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INBRX-101(サノフィ)

2024/1/24にサノフィが買収を発表したインヒブルックスの主要産物INBRX-101を掘っていきます!

INBRX-101は、アルファ1-アンチトリプシン欠乏症(AATD)の治療を改善するために開発された、精密に設計されたリコンビナントヒトAAT-Fc融合タンパク質です…なんのこっちゃ?って話かと思うので順番に掘っていきます💪


AATDって?

AATDはアルファ1-アンチトリプシン欠乏症の頭文字です。

定義と症状

AATDは、アルファ1-アンチトリプシン(AAT)の欠乏により引き起こされる遺伝性の疾患です。主な症状には、肺に関連する症状(息切れ、喘鳴、肺感染症のリスク増加)や合併症(慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肝硬変、新生児黄疸、脂肪織炎)があります。進行すると肺機能の低下から酸素療法を要することもあります。

原因

AATDは、SERPINA1遺伝子の変異が原因で、アルファ1-アンチトリプシン(A1AT)が不足します。このタンパク質は主に肝臓で生成され、肺を保護する役割を果たします。

具体的にはAATは肺を白血球エラスターゼという白血球が使う酵素から保護します。この酵素は通常、肺組織の修復に役立ちますが、コントロールがつかない場合は健康な肺組織を攻撃し、肺の機能障害を引き起こします。

AATDでは、AATが不足するため、中性白血球エラスターゼが過剰に活動し、結果として肺組織が破壊されることがあります。

https://www.kamada.com/therapeutic_areas/alpha-1-antitrypsin-deficiency/

予後と注意事項

AATDの進行により肺気腫が進行すると、肺機能の低下や労作時呼吸困難が起こります。日本では患者数が少なく、日本人AATD患者の臨床像や予後についてはよくわかっていないのが現状です。日常生活では喫煙・受動喫煙など有害粒子の吸入曝露を避け、感染予防に努めることが必要です。

患者数と遺伝

AATDはヨーロッパ系の人の約2,500人に1人に影響を及ぼし、重度の欠乏症は5,000人に1人に発生します。日本人では著しく頻度が低く1,000万人あたり2.03–2.08人…つまり20人強しかいません。

従来の治療は?

AATDの治療には、タバコ煙や有害粒子の吸入を避け、COPDの予防としてインフルエンザワクチンの接種、運動療法、栄養療法が重要です。病状に応じて気管支拡張剤、酸素療法、補助換気療法、外科療法を選択し、重症例では肺移植も選択肢の一つです。

2021年7月からは、欠乏しているAATを補充するためのプール血漿から精製されたAAT製剤の点滴静注が保険適応となりました。

INBRX-101の構造と作用機序

INBRX-101はAAT製剤の補充療法を改良したものです。それは構造を見るとひと目でわかります。

構造

INBRX-101はリコンビナントヒトAAT-Fc融合タンパク質は、アルファ1-アンチトリプシン(AAT)と抗体のFc領域を融合させたタンパク質です。「リコンビナント」とは、遺伝子組換え技術を用いて生産されることを意味します。

Fc領域は抗体のしたの棒の部分です。
つまり遺伝子組換えヒトAAT-Fc融合タンパクってことです。

https://inhibrx.com/inbrx-101/より

作用機序

メインの作用機序は足りないAATを補うわけです。

またAATにFc領域を融合させることで、血中半減期が延長されます。結果、INBRX-101は、3-4週間ごとの投与で正常な機能的AATレベルを維持する可能性があります。(現在の標準的な治療法では、週に一度の静脈内投与が必要…しかも必要なレベルに足りないケースも…)

投与期間が伸びるのは患者さんのメリット大きいですね!!

P1臨床試験

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