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パルプ・フィクション(女王蜂)  川柳131句

家出するオカルティストに螺子の山

鰆飼う神代文字の婦人ふえ

勝平の意味をしらべる夜に雪

構想の豚まんふかす脳の都市

ちゃるめらをボールボーイがただ悟る

デデという娼婦が曲げる銀の匙

未踏地に偽装結婚する二月

だん吉の塔に愛情物語

煮魚を延々と書く丹羽文雄

自慰つづく津島修治に雪つもり

手を叩く光合成のあいだじゅう

獣神に詩のうかびつつ北枕

村医者の電話のなかのかみのけ座

晴れた日に山田隆夫が時を超え

霊場をコサキンひとりずつに出る

味噌溜まる北野誠の繭のなか

潜在のサボテンを伐る物自体

確実のプリンを載せるあたま山

ペンギンの飼育係りに異母ばかり

カネゴンの繭そのものと自転する

水葬が終わる探偵物語

背もたれの記憶ともなう猪八戒

襖絵の卓球場がただ広い

砂肝が言語遊戯にかわっても

啄木を刻むミクロの決死圏

一を超えカヌレに到るすもうとり

暗闇のスキャナーはしるメメクラゲ

低酸素運動つづく芭蕉庵

全能の55号がライチ摘む

金属が属する世界ずっと夜

ぺもろとも重力かかる長野県

秘密裏に小恐龍の気球揚げ

両の手を桂首相の夢魔ひろげ

半蔵を飼う・買う・借りる・関係す

テルミンの宇宙の構図決められて

パンの木をにくみつづける次女ふたり

歌会に遍在しないクロマティ

トーン落つ牛久大仏掘りあてて

ばらん手に世界の内に居るじぶん

滅びの日葱の名前を記憶する

病院の林檎が左右非対称

マカロニの記憶もろとも宇宙暮れ

アジビラを滝行中に読み上げる

ボンゴレの輪郭引けず田端駅

背理して上皇方のアリューシャン

司馬さんを青と赤とに塗りわける

水爆のピースを嵌める贋楡家

豚としてぜずすに触れる薪能

ハバネロのたしかに宇宙汎種説

太陽と鉄の童話の早見表

渋谷区の宇宙創造するゴルフ

仮想敵国人と行くプリン乃湯

メビウスの環に成らざりし馬場元子

ロック鳴る中山道の偽の意味で

牧師への長距離走者病んで居り

マシリトの鏡をみない細密画

幽斎と神奈川めしをわけ合えば

等身のさなぎが多いロシア茶屋

寿がきやの怪浪曲を聴く春か

恒温のラビット関根人を恋う

日食の部分日食した標

笑点を縛るスタニスラフスキー

醜い字ラゴスの旅の終わるまで

地図に無い町の水球へと異名

心病む能面師らが伐るはさみ

古墳から左脳のつぎに右脳死に

六波羅のコントに河を堰き止める

ナンとして将軍職をあたえつつ

早春の柿の時間を手で掬う

鴨居打つアーリア人の知恵袋

牛の胃の威力を受ける県外車

三松屋が客観描写する性器

黒ギャルの分骨式に採る童話

正気なり塩漬日記書き初めて

死の家の模倣がつづく二月過ぎ

細胞に北島マヤの北と付け

もみあげの言葉と物が平衡す

青海苔の自乗ながめるせんとくん

菜箸を北斗の拳の意味で云う

国亡び光る源氏のズーラシア

新世紀知能検査のあいだ勃つ

手羽先の会がばらけるカスピ海

瘤駱駝森且行の前に死し

泌尿器を麻雀牌であらわせば

客体の言語ファミリーコンピュータ

ファミコンを知らず国姓爺合戦

パチギ受け黙々と貼るステッカー

肺魚死すのび太の家に冷蔵庫

早春の夜にスカイプ四天王

圓楽と第二の性の谷に死す

のり弁に使われている鈍い比喩

すき焼を薔薇の図鑑のとおり撲つ

太陽に加えグレート・アントニオ

ロバを飼う全将軍を代弁し

重力と恩寵かかる蟹の村

やっくんの臨死体験後の小瓶

サイエンス・フィクションとして酒醸す

窓ぎわの小隊長と月の距離

将軍のパワーポイントまで辿る

死後永しLP盤に烏賊の唄

わかもとが広告されて種の起源

ポリマーに対照されるかつお汁

手相視てげべと呟く昼の前

神智学スラッシュメタル聴き肥やし

にっぽんのエーデルワイス他罰して

ポケットの多いずぼんに自罰する

かねてつの牧場跡にかがやけり

弁当をモンゴロイドの街に焼く

豚まんとほかのすべてが無意識下

山伏にライスカレーを投げて売る

アフリカの合唱団へにしんそば

露悪してF−1詩人ひとり佇つ

一握の砂もてつくる偽の自像

塩田におとなが消えるフォークロア

蕎麦屋から手塚治虫の描くパンク

砂漠明けランボーの魏志倭人伝

親権を砂の惑星にて換える

冒頭の騾馬がいななく映画展

パンふえて杉浦茂さらにふえ

カルメンを演じた筈の始発駅

異母兄にスプラッターの星のぼる

轟に集合恐怖するのぶ

テクストに無謬在りけりギャル男の死

金遁の皇道派からポリンキー

ピンぼけてレタスクラブの大乃国

葬列に偽史と正史を重ねあう

鳥眼する生涯を書く一行詩

蛸を切るカンファレンスのつづくなか

うどん屋に二重らせんの魔女が居て

パスタ屋の写真時代を盗み去る

魚屋をまだ語り合う聖少女

パロディーの八角部屋にもやしひげ

河豚ふえて原型保つ仮想都市

贖罪にグンゼのなかのすもうとり

菜の花の沖からムーンウォーカー

棒鮨に無限をつくる裕木奈江

チャーリーの心臓うつす映像史

テクストにミサンガが無い鬼ヶ島

卵無き北海道のボブ・ディラン

貧民のボンベを一次資料とし

地球儀に山田邦子の居た徴


#川柳 #詩歌 #文芸 #エンターテインメント #ムーンウォーク #白瀬矗

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