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うまく行かなかった恋に意味はあるのかって

先日、好きな人と初めて朝からデートした。
それまでは仕事終わりに慌ただしく会ったことしか無かったから、とても新鮮で楽しかった。


一日ずっと一緒にいられたことがすごく嬉しくて、ふたりでずっと笑っていた。
でもこんな楽しい日は最初で最後になる予感がなんとなくあって、
実際にこの恋はもう終わりを迎えている。

お互いに気持ちは変わらずある。ただふたりが一緒の時間を過ごすことが適切ではないのだ。
彼の持ち物は余りにも多く大きくて、それをすべて捨てて欲しいと言えるほどの覚悟が私には無い。

まだ全然好きだし、彼のことを思うと心が張り裂けそうに痛いんだけど。
あの楽しかった日を忘れたくないから、書いておこうと思う。



朝から会えるのが嬉しくて、ふたりで張り切って8時半に待ち合わせした。
彼が車を出してくれて、私は助手席で揺られていた。
知り合いに会う心配が無さそうな所まで移動してから、車を停めて外に出た。雪がちらついていた。水蒸気を多く含んだ冷たい空気に包まれながらふたりで黙って煙草を吸った。
「なんかドキドキするね」と彼が言っていた。何に対してかは聞かなかった。


目的地の温泉街に着いて、コインパーキングに車を入れた。彼は一応変装すると言って、コンタクトを外して眼鏡をかけた。彼は眼鏡が似合う。付き合う前にも何度か、眼鏡似合いますねと伝えたなあと懐かしく思う。


駅に立ち寄り、観光マップをもらう。
外は指先が凍りそうなほど寒くて、それを言い訳にお互い指を絡ませる。私の隣に彼がいることを、しみじみと不思議に感じていた。


お昼はラーメンを食べようと車の中で決めていて、目当ての店に向かったが臨時休業の張り紙。
観光地あるあるだねと次点で評判の良い店を目指すも、すでに長蛇の列。
「どうする?俺は並んでもいいよ」と言われたが、この寒さの中で並ぶのは厳しいと思い悩んでいると、少し離れた所に別邸を見つけた。私達の前には3組ほどしか並んでいなかったのでそちらに並ぶことにした。


横並びに座りメニューを見ながら待つ。彼の肩に顎を乗せる。
寒いね、そうやね、何にするか決めた?、うーん迷ってるん。つめたいは?、私は普通のやつ。に、煮玉子乗せるの、そうか、つめたいはたまご好きやもんなあ____
何気ない会話が心地よくて、彼の声をこんなに近くで聞けるのが嬉しくて、ああ好きだなあと思う。



そしてありついたラーメン。美味しかったよ


食べた後近くのお店を見ながらぷらぷら歩く。
ミッフィーの御当地ショップがあって、ミッフィー好きな私は目を輝かせながらグッズを見る。ひととおり見終わったあと、「どれにするか決めたん?」と優しい顔で彼に聞かれる。心が嬉しさでじんわりと滲む。迷った末、職場で使う用にマグカップを買ってもらった。


石屋さんみたいなところにも入った。誕生石のピアスをひとつ、今日の思い出に自分で買った。他のお客さんが連れていた柴犬が私の膝にタッチしてきて可愛かった。全身から犬好きのオーラを出しているらしい。


外になかなか灰皿がなくて煙草が吸えなかったが、トイレに行った際にドア付きの喫煙ブースを見つける。他に人がいなかったため、煙草を吸ったあとにちゅーをねだる私。外でするちゅーって格別じゃない?無事もらえてご満悦。


その後路端のお店で肉寿司やら牛まんやらを買い、食べ歩きしながら車に戻る。牛まん、蒸したてのふかふかですごーく美味しかった。


帰りの車でいろんなことを話す。新しい貴方を知るたび、嬉しいけれど途方もなく寂しい。だって貴方を形成しているそのすべての過去に、私はいないから。本当に陳腐な考えだけど、出会うのが遅すぎたって思うの。


帰ってきてから、いつもと違うホテルに行ってみた。天井が青く光ってて、シャンデリアのライトがあって、でもそんなのどうでもよかった。

あの瞬間、確かに世界には貴方と私しかいなかった。服を脱いで少しの隙間も無くきつく抱き合えば、このままひとつになれるんじゃないかと本気で思った。
貴方の目が、声が、指が、私を射抜いて心と身体を蕩かしていった。



ああ、本当に楽しかったなあ。
書きながら思い出してしまい、今もボロボロ泣いている。
でも私の存在のせいで泣いている人もいるのだ、おそらく。だから身を引く。ごめんなさい。


もう終わった恋だけど、本気で好きでした。




貴方は私を見るときに、ひどくやさしい目をしていること
これからも周りの人たちに気づかれないようにしないとね。



幸せになってねって言ってくれたけど

貴方と幸せになりたかったよ。


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