ不老都市

都市ガスの都市を客観描写する

墨痕のアノマロカリス愛すべし

落人の里にゾロ目の周波数

フィヨルドがみえない街の井桁屋へ

儀礼にて割られるサクマドロップス

父と子と子と父記す楽譜帳

メスメルの密閉室に歌舞伎して

暗黒の氷川きよしの射撃場

ウレタンをＮＡＳＡのちからで持ち寄りぬ

人脈に野菜王子の脳病んで

入神に折り畳まれるパトラッシュ

ラスカルが毀す倍賞美津子像

鯖を買うふんころがしの集う店

心臓を黒く塗られる人魚の図

テルミンに再奏されるかぶとがに

死霊から砂鉄ばかりを吸い上げる

雪夫人らがぶら下がる贖罪器

野火立ってゲームの中の狸算

ミネソタの秘孔突かれて春の雨

あすは雪蛇の模型を剥ぎつくす

啄木の脳に完結する炎

虔十が荒れて新造人間記

遺言と落語はじまる解氷期

千兵衛の肉体腐る大図解

合評の伊藤みどりが米を研ぐ

傾城とハムカツの名のものを買う

ロッキーにみられる農奴文藝史

たばこ屋が崩れる巨人たちの星

寺山の同級生を作話する

ヘリングが震え天皇誕生日

人の子がミリメートルを刻む日は

ナウシカの胎児に諏訪の名を付ける

民族の祭典つづくマッチ棒

キャラメルの死角のように遺伝する

簿記に無い脳の在り処を書き写す

整数の二重らせんを売る店で

ふすま粉のパラドックスをはさむ姉

マリヤ屋に日本大学幻聴し

春の長雨顕信の聴くパンク

異父乱れタイムボカンの和を求む

具志堅にたとえるまでのバナナの茶

学閥に思考機械が切る毛糸

桔梗屋のエントロピーに銀河雲

筋肉が欲しいアマゾン河たゆみ

ゲッペルズから流される暗合句

ワトスンの犀をいくたびつくらせる

鵺を捕るチクタクマンに重力波

イナカンが伯剌西爾象を撮りやめる

菓子パンの全景を描く寒い春

異能者がインドネシアのネシアもて

超常の小中生に橋落ちる

四次元の大貧民に羊歯を書き

訪米の楽器戦隊匣の中

象脳のなかに死にゆく普遍象

駅ナカに自画像貼られ万智の父

わが脳のおとろえて居る虎洗

巨人立つ面相筆をすすいでも

越後屋のアニメーションにライカ犬

厭戦に地上世界のぬた集め

頭痛して虚数時間のすもうとり

言語から言語に移すたまごとじ

乾燥の神に供えるパラダイム

厭離穢土はがきを買いにゆくあいだ

レンジャーの乳酸色に充たされて

みすゞらが天動説を唱える日

南海の黒豹が在る場所の学

北限の渡哲也のトポロジー

大福ともろとも地球嫌い哉

#川柳 #詩歌 #文芸 #エンターテインメント #どぜう #闘魂