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「千年雛めぐり」〜平安から現代へ受け継ぐ想い〜百段雛まつり2024

 先日、ホテル雅叙園東京で2024年1月20日(土)~3月10日(日)まで開催中の「千年離めぐり」~平安から現代へ受け継ぐ想い~百段離まつり2024に行ってきました。

 

1. プロローグ

2010年から開催されている「百段雛まつり」は2020年までの間に来場者が63万人を超える人気企画展です。会場はホテル雅叙園東京の「百段階段」です。美しく豪華な装飾から"昭和の竜宮城"と呼ばれたこの建物は、東京都指定有形文化財にもなっています。「百段階段」は7つの部屋に分かれており、各部屋には全国各地から借り集められた雛人形を様々なテーマで飾られています。
 この鑑賞レポートでは見どころの部屋の展示と、私が特に目を引かれた作品、展示を見た私の感想を書いていきます。


2. 見どころの部屋

・平安の世界を再現した座敷雛/「漁樵の間」


 階段を上がって2つ目の部屋「漁樵の間」には部屋いっぱいに広がる座敷雛が迎えてくれます。
 この座敷は福岡県飯塚市にある「旧伊藤伝右衛門邸」で毎年間催される「いいずか雛のまつり」のメインとして飾られる、雛人形達が展示されています。この展示では「京の雅」をテーマにされているそうで、平安時代の細部まで作り込まれた美しい景色に"京都三大祭"と称される「葵祭」の楽しそうな様子を感じ取ることが出来ます。

 「漁樵の間」は床柱、欄間、天井が彫刻で装飾されています。彫刻は他の部屋にはない装飾だったので、迫力と豪華絢爛さが、華やかな 雛人形ととても合っていました。普段私が見ているのは雛壇に座り、動いていない雛人形ですが、この座敷雛は馬に乗っていたり、お話していたりなどの、動いている様々なシーンを見ることが出来ます。これは何をしている様子だろうと想像しながら見ることが出来ます。

・ミニチュアの雛人形/「星光の間」

 「百段階段」の部屋の中で最も天井が低く作られている「星光の間」には雛道具の収集や研究を行っている川内由美子コレクションの一部が展示されていました。

 時代とともに、豪華、大型になる雛人形も、江戸中期になる頃からたびたび、「贅沢禁止令」が発令され、雛人形も規制対象になります。そのため、手に収まるほど、小さな、手の込んだ雛人形が流行りになったそうです。

人差し指よりも小さいです。
現代でもガチャガチャのようなミニチュアのおもちゃが流行しているように、どの時代においても小さく可愛いものが好まれるのだと思いました。
近づいて見ないと分からないほど細かく、緻密です。

・全国のてまりとインスタレーション/「頂上の間」

 「百段階段」の一番上にある最後の部屋、「頂上の間」には「てまりを未来に連れていく」をテーマに揚げる東京・北千住のはれてまり工房から日本各地のてまりと、雛まつりをイメージした、てまりのインスタレーションが展示されていました。

全国の美しい風景のてまり
てまりのお雛様 てまりには、「まるく収まる」「縁をつくる」などの意味があり、晴れの日の贈り物として使われてきたそうです。
てまりのインスタレーション このてまりの中に1つだけハート柄のものがありました。可愛くて、乙女心がくすぐられました。気になった方は是非探して見てください。

3. 私のお気に入りの作品

 ここからは私が気に入った作品や、印象に残った作品を紹介していきます。

・雛山

 受付からエレベーターで会場に入り、エントランスホールに入ると苔に覆われた山の上にいるお雛様の作品が最初に出迎えてくれます。

「雛山」という作品で女性は山の神とされ、「山の神が住むのにふさわしいものでお祝いしてあげたい」という想いから、雛山が作られてるそうです。
白基調の衣装で揃えられていて、神々しい雰囲気を感じます。展覧会を見に来た私たちを迎え入れてくれるように感じました。

・人形師・東之湖氏の創作人形「清湖雛物語」

 「清水の間」にある琵琶湖を舞台にした「清湖雛物語」がテーマの作品。滋賀県東近江市で活動している人形師・東之湖氏が作られています。

衣装の色使いが綺麗で清潔感のある、瑞々しい色彩でとても可愛いです。

・稲田敦/アート刺繍・はんこ・イラスト・人形「箱田敦のひニャ~祭り!!」

・細山田匡宏/立体造形「猫雛壇」

稲田敦/アート刺繍・はんこ・イラスト・人形 「箱田敦のひニャ〜祭り!!」
「キラキラが貼られていて、ギャルみたいで可愛い!」という感想を持ちました。 お雛様のお顔や、装飾がおしゃれにキマっていて大人になっても欲しくなるデザインだと思いました。
細山田匡宏 /立体造形 「猫雛壇」
雛壇ではないようで雛壇であるところが面白いです。

4. 見て欲しいおすすめポイント

 本展示では様々な種類のお雛さまを見ることができますが、私が実際に訪れて感じたことは、お雛さまの表情がとても可愛いらしく、面白い
ということです!
 手作りなので、表情が同じようでひとつひとつよく見てみるとちがいます。表情に注目してみると、人形が生きているように感じられて楽しむことができると思います。

・茨城・牛久の吊るし飾りと創作人形

 「草丘の間」に展示してある茨城・牛久の花工房、猪子庵による吊るし飾りと創作人形が私の中で一番表情豊かで、チャーミングな人形が多くあると感じました。
 この部屋は展示物の種類が多く、雛人形の他、年中行事を楽しむ創作人形や昔話の創作人形、細工物、吊るし飾りなどありました。

近くで見るといろんな種類の人形が吊るされてます。

可愛い女の子達

創作人形

・その他

時代ごとの表情の変化(昔→今)

立雛
古今雛
大正期の芥子雛

京と江戸の雛の表情の違い

江戸

「星光の間」川内由美子コレクション

小さくてもよく見ると表情が色々あります。

「清方の間」ねこたちの雛まつり

石渡いくよ/「楽し♡うれしや♡雛の饗宴」
笑顔で楽しそうですね。
柳岡未来/「春日」
上目遣いがとても良いと思いました。

「十畝(じっぽ)の間」

なんとも言えない表情が面白いです。
木の温もりが感じられて幸せそうな表情です。


5. 感想

 女性の方は、それぞれ自分のお雛さまを持っている方が多いと思いますが、この百段雛まつりに参加することにより、自分のお雛さまとの違いを知ることが出来ると思います。私も実際に訪れて、その違いの多さと種類の多さに驚きました。
 また大切な人の幸せを願う気持ちを込めて丁寧に作り、贈られる文化が、このように多様な形に変化しながらも現代に残っているということが、日本の素敵な伝統だと思いました。


6. 追記

 会場の、文化財「百役階段」は展示品保護のため、一部の会場は暖房を使用しておらず、寒いので暖かい服装をした方が良いと思います。また、靴を脱いで回るため厚手の靴下の着用をおすすめします。

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